物流を制するものはビジネスを制すか?

今回から新たなコラムとして「知っておいて損しない物流の話」という物流関連の記事を掲載することとなった。物流アドバイザー、コーディメーターとして業界25年の経験が生かされれば幸甚である。

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皆さんは「蕭何」(しょうか)という人物をご存知だろうか。項羽と劉邦や、楚漢時代に詳しい人なら一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。中国の歴史で漢の時代を築いた劉邦に絶対の信頼を置かれた人物である。彼は劉邦の腹心といわれた大将軍韓信や戦略家張良のような武人ではない。戦跡に大きな功績を残したわけでもない。そんな人物を何故、劉邦は重宝したのか。「蕭何」無くして劉邦の活躍も漢の建国もなかったとも言われる。何故、それほどまでに彼は評価をされたのか。

彼「蕭何」は、劉邦が戦いに出向くと、後方で武器や食糧、野営用の寝具などの調達を行い、常に前線に送り込んだ。敗戦の色が濃い戦場でも彼は食糧や武器を送り続けた。劣勢に置かれた兵士たちも後方から武器や食糧が運ばれることで戦意を盛り返し、また敵兵に向っていった。どんなに負けが込んできてもこうした動きは続き、最後は敵方の武器の不足、食糧の不足から来る戦意の喪失によって自軍に勝利を呼び込んだといわれる。

「蕭何」が行った物資の調達と輸送こそ、のちに「兵站」といわれる軍事上の活動である。「兵站」は「戦略」「戦術」にならぶ「戦の勝利」を呼び込む重要な要素である。「戦争のプロは兵站を語り、戦争の素人は戦略を語る」という格言はこのように特に兵站の重要性を端的に表現したものであると言える。

では、ビジネスにとって兵站とはなにか。それは、いまやビジネス展開上でもっとも頻繁に使われる用語である「SCM」(Supply Chain Management) につきるであろう。「物流」とは、このSCMの活動を円滑に進める経済活動上の基盤で有る。

仕事柄、多くの貿易や輸出入を手がける会社や人を見てきたが、残念ながら利あらずビジネスから撤退する会社や人を見るとほとんどの場合戦略や戦術の優秀さに比較して物流の構築が稚拙で手薄であった。仕入れと販売のみに着目し物流は後回しというケースが大半であった。この欄では、冒頭の「物流を制するものはビジネスを制すか」というテーマに沿って、さまざまな事例やデータを通して分析、検討、精査を試みたい。

今回、アメリカ新大統領の誕生に伴う政策転換によりグローバル戦略の見直しを迫られる企業は多い。しかし、市場に制限が加えられれば加えられるほど、物流の重要度は増すと考えられる。Eコマースやオンラインがどれほど発達したとしても、ドラえもんの「どこでもドア」のような異次元空間移動手段が開発されない限り物流は発生する。物流は「リアル」そのものなのである。この欄が今後、Eコマースやオンラインショップでのビジネス展開を考えている人や貿易、輸出入を生業としている人に少しでもお役に立てれば嬉しい限りである。質問やお問い合わせは、Shipfan1@gmail.comまで。

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赤岩寛隆 (Hirotaka Akaiwa)

赤岩寛隆 (Hirotaka Akaiwa)

ライタープロフィール

外航海運会社で20年以上にわたり北米定期航路の集荷営業に従事。北米駐在を経て2013年9月、北米唯一の海運、港湾、物流情報発信会社SHIPFANを設立。
「日本海事新聞」紙上に「ロサンゼルス便り」、 ロサンゼルスのフリーペーパーに「物流時報」を定期掲載するほか、物流コンサルティング、物流セミナー、港湾ツアーの開催、輸出入のマッチング業務を手がけている。ロサンゼルス港に「コンテナ物流研究所」を開設。

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