第76回 愛犬と大陸横断(前編)

文&写真/寺口麻穂(Text and photos by Maho Teraguchi)

 1999年2月にカリフォルニア州からニューヨーク市に引っ越してくる際、車で大陸横断をしました。確か16州を1週間弱で走り抜けた記憶があります。それから15年後の2014年の秋に、今度はニューヨーク市からカリフォルニア州に引っ越すことになり、再度車で大陸横断することにしました。今回は愛犬ノアを連れての引っ越し。もちろん不安がなかったとは言えません。しかし、蓋を開けてみると全て滞りなく計画通りに進み、本当にスムーズな旅になりました。今回は、その体験談を「愛犬と車で大陸横断の旅」と題し2号に渡りお届けします。

車とノア

 ニューヨークで生活していると、車を持っている方がかえって面倒になることが多く、普段ほとんど使わない車を処分しました。ノアはうちにやって来てからほとんど私と車に乗る機会がなく、彼にとって車に乗るのは特別なこと。その度に大興奮でした。「これでは大陸横断の旅が大変だ…。旅まで特訓!」と早めに車をゲットし、文字通り毎日ノアとの車の特訓が始まりました。安全第一のために、運転席や助手席に来ないように犬用のバリアを設置。また、急ブレーキで転倒しないように犬用シートベルトを購入し、必ず着用させることにしました。この効果は大きく、ノアの中で「運転中は絶対に私の近くに来て邪魔できない」というコンセプトが即通じました。私の方でもどんな場合でも一切助手席に来させることは止め、「前部はオフ・リミット」と叩きこませました。少し退屈になったら鼻をクーンクーン鳴らすことがあっても、結局、未だに前部に来ようと試みたことがありません。また、出発前の特訓の効果があって、長距離ドライブ中、スピードが出るとすぐに後部座席で熟睡するようになりました。それがあまりに静かなので、途中何度も振り返り、ノアがちゃんと居るか確認したくらいでした。

アリゾナ州セドナの壮大な景色をバックに大喜びのノア

アリゾナ州セドナの壮大な景色をバックに大喜びのノア
Photo © Maho Teraguchi

ノアの食事

 この旅で一番困ったのが「食事」だったかもしれません。それはノア自身の食事に関しても、同行してくれた友達たちと私の間での食事に関しても言えることでした。
とにかくノアの食事には困りました。うちの場合、日頃はホームメードの食事を食べているため、旅行中の代用食探しが必要でした。見かけによらずノアはピッキーで、嫌なものには顔を背けてしまいます。事前に色々なフードを試食させ、旅行中の代用に使えるもの探しをしましたが、どれもだめ。悩んでいた私に友人が、「真夏でもないからいつもの自家製フードをカチカチに凍らせてクーラーで持って行けば?」と提案してくれました。よく考えればホテルにつけば冷蔵庫はあるし、氷を毎日変えることも可能。結局、自家製フードを1週間分程作って持っていくことにしました。

 しかし、肝心のノアは旅行中全く食事をしませんでした。がつがつとキレイに完食したのは多分一度か二度。毎日変わる土地にホテル、また1日のほとんどを車の中で過ごすという日々で精神的にかなり参っていたようです。私の食べ物のお裾分けなら少しは口にするものの、水とおやつだけの毎日が続きとても心配でした。でも「絶対必要」となればそのうち食らいついてくるだろうと私も腹を括りました。結局ノアが普通に食事をしたのは目的地のカリフォルニアに到着して2日目のことでした。

 次回も引き続き、「愛犬と車で大陸横断の旅」をお届けします。お楽しみに!

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寺口麻穂 (Maho Teraguchi)

寺口麻穂 (Maho Teraguchi)

ライタープロフィール

在米29年。かつては人間の専門家を目指しサンホセ州立大学・大学院で文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人では「Doggie Project」というビジネスを設立。「人間に100%生活を依存している犬を幸せにすることが人間の責任」を全うするため、犬の飼い主教育やトレーニング、問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し活躍中。

プライベート/グループレッスン、講習会のお問い合わせは:www.doggieproject.com
ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

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