第44回 キャリアデー

文&写真/福田恵子(Text and photo by Keiko Fukuda)

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 ある時、ニナが学校へ行く車中でこんなことを言った。「私はイラストを描くのが好きだけど、憧れのアニメーターやイラストレーターになったとしても生活していくのは大変だと思う。自分が好きなことで、しかもちゃんとお金が稼げる仕事を見つけなくちゃ」。女の子は男の子と比べ、現実的である。

 しばらく経って、今度はこう言った。「将来の仕事は建築家がいい。クリエイティブだし、やりがいも感じられるでしょ」。以前は日本語教師と言っていたが、考えが変わったようだ。そこで私は思わず「以前に空港や大学の建物を設計した建築家にインタビューしたことがある。彼の話を聞くと参考になるんじゃない?」と提案した。しかし、忙しさにかまけてそう言ったことを忘れていたら、「例の建築家にはいつ会わせてくれるの?」とプッシュされてしまった…。

 そうこうするうちに、ニナの中学で10年ぶりにキャリアデーが開催されることになった。キャリアデーとは、生徒たちの将来の職業選びの参考にしてもらうための実際の仕事人たちによるお話会。校長からは事前に「充実したイベントにするために、当日話をしてもらうスペシャリストの目標人数を40人とする。保護者自身が自分の職業について話せる人、または知り合いに協力してくれる人がいれば紹介してほしい」というEメールを受け取っていた。

 最終的に集まった仕事人たちは実に44人。資料には、NFLの選手、女優、タレントエージェントといった華やかな職業から、高校の校長、私たちが暮らす市の市長、警官や消防士といった堅めの職業までずらりとリストされている。土地柄かエンターテインメント系の職業が多い印象だ。ちなみに、ニナの小学校からの友人のファンキーな外見の父親がDJだということを、この資料で初めて知った。

 44人のスペシャリストたちは44の教室で生徒たちを待ち構える。1人の生徒が聞けるのは8つの仕事まで。資料を見て、私自身がオーディエンスとして参加したくなったが、ニナによると「チケットも保護者のスペースも、もうない」とのこと。

好きなことを仕事に

 ニナが話を聞いたのは、ビデオゲームのデベロッパー、サウンドエンジニア、作曲家、ロサンゼルス市警の警官、マーベルスタジオのプロダクションデザイナー、ベーカリーのオーナー、ディズニーのプロジェクトマネジャー、獣医。誰の話が一番面白かったかを聞くと、彼女はこう答えた。

 「断然、ビデオゲームのデベロッパー。カレッジをドロップアウトして何をしようかなと考えていた時に、好きなゲームの会社にパートタイムで働くチャンスをつかんだんだって。そこで頑張って、プロモートして、今では時給で100ドルって言ってたよ」。それは凄い。やはり好きなことを仕事にすることがいかに幸福か、そのことを彼が子どもたちに伝えてくれたのだとしたら大感謝だ。

 将来の仕事を意識し始めるのに中学はちょうどいい時期のように思える。もちろん、これからなりたい職業が次々に変わっていくかもしれないが、目標を持つことが原動力になる。私も中学時代に大ファンだったロックバンドのクイーンにインタビューするライターになろうと、英語の強い大学に進み、出版社に入った。いまだにクイーンにインタビューはできていないが、文章に携わる仕事に就けて幸せだと感じている。子どもにも好きな道を歩んでほしい。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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