第5回 自分の城をつくる

文&写真/樋口ちづ子(Text and photos by Chizuko Higuchi)

 「大きな家に住みたい」「きれいな家に住みたい」

 たいていの人はこう思い、こんな夢や希望を抱くものです。アメリカでこの夢を叶えたい。あなたも大きな家に住む自分をイメージしながら、渡米されたのではないでしょうか? 私もそうでした。

 衣食足りて礼節を知る、といいますが、私はこれに住を付け加えたい。衣食住をしっかり手に入れることができれば、漠然とした生活の不安がなくなります。生活が安定すれば、自分はどんな人生を生きたいか、人生の目的にフォーカスできます。

 とはいえ、住む家を手に入れることは容易ではありません。第一、まとまった頭金がいります。そのために、誰もが身を粉にして働く。節約し、貯金する。心の中で決心したことに向かって何年間も努力する。そしてやっと小さなコンドを買うのです。それでいいのです。自分だけの力で買ったコンド。嬉しいですよ。いとしいですよ。大切にしますよ。だって、どんなに大変だったか、あなたが一番良く知っているんですから。そして、腹の底から、ふつふつと自信が湧いてくるはずです。他人も「ふうん、家、持っているんだ」その人の評価にプラスを付け加えるのです。なぜなら、頭金を用意すること以上に大変なのは、恐ろしい程の金額のローンをその先30年間かかって払います、という契約書にサインするからなのです。金銭的負担という重荷を引き受けたのです。その時、しっかりしなくっちゃ、と人は強くなる。恐怖と勇気は背中合わせです。そのせめぎ合いに勇気が少しだけ勝った時、自信になる。大丈夫、正しい家という不動産は、いつかきっと、あなたを助けてくれます。

ヘブンリーブルーという名の朝顔 Photo © Chizuko Higuchi

ヘブンリーブルーという名の朝顔
Photo © Chizuko Higuchi

 せっかく買った家でも不満だらけかもしれません。快適な空間に変えて下さい。狭いといいながら、ものであふれかえっていませんか? 特に台所のカウンターと浴室のカウンターの上。出ているものは全部まとめて、棚の中にしまって下さい。何もないくらいがちょうどいい。それから、徹底的に掃除です。ピッカピカにです。あら、不思議。磨いたのは、シンクやトイレなのに、自分の身体や心まですっきりと。花の一つでも飾ろうか、という気になったら、しめたもの。一輪の花が冴えます。

 風水のいう理想の家とは、太陽の降りそそぐ草原にある家。小川が流れ、そよ風が吹き、鳥が鳴き、花の香りがする家、なのだそうです。水や、光や、気が流れている家。ものがなくなれば空間ができ、空気が流れ、躍動しはじめます。住んでいる人にその躍動感は伝染します。風水の理想の家に自分の住まいを似せればいいわけです。

 窓のない浴室やトイレも多いです。天井の隅にカビもはえ易い。注意して換気を十分にして下さい。暗かったら、明るい電気に換える。それだけで気分がぱっと明るくなります。窓がなくて、閉塞感があれば、壁に滝の絵をかける。水がザアザア流れている滝。見るだけで密室にいることを忘れます。工夫次第ですね。

 その上に肝心なのは「あなたの城」にすることです。読書家、スポーツマン、美術愛好家、ハイテクマン、教育者。部屋の壁に自分は何者であるかを示す決定的なものをかけること。毎日それを見るたびに自分が精進できるものを置くこと。それがあなたの核です。帰宅して、ドアを開けた時、「いい家だな」と毎日思えたら、完成です。そんな家はもうきれいを通り越して「美しい家」になっているはずです。あなたの城ができました。さあ、ここから、世界に向かってチャレンジです。

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樋口ちづ子 (Chizuko Higuchi)

樋口ちづ子 (Chizuko Higuchi)

ライタープロフィール

カリフォルニア州オレンジ郡在住。気がつけばアメリカに暮らしてもう37年。1976年に渡米し、アラバマを皮切りに全米各地を仕事で回る。ラスベガスで結婚、一女の母に。カリフォルニアで美術を学び、あさひ学園教師やビジュアルアーツ教師を経て、1999年から不動産業に従事。山口県萩市出身。早稲田大学卒。

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