シリーズアメリカ再発見㊶
ハワイ島 マウナラニの息吹

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

人が集う場所

マウナラニの敷地内で Photo © Mirei Sato

マウナラニの敷地内で
Photo © Mirei Sato

リゾートの名前「マウナラニ」は、日本語で詩的に訳すと、「天国に手が届く丘」となる。ハワイ語で、マウナは山、ラニは天国。
マウナケア、マウナロア、コハラ山脈、フアラライ、そしてマウイ島のハレアカラの5つの山の真ん中あたりに位置している。おへそは、命が始まるところ。山がもつパワーが集まって、この土地は強いマナ(生命の力)を宿していると考えられている。
「古代ハワイの人は、この場所を『カラーフイープアアー』(kalahuipua’a)と呼んでいました」とダニエルさん。
太陽がブタを呼び寄せる場所、という意味だそうだ。輝く太陽と栄養たっぷりの水に惹かれて、ブタがここに集まり、水に浸かって涼む光景がよく見られたからだという。
魚が、ブタが、王様が・・・。そして今は私たち観光客が、その恩恵にあずかっているというわけだ。
敷地内には、養魚池のほかにも、古代ハワイの人が使ったトレイルや洞窟、ペトログリフ(岩面彫刻)が残っている。トレイル沿いに生えるキアーベ(kiawe)の木々に豆がなっていた。「食べられないけれど、なめると甘いんですよ。子供の頃、お菓子を買ってもらえないとき、よくこの豆をなめたものです」

ダニエルさんとアナさんのアカカ夫妻 Photo © Mirei Sato

ダニエルさんとアナさんのアカカ夫妻
Photo © Mirei Sato

 ダニエルさんは、生まれたのはオアフ島だが、ハワイ島にもう36年住んでいる。「車も人も多いオアフに比べると、生活のペースがゆっくりで、ハワイの文化が強く残っている。もちろんオアフにも文化はあるが、見失いやすい」と言う。
ツアーが終わるとダニエルさんが、「ココナツの葉でつくるクラフト教室をやるから来ませんか」と誘ってくれた。ホテルの中のカルチュラル・センターで、ダニエルさんの妻のアナさんと、友人たちが集まっていた。
「先生」は、島で教室を開いている、メレー・ワイキキさんだ。あいにく工作にちょうどいいココナツの葉がなかった。「じゃあラウハラ(Lauhala)にしましょうよ。可愛いビーズをいっぱい仕入れてきたし」。ハラの木の葉を編んで、イヤリングをつくることになった。

 まっすぐに伸ばした葉を、寄木細工のように折りたたみ、編んでいく。よじれた葉を伸ばすのにメレーさんはパスタマシンを使っているという。メレーさんの祖母は、古い洗濯板を使っていたそうだ。
編みやすいように葉をやわらかくするため、ときどき霧吹きで水をかける。メレーさんが仕入れてきた貝殻やビーズから、好きなモチーフを選んで、組み合わせた。
「可愛いこれ、どこで買ったの」。女同士、手は動かしつつも、楽しく、よもやまばなし。慣れるまではなかなか難しいので、ひと巻きするたびに先生の教えを請う羽目にはなったが、気に入ったイヤリングができた。
それぞれの作品を並べてみると、何かが違う。「ハワイ島に浮かぶ三日月をイメージしたの。間もなく新月だから」とか、テーマやストーリーがちゃんと考えられていた。
ツアーの最中にダニエルさんが、「ハワイでは地名など、どんな名前にも意味があります。ハワイの人はとてもポエティック(詩的)なんですよ」と言っていたけれど、その通り。こういうところにも表れている。

ラウハラを教えてくれたメレー・ワイキキさん Photo © Mirei Sato

ラウハラを教えてくれたメレー・ワイキキさん
Photo © Mirei Sato

 先生のメレーさんは、私の名前を聞いて、「あら私と同じ名前ね。ミレイってハワイ語だとメレーになるのよ」と言う。驚いた。まさかハワイでそんな出会いがあるとは思わなかった。
「中国や台湾にはよくある名前で、同じ漢字をあててメイリンと発音するんですけど」と私が言うと、今度はアナさんが、「え、そうなの? 私の中国名はメイリンなのよ」と驚いた。

 最近は、日本でも子供に変わった名前をつける日本人が増えたし、同じ名前の芸能人もいるらしいのは知っている。けれど、私自身は、自分と同じ名前の人に会ったことが、今まで一度もなかった。それが、ひと部屋に3人も「ミレイちゃん」がいるのだから、なんということだろう。
メレーさんもアナさんも、私と会わなければ、互いに同じ名前だとは気づかなかったわけだし。これも、何かの引き寄せだったのかもしれない。
名前といえば、ダニエルさんのファミリーネーム「アカカ」には聞き覚えがあった。ハワイでは多い苗字なのかと聞いてみたら、「多くはないです。でもアカカという名なら、みんな親戚ですよ」と言う。「そういう名前の政治家がいたのでつい・・・」と言うと、「ああ、それは私の父親です」という答え。これまた驚いた。
ダニエル・アカカは、ハワイ先住民の血を引く初めての上院議員として地元では有名な人だ。その息子さんに池を案内してもらっていたのか、と思ったら恐縮してしまった。

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