第1回「古くたっていいモノはいい」

文&写真/小野アムスデン道子(Text and photos by Michiko Ono Amsden)

モテぶりの裏に独特のライフスタイルあり

 オレゴン州ポートランドと東京を行き来して生活している私は「ポートランド!いいところですね、羨ましい」とよく言われる。この緑の多いエコシティは、環境といい規模感といい心地よい都市だ。アメリカでも一番住みやすい町にたびたび選ばれていて、60万人近いポートランド市の人口は、過去10年間で1割ほども増えている。しかし、近年、日本でポートランドが話題に上るのはそれだけの理由ではなさそう。2014年に『TRUE PORTLAND』(BRIDGE LAB刊)なる専門ガイドブックが出たと思えば、雑誌『POPEYE』(マガジンハウス刊)が「ポートランドに行ってみないか?」という特集をするまでのモテモテぶりなのだ。
 パリやニューヨークのように流行の先端とは真逆の、ローカルでガンコなライフスタイルが、どうも新鮮に映るらしい。この独特なライフスタイルをよく表現していて、街のあちこちで見受けられるのが”Keep Portland Weird“「変わり者でいこうぜ!ポートランド」というスローガン。インディペンデント、創造的、ローカル重視、サステイナブル…いろんな意味合いが包括されているのだけど、自ら「変わり者でいこうぜ!」と言ってしまうところがまさにポートランド的。日本でもやたらにモテている、その愛すべき「変わり者」ぶりを毎回探っていきたいと思う。

Photo © Michiko Ono Amsden

Photo © Michiko Ono Amsden

Powell’s Books
1005 W Burnside Street, Portland, OR
電話:503-228-4651
ウェブ:www.powells.com

1005 W Burnside Street, Portland, OR

 

無名有名古い新しいで判断しない

 もともとこの”Keep Portland Weird“のスローガンは、「Music Millennium」というレコードショップのオーナーが2003年から発信しだした。ここは1969年からある、アメリカ北西部に現存する最古のレコードショップ。古めかしい店構えのウィンドウに、手書きでバンド名などが書かれた派手な外観は、きれいとはいえないが独創的。店内にはロックからエレクトロニック、ブルースやジャズ、レゲエにフォークやカントリー。そしてクラシックまで、膨大な数のレコード、テープ、CDがあって、中古も新盤もとにかくオーナーがいいぞと思う品揃えで溢れかえっている。バンドが店内でプロモーションのライブ演奏をする先駆けとなった店で、インディーズ系の音楽が好きな人にはたまらない。
 また、同じように新刊本と中古本が混在して置いてある、1971年創業の名物書店が「Powell’s Books」。100万冊以上の本が、ジャンル別にずらりと並んで、まるで図書館のよう。本の買い取りもやっていて、値段と目的によって本を選ぶことができるというわけ。インフォメーションコーナーでは、目利きの店員がおすすめの本などアドバイスもしてくれる。書店内にはカフェがあって、本を持ち込んで、ゆっくりとコーヒーを飲みながら閲覧もできる。
 「古い新しいは関係ない。いいモノはいいんだから」というポートランド的精神を象徴しているこの2店に共通しているのは、不思議と長居をしてしまうという点。渾然一体とした店内を物色するのが楽しくて、気がつけば何時間も過ごしていたりする。確かにポートランドを代表する店は、街と一緒で”変に“魅力的なのだ。

Music Millennium
3158 E Burnside Street, Portland, OR
電話:503-862-8826
ウェブ:www.musicmillennium.com

3158 E Burnside Street, Portland, OR

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小野アムスデン道子 (Michiko Ono Amsden)

小野アムスデン道子 (Michiko Ono Amsden)

ライタープロフィール

世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、フリーランスへ。東京とポートランドを行き来しつつ、世界あちこちにも飛ぶ。旅の楽しみ方を中心に食・文化・アートなどについて執筆、編集、翻訳多数。日本旅行作家協会会員。

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