ルート61 音楽街道の旅
文/細田雅大(Text by Masahiro Hosoda)
写真/川畑嘉文(Photos by Yoshifumi Kawabata)
- 2013年6月5日
1日目 11月2日
ニューオーリンズから出発
61号線を走り出すまでの数日はニューオーリンズで過ごした。ニューオーリンズは音楽と食の街だ。特に音楽は、有名なジャズに限らずあらゆるジャンルが渾然一体となって楽しまれている。渋いブルースでも歌い出しそうな黒人シンガーが、白人ハードロックバンド、ガンズ&ローゼスの「Sweet Child O’ Mine」をシャウトし、酔客を驚喜させる街なのだ(*脚注参照)。
61号線の南端は、ニューオーリンズの繁華街フレンチ・クオーターから路面電車を利用すれば十数分のところにあった。「END 61」という標識があるだけで、特にショーアップはされていない。二人で一部屋を借りて1泊40ドル台の安宿、61号線沿いのMidtown Hotelにいた我々は、タクシーを拾ってニューオーリンズ国際空港まで行き(チップ含め38ドル)アラモのレンタカーを借りた。ドッジのアヴェンジャーという赤い車だ。事前のオンライン予約で提示された想定料金は480ドルほどで他社より格段に安かったが、実際にオフィスに出向くと、これには全く保険が含まれていないことが判明した。保険に加入し追加運転手として川畑氏を登録すると、総額は947ドルに達し、ふだんの暮らしを質素に切り詰めている我々に強烈な目まいをもたらした。ニューオーリンズで借りて1週間後にミネアポリスで返すという旅程だ。同じ場所に返す場合に比べ、ずっと割高になるのだ。
61号線をいったん引き返し、午前10時に南端から旅を開始。日本在住の川畑氏は日頃から車を運転しており、アメリカでも運転経験があるから心配ないが、11年前の渡米以来、私はまったく車を運転しておらず、ひどく緊張しながらの出発となった。
ニューオーリンズを離れると、ワニの出てきそうな湿地帯に囲まれる。イタチ的な小動物あるいはアライグマの死骸が路肩に散在している。交通事故死だ。黄色地に黒字で「CHURCH」とある標識がしばしば現れる。教会が生活に根付いていることの証ではないかと思う。この標識は2日目、ミシシッピ州でもしばしば見られた。
2時間ほどでバトンルージュに到着。最高気温が30度に近く汗ばむ陽気。地図を見ると、本線の61号線からビジネス61という支線が枝分かれし、市街地を通過してまた本線に合流している。以後、こうした分岐と再合流が各地で見られた。よりミシシッピ河に近いビジネス61を進む。河のほとりにカジノがあり、その駐車場から大河を眺める。追って明らかになるが、ミシシッピ河のほとりにはカジノが多い。カジノの無料駐車場は休憩と大河鑑賞にはもってこいだ。
5時30分にミシシッピ州のヴィックスバーグに到着。ここにも河のほとりにカジノがある。夕焼けを背景にゆるやかにうねる河を川畑氏が感慨深げに撮影。「この河にトム・ソーヤーの蒸気船が走っていたんですかね」と川畑氏。今から15年以上前、留学のため初渡米した彼が唯一携えていたのが文豪マーク・トウェインの本だったという。
安宿を探しScottish Innというモーテルに宿泊。二人で一部屋44ドル。この町の名物料理は何かと受付のおじさんに聞くと、しばらく考えた末に「特にないけど、でも河の眺めは素晴らしいよ」とのこと。予想以上に運転で疲れ、遠くまでレストランを探しに行く気は起きず、モーテルのすぐ向かいにある中華ビュッフェで夕食。1週間あれば61号線(約1400マイル)を南から北までのんびり移動できると計算していたが、どうも大変な見込み違いだったようだ。
*ニューオーリンズでの数日間の模様は www.geocities.jp/yamikuro1999/02new/001.html でご覧いただけます(筆者)。
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