第34回 ボランティアとアルバイト

文&写真/福田恵子(Text and photo by Keiko Fukuda)

高校4年生になる直前の夏休み、イベントでボランティアしたノア。ゲスト出演していた歌手、ステファニーとの記念写真

高校4年生になる直前の夏休み、イベントで
ボランティアしたノア。ゲスト出演していた歌手、
ステファニーとの記念写真
Photo © Keiko Fukuda

 アメリカの学校では、保護者のボランティアなしには運営が不可能だということを以前にも書いた。寄付金集めや菜園の管理、イヤーブックの作成に、新学年登録の日の事務手続き、教育に関するセミナー主催などありとあらゆることに保護者が動く。保護者もボランティアに熱心であるということは、生徒自身のボランティア活動も早くから奨励される。それを遅ればせながら初めて知ったのが、ノアの中学の卒業式の時だった。

 特定時間以上の奉仕活動に従事した生徒たちが、次々に壇上に呼ばれた。当然のように、活躍の場はキャンパス外にも及び、「ビーチの清掃、●●時間」などと紹介されていた。そして、全生徒の4分の1近くが壇上に上がって拍手喝采を受けたのだ。アメリカ社会はボランティア精神の上に成り立っていると改めて気付かされた瞬間だった。

 高校に進むと、生徒たちは地域のボランティア紹介センターでどのような手伝いができるかを調べ、登録して奉仕活動に励む。引いてはそれが大学受験時にも役立つ。あるママ友から、「GPAはそれほどではなかったけど、SATのハイスコアと老人ホームの奉仕時間の積み重ねでハーバードに受かった子がいる」との話を耳にしたこともある。もちろん、年々、大学入学は狭き門になっているから、ボランティア時間がいつまでも有利にはたらくわけではないかもしれない。しかし、高校生がボランティアに精を出す理由の一つは「大学進学に有利」ということだ。

動機とやりがい

 一方で、感心したのが、近くに住む女子高校生Lのケース。獣医を志望している彼女は、自宅から近い大型ペットショップのボランティアリストに登録し、犬の世話を手伝っていた。しかし、登録しているボランティアの数が多過ぎてなかなかシフトが回ってこないことが不満だったそうだ。そこでロサンゼルスの南部、あまり治安が良くない地域のペットのレスキューセンターのボランティア募集を探し当て、通い始めた。そこでは自分の出番も多く、やりがいが感じられるのだと言う。求められている所に積極的に出掛けていくという彼女の自主的な奉仕精神は素晴らしいと思う。

 ノアのボランティアデビューはいつだったか。日本語学校のイベント時に鍋洗いや清掃を手伝っていたことはカウントできない。とすれば、彼もペット絡みだが、犬のグルーミングサロンの電話番と宣伝のためのチラシ配りを、高校2年の時にしたのがきっと最初だ。ノアは幼なじみの女子高生Mとパートナーを組んだ。感想を聞くと、「一緒にドッグパークに行ってチラシ配りをしたけれど、Mはシャイだから初めての人になかなか声をかけられなかった。僕は全然気にならない。積極的に配ったよ」と自信満々で答えた。

 さらに1年前の夏には、名古屋デーというロサンゼルス市民に名古屋を紹介するイベントでも、お手伝い。ノアは来場者に日本のお菓子や宣伝の団扇を配った。常に配る係。少し離れた所でその様子を見ていたが、イベントについてアメリカ人に聞かれても浴衣姿の日本人に質問されても、丁寧に相手をしているようだった。

 そして、つい先日、ノアと以前、チラシ配りをした幼なじみのMが、カフェでアルバイトを始めたと聞いて見学がてら客として店に行ってみた。シャイなMが? と思ったが、実際にテキパキと立ち働いている様子を見て非常に頼もしく感じた。客に注文を取り、料理やドリンクを運び、会計をして、さらに客が去った後の後片付けまでのすべてを担当。立派に成長しているのを見て、「近所のおばさん」である私は感激。しかもバイトの動機は、貯めたお金を車の頭金にしたいからだと言う。なんてしっかりしているの! 一緒に行ったノアにも、少しでも刺激を受けてほしいと思わずにはいられなかった。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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