ガラパゴスの旅〜後編

文/矢田侑三(Text by Yuzo Yada)
写真/カズ高橋(Photos by Kaz Takahashi)

 

赤い喉袋を膨らませるグンカンドリの雄 Photo © Kaz Takahashi

赤い喉袋を膨らませるグンカンドリの雄
Photo © Kaz Takahashi

写真家が見たガラパゴス

 数年前、僕は一度ガラパゴス諸島への旅行を計画したことがあった。しかし経費の関係で計画は頓挫した。7泊8日の日程で5千ドルの経費は僕には高すぎた。そして日本で買ってきたガラパゴス諸島の旅行案内書も本棚の奥に埋もれてしまっていた。

 そんな時友人を介して東京に住む矢田さんという方からメールが届いた。「私は子供の頃からガラパゴス諸島に憧れて一度は行ってみたいと思っていました。貴方が旅行を計画していることを知人から伺い一緒に連れて行っていただけないかお願いしているところです」

 僕ははじめ乗り気しなかった。カメラマンと一緒の旅行は写真を撮らない人にとっては退屈で、喧嘩になることさえある。だから僕のこれまでのアメリカ国立公園の旅はほとんど一人旅だった。それに彼の74歳という年齢から(僕ももう70近い初期老人の部に入るが?)ハードな行程についていけるか心配だった。

 しかしメールでのやり取りの後、実際スカイプで話してみて心配は危惧に終わった。とても気さくで子供みたいな夢を持ち続けている人だとわかった。そしてジムに通い体力の維持にも努めているという。

アシカが寝そべるベンチに座る矢田さん(サンクリストバル島) Photo © Kaz Takahashi

アシカが寝そべるベンチに座る矢田さん(サンクリストバル島)
Photo © Kaz Takahashi

 僕は安心して旅の計画を始めた。以前コンタクトした旅行代理店のインターネットにアクセスしてまず安いクルーズ探しから始めたが、3年前からして料金はさらに値上がりしていた。7泊8日のクルーズで、安くて4千ドル、アッパーデッキのファーストクラスは5千ドル以上が相場だった。日本の代理店が取り扱っているクルーズも調べたがやはり割高だった。

 僕たちは部屋は狭くて窮屈でも最小限7泊8日の日程の旅を探した。経費を安くしようと思えば4泊5日や、ひとつの島に留まってそこから日毎のクルーズで島巡りをする旅などあるが、この旅は一生に一度の旅になるだろう。できるだけ長く滞在して島々を回りたかった。

 そして乗客30人の中型船で1人3300ドルの「コーラル1」が見つかった。僕は矢田さんの了承をもらうとすぐに予約した。後でわかったことだったが乗客30人の中型船を選んだのは本当にラッキーだった。ゴムボートでの乗り降りや食事など大型船に比べとてもスムーズに行われたからだ。

 一度諦めたガラパゴスの島々が、また僕の頭の中いっぱいに広がってきた。そして国立公園を回ったあの時のパッションがまた甦ってきた。

 この旅に備えて僕は1台のカメラを中古で購入した。GoProという手の平に収まるオモチャみたいなカメラだ。最初は半信半疑だったがこれがとても優れものだとすぐにわかった。以前は水中写真にはニコノスや大きなハウジングをつけたカメラを使っていたが、GoProのおかげで迫力のある動画を水中で簡単に撮ることができた。この紙面の水中写真は全てこの動画から取り込んだものである。

 そしてこの旅の集大成のビデオをYou Tubeにアップできた。

 旅が終わってもう1カ月以上が経とうとしているのに、思い出は一向に色あせない。友人にガラパゴスのことを話すたびに羨ましがられる。旅から旅の人生を送ってきた僕の中でもこの旅だけは特別なものとなった。人生で一度は行ってみたいところ、その夢の島ガラパゴス諸島がついに自分のものとなったのだった。

 最後にこの旅の実現に手助け頂いた矢田さんに心より感謝の言葉を贈りたい。

 

下記リンクからYouTubeにアクセスしてください。皆さんとガラパゴス諸島の旅の思い出を共有できたらカメラマンとしてこんなに光栄なことはありません。

YouTubeのビデオ:
Galapagos Islands Part-2(陸の動物たち)
www.youtube.com/watch?v=p8_7aZZsjxk

Galapagos Island Part-1(水中の動物たち)
www.youtube.com/watch?v=_1xagJ0522M

map_gakaoagis

矢田侑三
1941年京都生まれ。大学卒業後、商社に勤務。40代半ばで退社し、一念発起して大学院に入学し、言語学の修士号を取得。外国人のための日本語教育に専念。国際交流基金の海外教師派遣プログラムで、カイロ大学とテヘラン大学で教える。その後ザグレブ大学で教え、70歳で教師生活を終えた。東京で、悠々自適の引退生活を送っている。

カズ高橋(高橋和男)
1948年鹿児島県生まれ。高校卒業後陸上自衛隊入隊。301写真中隊(現301映像写真中隊)で写真を学ぶ。除隊後東京のスポーツ新聞社勤務。1983年フリーランスとして渡米、スポーツカメラマンのかたわら同時に全米58カ所の国立公園(現在59カ所)の撮影に挑戦、約7年かけて全踏破した。写真集、「アメリカの遺産」「北米の野生動物」など。フロリダ州ポンパノビーチ在住。 
www.kaz-photography.com

1

2

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

この著者の最新の記事

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. アメリカ在住者で子どもがいる方なら「イマージョンプログラム」という言葉を聞いたことがあるか...
  2. 2024年2月9日

    劣化する命、育つ命
    フローレンス 誰もが年を取る。アンチエイジングに積極的に取り組まれている方はそれなりの成果が...
  3. 長さ8キロ、幅1キロの面積を持つミグアシャ国立公園は、脊椎動物の化石が埋まった岩層を保護するために...
  4. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
  5. 私たちは習慣や文化の違いから思わぬトラブルに巻き込まれることがあり、当事務所も多種多様なお...
  6. カナダの大西洋側、ニューファンドランド島の北端に位置するランス·オー·メドー国定史跡は、ヴァイキン...
  7. 2023年12月8日

    アドベンチャー
    山の中の野花 今、私たちは歴史上経験したことのないチャレンジに遭遇している。一つは地球温暖化...
  8. 2023年12月6日

    再度、留学のススメ
    名古屋駅でホストファミリーと涙の別れ(写真提供:名古屋市) 以前に、たとえ短期であっても海外...
ページ上部へ戻る