シリーズアメリカ再発見㉑ 飛翔!グランドキャニオン・ウェスト

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

 

泥茶色に濁ったコロラド・リバー Photo © Mirei Sato

泥茶色に濁ったコロラド・リバー
Photo © Mirei Sato

 朝7時半、ロッジを出て、スクールバスのような車に乗り込んだ。ガタガタと、未舗装の道を1時間ほど揺られたか。ボート乗り場に着いた。泥茶色に濁ったコロラド・リバーが、目の前を流れていた。

 「この間降った大雨のせいでね、こんな色になっちゃったんですよ」。私たちが乗るゴムボートの運転手、クリントが話しかけてきた。

 私たちは、ブラジル、イギリス、カナダ、ドイツ、フランス、中国、メキシコから集まったライターの一行だ。1日かけて、コロラド・リバーの急流をくだる。

 ライフジャケットを手渡され、荷物はすべて防水バッグの中に入れるよう指示された。
 みんなアドベンチャー系だから、「写真が命なのにねぇ…」と残念がる。「防水カメラだしちょっとぐらい濡れても平気だけど」と言い張る人もいたが、「いや、やめておいた方がいいでしょう」と真顔で言われ、しぶしぶ従った。

 この一帯は、グランドキャニオン・ウェストと呼ばれる。グランドキャニオンは、アリゾナの北部277マイルに及ぶ大峡谷で、誰もが知っている「グランドキャニオン国立公園」はその一部に過ぎない。3分の1以上は、先住民フアラパイ(Hualapai)の居留地にある。

 私たちが訪れたのは10月上旬で、連邦議会で共和党と民主党が茶番劇を繰り広げ、暫定予算が成立しなかったために国立公園がすべて閉鎖される、という異常事態のさなかだった。グランドキャニオン・ウェストは先住民が所有・統治する土地だから、影響を受けない。私たちはラッキーだった。

 前夜泊まったロッジには、ノースリムやサウスリムを締め出された人たちから、「部屋空いてますか」という電話がかかってきていた。「小さな公園の端と端ぐらいに思っているんでしょうけど、グランドキャニオンってそんなに小さい場所じゃないのよね。ウェストリムまで来るのに車で5時間はかかりますから」。スタッフは困り顔で対応していた。
 

1

2 3 4 5

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 今年、UCを卒業するニナは大学で上級の日本語クラスを取っていた。どんな授業内容か、課題には...
  2. ニューヨーク風景 アメリカにある程度、あるいは長年住んでいる人なら分かると思うが、外国である...
  3. 広大な「バッファロー狩りの断崖」。かつて壮絶な狩猟が行われていたことが想像できないほど、 現在は穏...
  4. ©Kevin Baird/Flickr LOHASの聖地 Boulder, Colorad...
  5. アメリカ在住者で子どもがいる方なら「イマージョンプログラム」という言葉を聞いたことがあるか...
  6. 2024年2月9日

    劣化する命、育つ命
    フローレンス 誰もが年を取る。アンチエイジングに積極的に取り組まれている方はそれなりの成果が...
  7. 長さ8キロ、幅1キロの面積を持つミグアシャ国立公園は、脊椎動物の化石が埋まった岩層を保護するために...
  8. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
ページ上部へ戻る