シリーズ世界へ! YOLO⑦ セイシェル
エデンの園と呼ばれた島
文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)
- 2012年9月20日
La Digue
セイシェルは、赤道から南へ約5度、アフリカ大陸東岸から千キロ以上離れた西インド洋に散らばる115の島から成る。上空からは、どこまでも続くセルリアンブルーの海にぽつぽつと連なる島々が、インドとアフリカを結ぶ真珠のネックレスのように見えるのだとか。
115島のうち、人が住んでいるのは、首都ビクトリアがあるマへ(Mahe)と、プラリン、地元の人が「一番セイシェルらしい島」と呼ぶラディーグ(La Digue)の3島だ。
ラディーグは、南北5キロ、東西3キロ。オイスターの殻のような形をした小さな島で、ナショナル・ジオグラフィック誌が世界で最も魅惑的なビーチに選んだ「アンス・スース・ダルジャン」(Anse Source d’Argent)と、世界最古のゾウガメ(giant tortoise)が見られる。人口は2000人。
ガイドさんが「ここでは皆が自転車に乗ります」と言うので、フェリーを降りた観光客も続々とレンタサイクル屋へ向かう。私は自転車があまり好きではない。みどころは島の南西岸に集中していて、大した距離ではなさそうだ。「シャッターチャンスを逃したくないので」と、ガイドさんの勧めを振り切って歩き出した。
クレオール風のかわいい家屋、こじんまりしたペンション、深い森とヤシの木々…。夢中で写真を撮りながら進んだが、確かに、歩いているのは私だけ。牛がひっぱる観光用の荷車とすれ違った以外は、老いも若きも自転車だ。疲れてきたところで土砂降りの雨にあい、ちょっと後悔。雨宿りの場所を探してうろたえる私の横を、学校帰りの子供たちが教科書をかざしてチャリンチャリンと飛ばしていった。
18世紀の墓地やバニラ農園を通り過ぎて歩き続けると、いたいた! ゾウガメがうごめいている。体重は数百キロ。甲羅の模様を少しずつ大きくしながら成長し、最高で150年生きるという。ウミガメのようには泳げないものの、海に浮くことはできる。おとなしい動物だが、爪でひっかいたりくすぐったりするのは厳禁。痛がって病気になってしまうとか。
ベジタリアンで、食べ過ぎると甲羅よりも早く太るから危険だと聞いていたのに、ここのゾウガメは観光客に慣れているのだろう。エサをもらおうと、別のカメを踏み台にして背伸びしてくる。近くしか見えないはずだが、木陰から眼光鋭く一瞥を投げてくるのもいた。したたかで、しかしアンニュイで憎めない、不思議な動物である。
マヘ島から千キロ以上離れたアルダブラ(Aldabra)島には、野生個体群としては世界最多の10万匹(ガラパゴスの10倍以上)のゾウガメが生息していて、世界遺産になっている。
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