第16回「ドリンキングで酢」

文&写真/小野アムスデン道子(Text and photos by Michiko Ono Amsden)

健康志向のこの町で人気
飲むお酢が棚に並ぶ

 このUS FrontLineも配布されている、有名な日系スーパーマーケット「宇和島屋」。ポートランドに隣接するビーバートンの支店の棚に調理用の酢と並んで飲むお酢が置かれている。一つは、シソやユズなどの絵が描かれたラベルがかわいい「Genki-Su(げんき酢)」。もう一つは、黄色のラベルが目立つ「Pok Pok Som(ポク・ポク・サム)」だ。

 Genki-Suを創業したのは、ポートランドに住む日本人の新城貴子さん。「ヨガの講師もしていて、ヨガの後に酢を出したらとても好評でした。そこで、2012年からイベントやファーマーズマーケットでGenki-Suを売り始めました」とそのきっかけを語る。「ジョギングやハイクを楽しみ、子供の給食の食材にこだわるなど、コミュニティー志向、健康志向が高いポートランドで、飲むお酢に対する手応えを感じました。ウェブで生産のための資金集めを行うと、地元の出資者がイベントに来てくださったのです」。今ではオレゴン州外にも顧客が広がってきている。原材料の酢はフィリピンから輸入しているココナツビネガーはじめ3種類の酢をブレンドし、生のフルーツを利用して自然な風味を出している。おすすめの飲み方はソーダ割りで、各フレーバーに濃縮タイプと、既に炭酸水で割った物と2種類を作っている。また、カクテルのフレーバーとしても利用している人もいるそう。

Genki-Suをローカルのスーパーマーケットで自ら販売する創業者の新城貴子さんPhoto © Michiko Ono Amsden

Genki-Suをローカルのスーパーマーケットで自ら販売する創業者の新城貴子さん
Photo © Michiko Ono Amsden

有名タイレストランの
ビネガー・カクテル

 もう一つの「Pok Pok Som」は、「料理界のアカデミー賞」と言われるジェームズ・ビアード賞やミシュランの一ツ星も獲得したポートランドの有名シェフであるアンディ・リッカーさんがタイ料理とマッチするビネガー・カクテル用に出しているオリジナル果実酢だ。アンディさんは「アメリカでは、アメリカ合衆国植民地時代と呼ばれる18世紀に、シュラブ(shrub)という果実を漬け込んだ甘い酢をスピリッツや水、炭酸水で割って、健康のために飲む習慣がヨーロッパから伝わってきていた。だから酢をカクテルに使うのは昔からあったこと」だと言う。

 2007年頃に、ポク・ポクでカクテルメニューを作った時に、果実酢を使ったアップル・ジン・リッキーというジンベースのビネガー・カクテルを出して、とても好評を得た。当初は、アジアン・マーケットで果実酢を買っていたが、安定した確保が難しく、自分で造ることにしたという。ベースのサトウキビビネガーはフィリピンから輸入。ナチュラルなフルーツにオーガニックの砂糖を使って、定番のアップル、ハニー、タマリンド、ポメグラネイト(ザクロ)のほかに季節の商品など、ラインナップは全20種類、うちだいたい8種類を常時売っている。「Pok Pok Som」は、酸度2.5%と酸っぱ過ぎない味に仕上げており、甘酸っぱいまろやかな味が人気で、日本にも輸出されている。

 健康のために酢を飲むのは、アジアの人には馴染みのあることかもしれないが、それが商品化までされる背景には、やはりポートランドの健康志向があるようだ。

タイ料理とウィスキーを楽しめる店「ウィスキー・ソーダ・ラウンジ」にてアンディ・リッカーさんPhoto © Michiko Ono Amsden

タイ料理とウィスキーを楽しめる店「ウィスキー・ソーダ・ラウンジ」にてアンディ・リッカーさん
Photo © Michiko Ono Amsden

Genki-Su(げんき酢)
www.genkisu.com

Pok Pok Som(ポク・ポク・サム)

pokpoksom.com

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小野アムスデン道子 (Michiko Ono Amsden)

小野アムスデン道子 (Michiko Ono Amsden)

ライタープロフィール

世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、フリーランスへ。東京とポートランドを行き来しつつ、世界あちこちにも飛ぶ。旅の楽しみ方を中心に食・文化・アートなどについて執筆、編集、翻訳多数。日本旅行作家協会会員。

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