第29回 2度目の日本語検定

文/福田恵子(Text by Keiko Fukuda)

nihonngokentei

 12月初旬の日曜、私はノアと幼なじみのレイチェルを車に乗せて、710号線をパサデナ方面に向かって走っていた。2年前も2人を乗せてダウンタウンに向かって走った。ジャパンファウンデーションが主催している日本語検定試験が、あの時は南カリフォルニア大学で行われ、ノアは2級を受験したのだ。日本人の親を持つ二世である彼らは、初めて受けた日本語検定に無事に合格した。そして、2年ぶり2度目の日本語検定の試験会場はカリフォルニア州立大学ロサンゼルス校だった。1年空いたのは、日本語学校のクラス担任が告知してくれると思っていたところ、それがなく、気付いた時には既に登録締切を過ぎていたから。と、担任の先生のせいにしてはいけない…。

 さて、今回、ノアは2級の次の1級に挑戦。9月頃、オンラインで申込を済ませた後、まずやるべきことは1級向けの対策問題集を購入することだった。ところが、2014年の秋、私たちが住む日本人も多いサウスベイ地域から日本の書店が消えた。以前は東京堂、三省堂、旭屋、紀伊国屋と数店舗あったが次々に姿を消し、10月には日系スーパー内にあった最後の砦の書店が店を閉めたのだ。これは果たして、日本人が減っているからか、それとも本を読む人が減ったからなのか、はたまた電子書籍の時代になったからなのか。結局、私たちは日本語検定問題集の品揃えも多いコスタメサの紀伊国屋書店で無事に購入したのだった。

 検定の開始時間は午後1時、交通渋滞を見越して11時30分に出発した。早速、二人は車内で問題集を開いて直前の確認を始めた。すると、急に「くんずほぐれつってどういう意味?」とノアから聞かれた。「組み合わさったり、離れたりすることだよ」と私。「ためつすがめつ、は?」「じっくりと観察する様子」…。正直、1級ってかなりレベルが高いと思ってしまった。

目標に向かって…

 さて、既に高校のシニアのノア。友達はSATを受験しているが、日本の帰国枠を狙っているノアに必要なのは日本語検定とTOEFLである。しかも2016年の春入学をめざしているので、「進学はまだ先」という意識が本人にも親の私にもあるのは否めない。しかし、次にレイチェルが言った一言が現実的に響いた。「●●はもう、この会場のカリフォルニア州立大学ロサンゼルス校に合格しているのよ」。●●とはノアと同じ高校のシニアの女の子。日本好きが高じて、日系人ではないが日本語学校に通っている(ノアは既に辞めてしまったが、同じ学校)。そうか、もう進学先が決まっている時期なのか、と噛み締めつつも、ノアは自分にとって必要なこと、できることに、目標に向かって取り組むしかない。

 3時間半後、試験を終えて会場から出て来たノア、「時間が余って仕方なかった。1時間くらい、外の景色を眺めて過ごした」との余裕の発言にこっちが焦った。私は、「もしかして数ページ、白紙で出したんじゃない? または、問題と回答欄がずれているかも?」と思ったことをそのまま口に出した。「いや、見直したから」と本人はどこまでも自信に満ちた表情。「合格したとして、何が役に立ったと思う? やっぱり問題集?」と聞くと、彼は次のように答えた。「小説にはまったことかな。最初は漫画から入ったけど、もっと日本語の文章を読みたくなってライトノベルから読み始めた。この1年で25冊は読んだと思う。漢字とかボキャブラリーとか言い回しとか勉強になった。小説は内容も面白くて1冊読むとすぐ次が読みたくなるしね」。ノアの1級合格を祈るばかりだが、結果が出るのは2月になってからだ。

 そしてノアはアメリカ生まれだが、TOEFL対策にも取り組んでいる。志望大学にスコアを提出する予定だからだ。TOEFLと言えば、私も20年以上前にカプランラーニングセンターという教育施設で準備コースを受講したことがある。いかに受験英語的なボキャブラリーを暗記するかが勝敗の分かれ道になるという印象がある。とにかく覚えるしかないのだ。夏休み以降通っている帰国受験塾の先生からは、「なぜその大学に行きたいか」をテーマにしたプレゼンテーションの課題をもらった。やるべきことは満載だ。まだまだ時間があると思っても、「その時」は確実に近づいている。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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