公認会計士 石上長野会計事務所パートナー
長野 かおる

文/福田恵子 (Text by Keiko Fukuda)

 高度な資格や専門知識、特殊技能が求められるスペシャリスト。手に職をつけて、アメリカ社会を生き抜くサバイバー。それがたくましき「専門職」の人生だ。「天職」をつかみ、アメリカで活躍する人たちに、その仕事を選んだ理由や、専門職の魅力、やりがいについて聞いた。

「弁護士志望から独学でCPA試験挑戦 女性二人で事務所を立ち上げる」

 弁護士資格を持っていた父の影響で、子供の頃からずっと弁護士を夢見ていました。ロサンゼルスに留学した目的もアメリカで弁護士になることでした。しかし、あと少しでロースクール卒業という時に、知り合いから「米系エアラインで日本人のフライトアテンダントを求人している」と耳にしたのです。日本と往復できると思い、短期間のつもりでアテンダントの仕事に就きました。ところが、世界を飛び回っているうちに仕事が楽しくなってきて、学校に戻ろうとした時は既に手遅れ。他に自分で勉強してなれるプロフェッショナルとして思い浮かんだ仕事が公認会計士(CPA)でした。

 大学で会計学は習得していなかったので、まずはカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のエクステンションでCPA試験受験資格に必要な最低限のクラスを取り、あとは独学で試験に臨みました。試験合格後、日系の公認会計事務所で資格取得に必要な監査時間及び2年間のインターンシップを経験した後、1993年にライセンスを取得しました。これでやっと手に職を得たと安堵したことを覚えています。ライセンス取得までに要した準備期間は試験勉強から数えると4年弱です。

 会計事務所勤務の後は、民間企業でコントローラー(企業内での管理会計担当の専門職)を務めました。しかし、2005年に会計事務所時代の上司が独立した際にパートナーとして誘われ、パブリックアカウンティング(企業専属ではなくクライアントを対象とした会計業務)の分野に移ることにしました。それまでは自分の会社の経理だけを担当していればよかったわけですが、以後はお客様のニーズに対応するための、税務、監査、個人、法人、パートナーシップの会計業務に関する幅広い知識を身につける必要があり、必死でキャッチアップしました。

常に顧客側の視点を大切に 目に見える成果がやりがい

 パートナーと一緒に独立後、最初のお客様は知り合いに紹介された某日系企業の子会社でした。そのうち、その会社の親会社の会計業務も任せてもらえることになり、さらに口コミでお客様の輪が広がっていきました。パートナーと私はどのようなグループにも所属していませんし、広告も出していないので、すべてはお客様からの紹介です。女性二人だけの小さな事務所ですが、それだけハンズオンの作業で細やかさには自信を持っています。

 また、「自分がその会社の経営者だったらどうするか」という視点を大切にして、常にコンサルティングを行っています。私はいつもお客様ととても打ち解けて親しくなるんです。そうすることによって気軽に相談も持ちかけてもらえるし、さらに信頼関係が深くなるような気がします。

 この仕事のやりがいを感じるのは、お客様が私たちのアドバイスを聞いてくれて、それを実行に移して、会社のスムーズな運営や経費削減などの目に見える成果が出た時です。

 前職のフライトアテンダントの仕事は、勤務時間も勤務地も大変不規則でした。現在はもちろんタックスシーズン中は徹夜することも珍しくはないですが、どこに飛んでいく必要もないので、家族といつも一緒にいられるのがありがたいことだと感じています。

 将来もずっとCPAの仕事を続けていきたいと言いたいところですが、10年以上先のことは正直わかりません。私がロースクールに通っていた時、クラスメイトに83歳のおばあさんがいました。しかも白い杖をついていて目が不自由な様子でした。それでも弁護士になりたいという夢を持って通学してくる姿に感銘を受けたのを覚えています。近い将来に関しては、取得している不動産ライセンスも生かして、総合的な税務会計のコンサルタントをめざしていますが、ずっと先には、あの時の白い杖の女性のように、私もロースクールで弁護士に再挑戦しているかもしれません。

Nagano-san

My Resume
●氏名:長野かおる(Kaoru Nagano)
●現職:公認会計士
●前職:フライトアテンダント(米系航空会社)
●取得した資格:Certified Public Accountant
●ビジネス拠点:ロサンゼルス近郊
●その他:3人の男児の母親としても忙しい日々を送る。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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