米国市民権取得の条件と申請のプロセス

文/ミチコ・ノーウィッキ(Text by Michiko Grace Nowicki)

 米国市民権申請の資格としては、まず永住権取得から5年また米国市民と結婚した場合は3年以上経過している必要があります。期間満了の3カ月前から申請を開始できます。米国に継続的に居住する必要があり、長期間(例えば6カ月以上)不在にすると、市民権の取得ができない場合があります。通常、不在期間が6カ月以上1年未満の場合は、継続的な居住を放棄したと見なされ、市民権取得に影響を及ぼす可能性があります。この場合、申請者が米国における継続的な居住を放棄していないという客観的な証拠を提出することで、申請が可能になる場合があります。この証拠を提示する責任は、申請者側にありま す。

市民権取得申請の条件
① 18歳以上であること
② 居住者として所得税を申告し、その支払いを行っていること
③ 過去の結婚で生まれた子供と別居している場合、養育費支払いの証明を提出する
④ 道徳に反する犯罪を起こしていないこと。過去5年以内に逮捕歴があったり、過去に重罪で逮捕されたりしたことがある場合、その最終処分の供述書を、裁判所から取り寄せる。さらに、更正しているという供述書も添えることが必要な場合もある
⑤ 18歳から31歳までの間に永住権を取得した男性の場合、面接時に18歳から26歳までの間にアメリカの義務兵役に登録していた証明が必要となることもある

 なお、家庭内暴力や道徳に反する犯罪歴があったとしても、認可される可能性はあります。飲酒運転などの犯罪歴も、裁判所から下された条件を満たしたことを証明すれば、ほとんどの場合は取得できます。

市民権の取得申請プロセス
 申請は、書類「N-400」を記入して移民局に提出し、指紋採取を行った後、インタビューと筆記テスト(口述試験の場合もあり)を受けます。

 インタビューでは会話能力が測られ、ビザ関連の資料について質問されるほか、筆記テストで英語の読み書きの能力が測られる場合もあります。

 また、米国の歴史・政治に関する基礎知識が試されるテストも行われます。難易度は、アメリカの小学4年生程度です。出題される問題は、ほとんど決まっていますので、事前に勉強しておくことを推奨します。

 なお、インタビューの際に通訳を付けることができますが、以下の条件が必要です。
 ● 身体の障害を証明できる
 ● 50歳以上で、合法的な永住権保持者として20年以上米国内に居住
 ● 55歳以上で、合法的な永住権保持者として15年以上米国内に居住
 ● 65歳以上で、合法的な永住権保持者として20年以上米国内に居住

 合否はその場で知らされ、合格者には宣誓式の通知が郵送されます。通常インタビュー後、1〜2カ月で宣誓式となります。指定日に、指定会場で宣誓式に出席します。会場では、アメリカの国家に関するビデオを観た後、宣誓式を行い、帰りに帰化証明書が配布されて米国市民となります。

*本コラムは顧客からの質問を一般的なケースに書き換えたものであり、読者への情報提供を目的としたものです。特定事例における法的アドバイスが必要な場合は、専門家に相談してください。

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ミチコ・ノーウィッキ (Michiko Nowicki)

ミチコ・ノーウィッキ (Michiko Nowicki)

ライタープロフィール

ウィリアム・S・リチャードソン・スクール・オブ・ロウ卒業。米国移民弁護士協会所属、米国弁護士協会所属、ハワイ州弁護士協会所属。日本居住歴19年。バイリンガル。

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