第45回 教育のグローバル化

文/松本輝彦(Text by Teruhiko Matsumoto)

 「教育のグローバル化」と言われますが、子どもの学校の勉強とどんな関係があるのでしょうか。

成績とは?

 皆さんのお子さんが「勉強ができる」「勉強できない」というのは、何を基準に「できる・できない」が決められているか、ご存知ですか。
 もっと具体的な例で考えてみると、「試験の成績が良い」というのは、出題される問題で決まるのではありませんか。やさしい問題ならば「良い成績」、難しければ「悪い成績」となるでしょう。担任や教科の先生が教えた、指導要領などで決められた学習内容をもとに、その問題がつくられるのが一般的です。
 皆さんのお子さんが毎年受験する州の統一試験は、その学年で、その時までに学習した内容について出題するのを基本としています。ただ、多くの子どもが受験するので、学校区、学校、クラス、時には子ども一人ひとりが全体で何番目という成績が出てきます。高校生で受験するAP、SAT、ACTなどの試験で調べられているのは、高校生までの授業で学んだ学習内容です。日本でも、高校生の「全国模試」は日本全国の多くの高校生が受験する試験です。

世界統一試験

pisa

 ここで少し想像してみてください。「もし、世界共通の試験(わかりやすく『世界統一試験』といいましょう)があったら」と。何をテストするのでしょうか。国によって、勉強する内容やレベルが違うはずだし、何年生で何を勉強するかも違うはずです。そんな試験を作るなんて、大変だと思いませんか。
 実は、こんな「世界統一試験」を1997年から世界の主要国の子どもたちも受験しているのです。それが、PISA(生徒の学習到達度調査)と呼ばれる試験を含んだ調査です。
 この試験で調べるのは、子どもたちの「社会に適応できる力」です。より具体的には、社会構造や産業構造の変化、グローバル化がより進んだ近い未来(たとえば、試験を受けた子どもたちが社会に出る10年後)の社会に適応できる能力を、それそれの国の子どもたちが持っているかどうかを調べているのです。
 その子どもたちの力が、それぞれの国の10年後の経済発展の可能性を表している、と思っている参加各国・地域の政府は、毎回、読解力、数学、科学の試験の国別の成績と順位が発表されると、その結果に注目するのです。最近の調査(2012年)では、65の国と地域が参加し、上海・香港・シンガポールが上位を独占しました。

教育の国際競争

 このPISAが与えた最も大きな影響は、「教育のグローバル化」です。世界の基準で、日本の子どもたちの学力が評価されるようになってきたことです。そして、経済のグローバル化と同じように、教育の国際競争が始まったのです。国際競争に「負けてはいけない」との世界の先進国の政府の思いを反映して、学校の中でも国際競争への闘いが始まっています。
 その国際競争に勝つために、日本ではPISA型の類題の全国学力テストが実施されています。アメリカでは、各州で毎年実施されている統一試験の背景にPISAがあり、これまで州に任されていた教育について、連邦政府が強くかかわってきています。
 このように、世界で統一の試験内容で好成績を上げるための勉強が、日々、学校で行われるようになったことこそが、「教育のグローバル化」なのです。

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松本輝彦 (Teruhiko Matsumoto)

松本輝彦 (Teruhiko Matsumoto)

ライタープロフィール

海外・帰国子女教育カウンセラー。北米の日本人の子どもの教育サポートに30年以上携わる。最近は、北米の保護者向けの教育講演会・情報誌・インターネットを通じての教育情報の発信や教育相談を中心に活動。また、北米の子どもたちが現地校で身につけている「宝(アカデミックスキル)」の教育を日本の学校で広げるために、日本の中学・高校・大学の授業や講演会も活発に行っている。

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