アメリカ エネルギーロードを往く
テキサス編

文&写真/水島伸敏(Text and photos by Nobutoshi Mizushima)

 

Photo © Nobutoshi Mizushima

Photo © Nobutoshi Mizushima

ミッドランドへ

旅の出発地、テキサス州ミッドランドへ向かう。アメリカでは1920年代から石油の採掘が始まり、第二次大戦後は2度目のブームを迎え、70年代に起こったオイルショック後の低迷期を越え、水平式の掘削が行われるようになると、2000年以降は、近代のアメリカンドリームと評されるいわゆるシェール革命に乗り、今まさに3度目のブームを迎えている生粋の石油の街だ。
ここを出発地に選んだのは、昔観た『ジャイアンツ』という映画の印象からだ。巨大油田というジャイアンツの意味さえもわかっていなかったが、ジェームス・ディーンのはにかんだかっこよさと、テキサスの乾いた土地からオイルが吹き出すシーンがとても印象的に記憶に残っている。
テキサス州はアメリカの一つの州でありながら、日本の2倍近くもある広大な面積を持っている。今でこそアメリカを象徴するような場所に思われるが、かつてはテキサス共和国という独立国だった時代もある。その利権をめぐりアメリカとメキシコは戦争をした。ミッドランドはその北西にある街だ。

■  ■  

 車を南へと走らせて、テキサスをめざした。このあたりは山もなく、雨も少ない。そのため低い植物しかない平原が続いている。テキサスに入ると映画さながらの古めかしいポンプがぽつりぽつりと遺跡のように続いている。車を降りてポンプの一つに近づいてみた。錆だらけの機械がギーギーと音をたててゆっくりと原油を地下から汲み上げている。こんなものがまだ動いていることに驚いて感心しながら、しばらくその場で見ていると、今度は、“くたびれたから少し休むよ”とでも言うように静かに肩を落として動きを止めた。まるで自分の意思で動いているようだ。この機械たちはいったいどのくらいの間この場所でこうして、オイルを汲み上げているのだろうか。たくましくも見えるが、少しかわいそうにも思えてくる。
そんな古びたオイルフィールドを走っていると真っ先に見えてきたのは、水平掘削機ではなく、風力発電用の大きな風車だった。白い風車たちは、夕日を受けながら伸ばした羽を静かにまわしている。こうした風景は私の持っていた荒々しいテキサスの印象とは違って、のどかで優しい印象を受けた。
実は、近年のテキサスは油田開発と同じく、その広大な土地を活かして、風力発電がとても盛んに行われている。ミッドランドがあるパーミアン・バイソンと呼ばれるオイルフィールドの周りにも大規模なウインドファームがいくつか建てられている。以前はオイルカンパニーに、今はウインドファームに土地を提供するという地主たちも少なくないという。テキサスの電力自由化が比較的うまくいったと言われるのはそのあたりも関係しているのかもしれない。
風車に気を取られているとミッドランドの隣街、オッデッサに近づいてきた。日が沈みかかった平原にオイルで燃えている炎たちがうっすらと浮かび上がってくる。アメリカではなかなか見ない風景だ。中東かどこかの油田地帯に来てしまった気がしてくる。強い原油が鼻を突く。窓を閉めている車の中までオイルの臭いが充満してくる。タオルで口と鼻を覆いながらしばらく走った。

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