シリーズ世界へ! YOLO⑧
眩々(くらくら)ドバイ紀行

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

 

Courtesy of Burj Al Arab

Courtesy of Burj Al Arab

アラビア海の蒼空に浮かぶ
ホテルで過ごす極上の休日

 「バージュ・アル・アラブ」。ドバイの繁栄は、このホテルから始まったと言われている。1999年にオープンした、世界初の「七つ星」ホテルだ。ドバイの存在感を世界に示す特別なランドマークだった。
 その昔、アラビア海やインド洋を行き交った交易船ダウを模したデザインで、遠くから見ると、優美な白い帆船が洋上に浮かんでいるようだ。中に入ると、床から天井まで金箔が使われ、カラフルなアラビア風の装飾がめくるめく万華鏡に似た世界をつくり出している。
 202室すべてがスイートルーム。全室にそれぞれ「バトラー」がついて、24時間サービスする。普通の家より広いぐらいの客室は、床から天井まで1枚ガラスになっており、何にも遮られずにアラビア海を眺めることができる。
 私が訪れた時は、中国から団体ツアーでやってきた観光客を乗せたバスが、何台もとまっていた。ロビーに入るなり嬉しそうに走り回って写真を撮る彼らは、やがて続々と最上階のレストランへ。アフタヌーン・ティーを楽しむツアーが、大人気らしい。PRマネジャーのイザベラさんによると、この七つ星ホテルの海外からの宿泊客のトップは中国人だというから、新興国のパワーを実感させられる。

◆  ◆  

 ドバイの夢は、砂の上にだけ開くのではない。海の向こうへも無限に伸びていく。
 その象徴がパーム(人工埋立島)事業だ。空から見るとヤシの木の形をした「パーム・ジュメイラ」には、高級ホテルとプライベートなビーチがついた超高級ビラが並び、デイビッド・ベッカムやカイリー・ミノーグら有名人が家を所有している。
 ちなみに、陸から一番近くて一番安いビラ(4万5千平方フィート、10寝室、70人収容映画館、サウナなどがつく)の値段は、2億5千万ディルハム(約7千万ドル)。地元紙によると、「投資物件ではなく、セキュリティーとプライバシーを大事にする人のための贅沢品」だそうで、売れ行きは好調。景気後退や欧州危機もなんのその。記事は「世界のトップのスーパーリッチたちは、景気に左右されるような普通の経済圏の外で暮らしている」と結ばれていた。
 海岸から4キロ離れた場所に建設中の人工島「ザ・ワールド」には、橋もトンネルも道路もない。「どうやってドバイからアクセスするの?」とタクシーの運転手に聞くと、「島が買えるほどの金持ちなら、船や自家用ヘリを持っているのが当たり前」という答えだった。
 ドバイ政府観光商務庁のオフィスで、パームを含めたドバイ全体の開発計画の青写真やスライドを見せてもらった。
 ドバイは「建築家の天国」と呼ばれるが、納得できる。まるで、カメラを固定して長時間まわして撮った映像を早送り再生したときのように、ものすごいスピードで新しい建物ができあがり、刻一刻とスカイラインを変えていく。私が生まれた時から延々と工事している東京の環八通りなんかとは、ぜんぜん違うのだ。
 同庁のマンスールさんが言うには、「2000年には一番高かったビルが、今は目立たない。『世界最高』は数カ月しかつづきませんよ」。私が呆気にとられていると、「まあ来年また来てくださいよ。まったく新しいドバイが見られますから」と淡々と語った。
 ちなみに、バージュ・カリファの「世界最高」の称号は、しばらく安泰だ。世界で現在建設中のトップ10の超高層タワーのうち、6つは中国、2つが韓国だが、どれもバージュ・カリファを抜くことはない。
 しかし、サウジアラビアのジェダに建設中の「キングダム・タワー」(高さ1000メートル予定)が完成した暁には、トップの座を譲ることになるという。
 


 

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