シリーズ世界へ! YOLO⑲クロアチア紀行
森とワインと国境と…

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

キノコがいっぱい、サラダバーのようなパプク国立自然公園のトレイル Photo © Mirei Sato

キノコがいっぱい、サラダバーのようなパプク国立自然公園のトレイル
Photo © Mirei Sato

DAY 2

パプク(Papuk)

クティエボ(Kutievo)

朝起きると、雨はやんでいた。食堂へ向かう。でました、朝食からブタ祭り。昨夜とはまた違う種類のソーセージや、分厚いベーコンが並んでいた。
パンにつけるバターも、ブタの脂肪からつくったものだ。オレンジ色をしているのは、これまたスラボニア料理の特徴であるパプリカを使っているからで、味はまさに「ポークファット」。参った、と言いたくなるほど美味しい。

ここで日本人やアメリカ人なら「いやだー太っちゃうー」などと言ってみせるのだろうが、スラボニアの人たちは悪びれる風もない。

「しめ」は、当然のように、スリーボビッツアが出てきた。「消化にいいですからね」
まだ朝8時だよと一瞬躊躇したが、旅先でおもてなしを受けたらNOとは言わない。チビチビなめて、出発した。

◆  ◆  

 スラボニア地方を最初に訪れた古代ローマ人は、ここをゴールデンバレーと呼んだそうだ。ポーツェガ郊外に広がる「パプク国立自然公園」へ行くと、それが実感できる。
朝靄がかかる森は、ちょうど紅葉が始まったばかりで、オークやバーチ、パインツリーの木々が輝いていた。

森林浴のハイキングは、まるで終わりのない「サラダバー」を歩いているよう。そこらじゅうにキノコが生えている。どれもなかなか美味しそうだ。一部の保護種を除いて、どれも食べられるという。

日本では、春になるとキノコ狩りが盛んで、必ず毒キノコにあたって死ぬ人が出る。クロアチアではそこまでいかないようだが、春の雪解けの時期になると、野生のキノコをサラダにしたりオムレツにしたりして楽しむそうだ。
公園のレンジャーの人が、「そういえば最近、地元のキノコ好きが集まる学会があって、日本からもキノコ好きな夫婦が来ていたわね。パプクで採った50種類のキノコでつくったスープをみんなで飲んだのよ。美味しかったわー」と、楽しそうに振り返っていた。

前夜の大雨のおかげで、森はツヤツヤしている。木の幹は濡れて黒光りし、土の赤みが強調されていた。木立をじっと眺めると、哲学の本を読んでいるような気になってきた。

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