シリーズアメリカ再発見㉞
カメラで歩く絶景のシカゴ

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

 

デイリー・プラザでカルダーの彫刻「フラミンゴ」を見上げる Photo © Mirei Sato

デイリー・プラザでカルダーの彫刻「フラミンゴ」を見上げる
Photo © Mirei Sato

 ダウンタウンのループ地区へ移動する。
 今でこそミレニアム・パークの影でかすんでいるが、ひと昔前は、シカゴのパブリック・アートといえばここだった。元市長の名がついた広場デイリー・プラザにある、パブロ・ピカソの彫刻(無題)と、アレクサンダー・カルダーの「フラミンゴ」。

 写真を撮っていると、やたらにハトが飛んでくるのに気づいた。広場の一角に舞い降りているので近寄ってみると……。なんと火が燃えている。
 「永遠の炎」(Eternal Flame)というモニュメントで、「亡き軍人たちに捧ぐ」と書いたプレートもはめ込まれているのだが、碑文の上もおかまい無しのハトだらけ。「暖炉」状態だ。首のまわりを毛羽立たせてマフラーのようにして、首をすぼめるハトたち。カメラを向けても動じない。ピカソも顔負け、なかなか愉快な被写体になってくれた。

 ループ地区の金融街で、テレサさんが突然、歩を早めた。待ちきれない、といった感じで、ある地点に立ち止まり、レンズを空に向けた。現れたのは、鳥だ、飛行機だ、いやバットマンだ!

 ビルとビルのすき間がつくり出す空間が、マントを広げたバットマンの姿にそっくり。いったい誰が最初に見つけたのか?
 正確なロケーションは、「企業秘密」(テレサさん)ということで、記事には書けないのだけれど、この日一番の大発見だった。

 シカゴは、アメリカの母なる道「ルート66」の発着点でもある。ループ地区から遠くないどこかに、「ここから始まる」という標識があると聞いていた。せっかくなら写真を撮りたい。といっても正確な場所は調べてこなかったので、ここかしらと適当なあたりをつけて歩いてみたが、見つからない。ぐるぐる回っていたらホームレスのおじさんが寄ってきて、「ルート66? それならこっちだよ」と連れて行ってくれた。

 シカゴ美術館からも文化センターからも遠くない場所だった。世界中から来た人が貼ったステッカーだらけ。なんということはない標識だが、見つけた、という達成感は味わえた。

 おじさんは、しばらく前からホームレスになってしまったそうで、このコーナーを根城に「毎日歩き回っているから、詳しくなっちゃったよ」と言っていた。無料のツアーガイドにお世話になりっぱなしの1日だ。
 


 

1 2 3

4

5 6

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 今年、UCを卒業するニナは大学で上級の日本語クラスを取っていた。どんな授業内容か、課題には...
  2. ニューヨーク風景 アメリカにある程度、あるいは長年住んでいる人なら分かると思うが、外国である...
  3. 広大な「バッファロー狩りの断崖」。かつて壮絶な狩猟が行われていたことが想像できないほど、 現在は穏...
  4. ©Kevin Baird/Flickr LOHASの聖地 Boulder, Colorad...
  5. アメリカ在住者で子どもがいる方なら「イマージョンプログラム」という言葉を聞いたことがあるか...
  6. 2024年2月9日

    劣化する命、育つ命
    フローレンス 誰もが年を取る。アンチエイジングに積極的に取り組まれている方はそれなりの成果が...
  7. 長さ8キロ、幅1キロの面積を持つミグアシャ国立公園は、脊椎動物の化石が埋まった岩層を保護するために...
  8. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
ページ上部へ戻る