トーランス クラフトビール最前線 ①
Smog City Brewing Co.

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

「トヨタ、ホンダ、日産の米国拠点。日系駐在員の大きなコミュニティーがあり、日本食レストランのメッカ」。ロサンゼルス近郊の街トーランス(Torrance)は、在米日本人の間ではそんなイメージで知られてきた。しかし最近のトーランスは、「クラフトビールの流行発信地」という、ずいぶん違った顔をもつ。南カリフォルニアはもとより全米・海外からもビール好きが訪れる、トーランスのマイクロ・ブリューワリーを、数回にわたって紹介する。

名物「Coffee Porter」 Photo Courtesy of Smog City Brewing Co.

名物「Coffee Porter」
Photo Courtesy of Smog City Brewing Co.

 本当に美味しいものを食べたあとは、翌日も、その翌日も、記憶が体に残っている。鼻や舌ではなくて、胃袋が、香りと味を覚えているものだ。

 「スモッグ・シティー」(Smog City)が誇る、「コーヒー・ポーター」(Coffee Porter)は、そんなビールだ。
 アイスコーヒーでもあり、ビールでもあり、そのどちらよりも美味しい。暑さしのぎに、エネルギー補給に。カフェインとアルコールが一度にとれる、最高のドリンクかもしれない。

 コーヒー豆は、スタジオ・シティーの「グラウンドワークス」(Groundworks)から仕入れている。コーヒーもビールも、ともに最近「こだわり派」が増えているから、理想の組み合わせかもしれない。

 2012年にデンバーで開かれたビールのフェスティバルで、このコーヒー・ポーターが金賞を獲得。当時まだビジネスを始めたばかりだったスモッグ・シティーは、これで一躍、クラフトビール界のスターになった。

経営者のジョナサン&ローリー・ポーター夫妻 Photo Courtesy of Smog City Brewing Co.

経営者のジョナサン&ローリー・ポーター夫妻
Photo Courtesy of Smog City Brewing Co.

 経営するのは、ジョナサン&ローリー・ポーター夫妻。2013年5月にトーランスに移って開業し、タップルームをオープンした。

 ウェアハウスの建物の構造をうまく利用。両サイドのシャッターを開けると、タップルーム全体にビーチタウンらしい涼しい風が吹き抜ける。太陽の真下で飲むビールは最高だが、倉庫の中で夏風を感じて飲むビールも悪くない。

 ライトラガーからスタウトまで種類が豊富で、季節感のあるビールが飲める。ユニークなのは、秋限定の「カムクワット・セゾン」(Kumquat Saison)だ。南カリフォルニアでは家の裏庭で柑橘類を育てている人が多い。「こんなにとれちゃったからお裾分け〜」なんていう光景が日常的だ。スモッグ・シティーでは、「Food Forward」という団体と協力して、そんな「余りもの」のカムクワットを集め、ビールをつくった。食材を無駄にしない、一種の「シェアエコノミー」だ。

 「よくビールの成分は99%が水だと言うけれど、私はそのうち60%は『コミュニティー』だと思っている」と、ローリーさんは言う。「クラフトビールは、バックグラウンドが異なる人たちを結びつける共通項なの」

 タップルームは、バーやパブとは違う。クラフトビールを味わうのが目的だから、飲んだくれて騒ぐ人もいないし、集まった見知らぬ人同士、自然と会話がはずむ。

左から、夏にぴったり「Little Bo Pils」、ちょっぴりビターな「Hop Town IPA」、ホッピーな「Sabre-Toothed Squirrel」、スモッグ・シティーの代表作「Coffee Porter」 Photo © Mirei Sato

左から、夏にぴったり「Little Bo Pils」、ちょっぴりビターな「Hop Town IPA」、ホッピーな「Sabre-Toothed Squirrel」、スモッグ・シティーの代表作「Coffee Porter」
Photo © Mirei Sato

 「トーランスのクラフトビールは、サンディエゴやポートランド、サンフランシスコのような先進地に比べると、まだ若い。コミュニティーがひとつになって地元のブリュワリーを盛り上げていこうという協力的な雰囲気があるのもいい」

 カウンターでビールをついでくれたオペレーション・マネジャーのライアンさんは、「気づくと顔見知りのお客さんばっかりで、まるで『Cheers』(同名のバーで働く人と常連客を描いたTVドラマ)じゃないか、って思っちゃうよ」と笑う。

 5月にやった「創業祭」のVIPイベントに800人も集まり、ローリーさんは「親しい人、知っている顔ばかりで、自分たちの結婚式なのかと錯覚してしまったほど」と話していた。

 周辺に日系企業が多いため、日本人の客もたくさん来るそうだ。

常連が集うタップルーム Photo © Mirei Sato

常連が集うタップルーム
Photo © Mirei Sato

Photo © Mirei Sato

Photo © Mirei Sato

Smog City Brewing Co.
1901 Del Amo Blvd., Ste B
Torrance, CA
310-980-8202
smogcitybrewing.com

Photo © Mirei Sato

Photo © Mirei Sato

 タップルームの営業時間は、水〜金4〜9pm、土12〜8pm、日12〜6pm。
 コーヒー・ポーターを含む定番の4種類のビールと、季節ごとに変わるビール、タップルームでしか飲めないスモールバッチのビールなどがある。いつ行っても何かしら新しい味に出会える。

1901 Del Amo Blvd., Ste B, Torrance, CA

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佐藤美玲 (Mirei Sato)

佐藤美玲 (Mirei Sato)

ライタープロフィール

東京生まれ。子供の時に見たTVドラマ「Roots」に感化され、アメリカの黒人問題に対する興味を深める。日本女子大英文学科アメリカ研究卒業。朝日新聞記者を経て、1999年、大学院留学のため渡米。UCLAアメリカ黒人研究学部卒業・修士号。UMass-Amherst、UC-Berkeleyのアメリカ黒人研究学部・博士課程に在籍。黒人史と文化、メディアと人種の問題を研究。2007年からU.S. FrontLine誌編集記者。大統領選を含め、アメリカを深く広く取材する。

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