バージニアの休日 〜ワイナリー編

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

 

アメリカにワインを伝えた人物とされる、トーマス・ジェファーソン大統領の邸宅「Monticello」 Photo © Mirei Sato

アメリカにワインを伝えた人物とされる、トーマス・ジェファーソン大統領の邸宅「Monticello」
Photo © Mirei Sato

 「バージニアほど美しい場所はない」と言うアメリカ人にときどき出会う。確かにドライブしていると、ほかの州にはない「品格」のようなものを感じる。

 首都ワシントンDCに隣接、というより、バージニアがその一角を貸し出しているというべきか。DCの玄関口・ワシントン=ダレス国際空港は、実際にはバージニアにある。ペンタゴン(国防総省)もアーリントン国立墓地もそうだ。

 アメリカで最も裕福な郡(カウンティー)は、バージニアのフェアファクス郡で、2番目がラウドゥン郡。DCでいくら稼いでも土地が狭いので家の広さは知れているから、政治家や軍関係者、企業のトップが好んでバージニアに住む。

 イギリスの最初の植民地ジェームズタウンはバージニアに建設されたし、南北戦争の時代にはリッチモンドが南軍の首都だった。いわば「オールドマネー」と「ニューマネー」が共存している。ただしリッチモンドを境に、バージニアの北部と南部では、人々の価値観やアイデンティティー、歴史認識はだいぶ違う。

トーマス・ジェファーソン大統領の邸宅「Monticello」の農園。大勢の奴隷が働き、ワインのブドウ栽培も行われた Photo © Mirei Sato

トーマス・ジェファーソン大統領の邸宅「Monticello」の農園。大勢の奴隷が働き、ワインのブドウ栽培も行われた
Photo © Mirei Sato

 DCのすぐ外に位置するラウドゥン郡は、東海岸を代表する「ワインカントリー」だ。最近はどこもかしこもそう名乗るが、バージニアの場合、州出身の第3代大統領トーマス・ジェファーソンが、フランスから帰国して邸宅モンティチェロでワインづくりを試みたのがアメリカのワインづくりの始まりだとされているから「由緒」はある。

 1980年代に再び盛んになり、今はワイナリーが約275カ所。カリフォルニア、オレゴン、ワシントン、ニューヨークに次いで5番目に多い。

 ラウドゥン郡には約45のワイナリーがある。養牧場、19世紀からあるような古い木の柵をめぐらせた農場、奴隷農園の跡地、アメリカ建国史を彩った古跡…。それらの合間をなだらかな丘陵に沿って、ブティックワイナリーが点在する。山の中腹から晴れた日にはDCのワシントン記念塔が望めるワイナリーもある。

ワインのコルクやラベルを模した、ラウドゥン郡の「LOVE」サイン Photo © Mirei Sato

ワインのコルクやラベルを模した、ラウドゥン郡の「LOVE」サイン
Photo © Mirei Sato

 驚いたのは、どこも人出が多いこと。特に子供が多い。犬も一緒に、丘を駆け回って遊んでいる。21歳以上限定のエリアでは、大人たちが食べ物を持参して終日ピクニックを楽しんでいる。

 カリフォルニアではワインはレストランや自宅で飲むことが多いが、バージニアでは晴れた週末にワイナリーに出向いて飲む。カリフォルニアに比べてブドウを育てられる期間が限られ、州産ブドウの生産量がまだ少ない。だからローカルワインが酒屋やレストランに出回っていない、直接ワイナリーに行かないと飲めない、という事情もある。

 白ならヴィオニエ、赤ならカベルネ・フランが、このあたりでは一番うまく育つという。

満開のバージニアの州花「ドッグウッド」 Photo © Mirei Sato

満開のバージニアの州花「ドッグウッド」
Photo © Mirei Sato

1

2

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. アメリカ在住者で子どもがいる方なら「イマージョンプログラム」という言葉を聞いたことがあるか...
  2. 2024年2月9日

    劣化する命、育つ命
    フローレンス 誰もが年を取る。アンチエイジングに積極的に取り組まれている方はそれなりの成果が...
  3. 長さ8キロ、幅1キロの面積を持つミグアシャ国立公園は、脊椎動物の化石が埋まった岩層を保護するために...
  4. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
  5. 私たちは習慣や文化の違いから思わぬトラブルに巻き込まれることがあり、当事務所も多種多様なお...
  6. カナダの大西洋側、ニューファンドランド島の北端に位置するランス·オー·メドー国定史跡は、ヴァイキン...
  7. 2023年12月8日

    アドベンチャー
    山の中の野花 今、私たちは歴史上経験したことのないチャレンジに遭遇している。一つは地球温暖化...
  8. 2023年12月6日

    再度、留学のススメ
    名古屋駅でホストファミリーと涙の別れ(写真提供:名古屋市) 以前に、たとえ短期であっても海外...
ページ上部へ戻る