第33回 寄付金集め

文/福田恵子(Text by Keiko Fukuda)

 4月のある日、ニナの中学に迎えに行くと、ドライブウェイにながーいストレッチリムジンが停車していた。おかげで、迎えの車は大混雑。プロムでもあるまいし、一体誰がこんな時間帯にリムジンを横付けしたんだ? と半ば呆れながら、車に乗り込んできたニナに聞くと…。

 「ファンドレイズの特別キャンペーンで200ドル以上出した子は、このリムジンに乗る権利があるの」

 ストレッチリモを体験したい子どものために親が寄付金をはずんだということか。で、車内で何をするのかというと、「レドンドビーチを1周回って、中でピザを食べるんだって」とニナ。大人みたいにシャンパンにキャビアじゃないところが中学生らしくてかわいい。しかし、それ以前に私は、このリムジンが御褒美のファンドレイズのことを知らなかった。Eメールのお知らせを見逃してしまったのだ。しかし、本人は「私はぜんぜん興味ない。車に乗ってピザ食べることの何がエキサイティングかわからない」とクールだ。私もリムジンを借りるお金を寄付に回せばいいのに、と内心思ったが、アメリカ人の親たちはファンドレイズもお祭り騒ぎにするのが好きなのだ。

 これまでで一番印象的だったのは子どもに校庭を走らせて1周走るごとに1ドル学校に寄付するファンドレイズイベント。1人の子どもに10人の大人が寄付の署名(家族や隣人、親の職場の同僚など誰でもよい)をして、子どもが30周走れば、単純に300ドルが学校に集まる仕組みだ。それ以外にも、過去に数えきれないほど、学校の寄付金集めに取り組んできた。アメリカの学校に子どもを通わせるということは、イコール寄付金を集めることだという気さえする。

親、それぞれの考え方

 我が学区の場合、レドンドビーチ・エデュケーション・ファウンデーションという組織があり、学区全体の寄付金集めの音頭を取っている。そこのウェブサイトにいくと「子どもの学校を支援する3つの方法」が紹介されている。その1は、学校で何が起こっているか常に情報入手に努めること。その2は、ボランティアとして学校で必要とされる活動に参加すること。その3はお金を寄付することと書いてある。

 私は毎年ファウンデーションからの手紙に、「1世帯の最低負担額は250ドル」と書いてあると、何も考えずに小切手を郵送していた。しかし、ある時、日本人のママ友が口にした「公立校なのに、保護者に寄付金を要求するのはおかしい」という意見を耳にした時、考えは人それぞれなのだと知った。聞けば彼女は一度も寄付したことがないのだと言う。もちろん、個人の意見は尊重すべきだし、寄付はあくまで任意であって、確かに義務ではない。

 かと思えば、別のママ友(彼女も日本人)はこう言った。「私も主人も仕事が忙しくて学校のボランティアに参加できないから、学校から寄付金要請が届くとしっかり寄付する。そのかわり、お金が一体何に使われているのかは報告してもらうようにお願いしている。与えっぱなしはよくない」

 その点、我が学区のファウンデーションの場合、学校別に寄付金が何に還元されたかが、ウェブサイトに掲載されている。ニナの中学では、カレッジ進学希望者のためのワークショップ、スポーツイベント、サイエンスナイト、声楽指導、バンドの楽器などと書いてある。

 さらに私たちのような親以外に、企業パートナーからも寄付金を集めている。ただし、市内にある唯一の大企業ノースロップ・グラマン以外は、ショッピングモールのサウスベイ・ギャラリアが目立つ程度。これが隣のトーランス学区だと、モービル石油やトヨタ自動車(もうすぐテキサスに行ってしまうが)、ホンダ自動車が企業スポンサーといったところか。

 高校を卒業するまでは公立校でもせっせと寄付し、大学では高額な学費を払わなければならない。日本よりはるかに教育にお金がかかるのがアメリカ。それはきっと私の気のせいではないはずだ。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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