シリーズ世界へ! YOLO⑧
眩々(くらくら)ドバイ紀行
文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)
- 2012年11月5日
学 ぶ
Sheikh Mohammed Centre
シーク・モハメド・センター
ドバイの文化や習慣、イスラム教の戒律や男女の服装などに関して興味や質問があっても、旅人が「エミラーティ」に会って話をする機会は滅多にない。フラストレーションを感じたら「シーク・モハメド・センター」を訪れよう。ここには15年続いているプログラムがあり、観光客が「なんでも遠慮なく聞けて、素直に話ができる場所」になっている。
ランチを食べながらのプログラムに参加した。モットーは「Open doors. Open Minds」。センター長のナシーフさんが、食前に胃を休める効果があるアラビアン・コーヒーと、栄養たっぷりのデーツの実でもてなしてくれる。ランチは、甘く炊いたブラウンライス(ムハマー)、チキン(マドローバ)、グリルした近海の魚(スブリーム)などが並ぶ。
プログラムの目的は、イスラム教やアラブの文化に対する偏見をなくすこと。男女の役割分担や服装、結婚の自由に至るまで質問が飛ぶ。ナシーフさんは、慣習や儀礼、社会制度や男女の交際には閉鎖的な部分もあるが、それは決してイスラム教徒に特有なものではない、と強調。女性の衣装(アバヤ)については、「黒い服は太陽を吸い込んで熱くなるから苦痛」という思い込みは間違いで、「軽くて実用的で、光が当たっても透けない。質素さを重んじるイスラム社会にぴったりで、礼拝に行くのに着替えなくちゃ、とか、昨日と違う服を着なくちゃ、といった心配をする必要がない」と話した。アバヤの下に着ているものはアメリカ人と変わりなく、家の中では相当おしゃれをしているという。
Dubai Museum
ドバイ博物館
油田が見つかるまで、ドバイは真珠とりが主要産業だった。しかし、真珠好きの日本人がやって来てすべて養殖にしてしまったため衰退。そんな歴史を学べるのがドバイ博物館だ。
アラブの人たちにとっての特別な動物ファルコンについても詳しい説明がある。ドバイではファルコンのF1レースも行われるほど。大切なペット、家族の一員として扱われ、飛行機に乗るためのパスポートもあるそうだ。
ミュージアム周辺には、ドバイ最古のモスクなど見どころが沢山。650以上のボートが往来するクリークでは、アブラ(水上タクシー)に乗ろう。
遊 ぶ
Desert Safari
デザート・サファリ
ドバイで観光客に一番人気があるツアー。ドバイの東郊外にあるアル・アビール砂漠で、砂煙をあげながらスリル満点のドライブを楽しむ。砂地に入る前に、一斉にタイヤの空気圧を50%にまで落とし、幅を広げてやわらかくする。
私が乗った車の運転手ボビーさんは、「タイヤをラクダの足と一緒にするんだ。馬と違って、ラクダの足の裏はゼリーのようにやわからかくて、砂地で体重をかけても沈まない」と説明してくれた。ボビーさんはインド生まれ。30年以上砂漠で暮らし、運転経験27年のベテランだ。トヨタのテストドライバーやカタログ撮影の運転を数えきれないほどやってきたという。風向きによって砂漠は毎日、そして刻一刻と変わる。砂の模様で判断してデッドサンドを避け、斜面をただまっすぐのぼるのではなく、後続のドライバーたちが走りやすいようにルートをつくっていくそうだ。
サファリの後はラクダに乗り、ベリーダンス鑑賞やディナーを。「サンドアート」の店では、10種類の砂を混ぜてボトルの中にラクダや夕陽を描いてくれる。
■ツアー会社の詳細:Orient Tours (www.orienttours.ae)
Gold Souq
ゴールド・スーク
ドバイ・クリーク近くにある「ゴールド・スーク」は、金でできたアクセサリーを売る店がぎっしり並ぶマーケット。値段はその日の取引レートに応じて変わる。ソフトでピュアな色合いの24Kの装飾品や、アラビア風の美しいデザインに見とれてしまう。隣には1930年代から続く「スパイス・マーケット」や、民族衣装などを売る店も多くある。
Dubai Mall
ドバイ・モール
70以上あるショッピングモールの中でも一番有名な「ドバイ・モール」。バージュ・カリファと同じ敷地。水族館と海底動物園では、ペンギンやサメ、ワニの展示が見られ、シュノーケリングができる。アイススケート・リンクも大にぎわい。
子供だけの町「キッザニア」は、メキシコで始まり、日本にもあるユニークな「職業体験」アトラクション。8万平方フィートの施設に、消防署やホテル、病院、ガソリンスタンド、テレビ局からパン屋まで、「町」のすべての機能が揃っており、子供たちは大学で勉強したり働いて新しい技術を身につけたりしながらお金を稼ぐ。300人以上のスタッフがいるので、親は子供を預けて買い物に専念。
Mall of the Emirates
モール・オブ・ジ・エミレーツ
「雪のない砂漠にスキー場を」の発想で、ショッピングモールの中にできた「スキー・ドバイ」が有名。6000トンの人工雪を使って400メートルのゲレンデにリフトも設置。気温はマイナス3度の設定なので、皆しっかりスキーウェアに身を包んでいる。
泊まる
Madinat Jumeirah
マディナ・ジュメイラ
www.madinatjumeirah.com
バージュ・アル・アラブの隣にある豪華なリゾート。アラブ風の「おもてなし」を大切にしており、王宮を訪ねるような感覚でステイしてもらうため、チェックイン・カウンターは置いていない。1.5キロに及ぶプライベート・ビーチが美しい。敷地内に運河があり、客室からレストランへボートで移動する。3種類のブティック・ホテルがあり、家族向けやカップル向けなど、値段や目的に合わせて選べる。レストランでは、金曜(ドバイでは休日にあたる)のブランチが人気。劇場やナイトクラブ、市場もあり、外出しなくても楽しめる。宿泊すると、隣接のウォーター・パーク「ワイルド・ワディ」の入場が無料になる。
また、ホテル発着で、アラビア海で昔ながらの真珠とりを見学・体験できるツアーがある。甘いアラブの朝食をとってエネルギーを補給したら、ボートに。真珠を呼び出す歌を聞き、新鮮な魚のランチを食べ、とった真珠は自分のものにできるという。
Armani Hotel Dubai
アルマーニ・ホテル・ドバイ
www.armanihotels.com
ファッション・デザイナー、ジョルジオ・アルマーニが初めてつくったホテル。今や世界のトレンドになりつつある「ファッション・ホテル」の先駆で、2010年4月にオープンして以来、大人気。バージュ・カリファの中にあり、160の客室とレジデンスから成る。
インテリアもすべてアルマーニのデザイン。ガラスのドアが開くと、ファッションショーのランウェイのように、長くてまっすぐな廊下が続く。アメニティーもすべてアルマーニの製品だ。
宿泊予約をした段階から、「ライフスタイル・マネジャー」と呼ばれる専用スタッフがついて、滞在中も24時間リモコンで呼び出しが可能。ロビーで出迎えられたら、そのまま部屋へ。チェックインもチェックアウトもなし。ホテルではなく邸宅でもてなすように、というモットーからだ。
6カ所のレストランとナイトラウンジもおしゃれ。イタリアン料理の「Peck」では、ミラノ風の金曜ブランチが大人気。マーケティング担当のメアリーローズさんによると、顧客のトップは近隣の湾岸諸国からで、日本人もとても多いという。
Radisson BLU Hotel Dubai Deira Creek
ラディソン・ブルー・ホテル・ドバイ・デイラ・クリーク
radissonblu.com/hotel-dubaideiracreek
ドバイで最初にできた5つ星のホテル。ドバイ・クリーク沿いにあり、古いドバイの面影と新しいドバイの活力とがミックスした、趣深い地区に建っている。メトロ(無人電車)の駅からも近くて便利。ほとんどの客室からクリークの眺めを堪能でき、7階から上は全室バルコニーつき。
特に「食」に力を入れており、ドバイで人気のレストランや有名シェフの店が勢揃い。鉄板焼き、寿司、シーフードなど各種あるが、イラン料理の「Shabestan」は、首長もお気に入りで毎月食べにくる店。特別な釜で焼いてくれるナンが超美味。
Al Bustan Rotana Dubai
アル・ブスタン・ロタナ
www.rotana.com
ドバイに幾つもあるロタナ系のホテルの中でも、空港に近くて便利なホテル。それでいて5つ星のサービスが受けられる。メトロの駅と空港まで歩ける距離。近くのショッピングモールへの無料送迎バスもある。
アクセス
ドバイは、ペルシャ湾の南岸、アラビア半島の南東に位置する。5〜9月は平均気温が40〜48度と暑いが、冬は10〜30度で過ごしやすい。11〜2月はピークシーズン。暑さを我慢できるなら、ホテルの割引が多い夏がお薦め。ラマダンの時期も、ふだんは手が届かない超高級ホテルまで安くなるのでお得。ただし、ラマダン期間中は、外食が自由にできないなど、旅行者でも不便を強いられる。
ドバイ政府観光商務庁は、「Definitely Dubai」をキャッチフレーズに、様々な最新情報を提供している。特に日本人観光客を増やしたい考えだ。「ショッピング、サファリ、ウォータースポーツができ、ビーチと砂漠があり、スキーもできる。こんなところはドバイしかない」とアピールしている。
市内の主な場所へは、運転手なしで動く電車「メトロ」でアクセスできる。
アメリカからは東海岸の都市を中心に、直行便が飛んでいる。ドバイ発の帰国便のほとんどは、真夜中に出発する。これは、燃料を大量に搭載したジャンボ機は、気温が上がり過ぎると飛び立てないかららしい。私が予約した帰国便(ワシントンDC行き)は、真夜中発だったのが遅延で翌午前中の出発になったが、気温が50度に達して離陸できず、結局キャンセルになった。
空港で足止めを食らった人たちと丸一日ロビーで話していて実感したのは、ドバイが紛争地・中東のハブ空港であるということ。アメリカ行きの便には、国務省の職員や軍人、軍関係の民間業者らが沢山乗っていて、ほとんどがアフガニスタンやパキスタンからドバイを経由して帰国するところだった。
■ドバイの最新観光情報はココで■
ドバイ政府観光商務庁
www.definitelydubai.com
取材協力/ドバイ政府観光商務庁 (Special thanks to Government of Dubai Department of Tourism and Commerce Marketing, North America)
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