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仕掛け人に聞く
日本の食ニューウェーブ
- 2016年11月1日
- 2016年11月号掲載
日本酒
丹精込めたプレミアムなイメージを確立
その起源は1743年に遡る日本酒のブランド、白鶴は、同時に斬新な試みに取り組むチャレンジャーとしての顔も持つ。東京都心の銀座のビルで米を栽培し、「白鶴銀座天空農園」と名付けていることはよく知られている。この屋上農園では、白鶴が独自に開発した酒米の「白鶴錦」を育てている。山田錦の兄弟米である、酒造好適種米の白鶴錦は、兵庫県内で自社米として本格的に栽培されている。
この白鶴錦を使った純米大吟醸酒であり、同社がアメリカで現在最も力を入れている商品が、7月にロサンゼルスで販売を開始した白鶴錦だ。「華やかで爽やかな香り、そしてふくよかなボディのある辛口酒です。香りと味の両方のバランスが取れた酒だと自負しています」と特徴について語るのは、Hakutsuru Sake of Americaの酒スペシャリト、飛田良樹さん。
「味と香り以外にも、当社で独自に開発し栽培したお米を使用しているというストーリー、さらにパッケージデザインもご好評をいただいています」
味が優れていても、見た目が消費者にアピールするものでなければヒットには繋がらないという信念のもと、アメリカ市場を中心的に捉えた世界共通デザインで完成したのが白地にゴールドを配した華麗なパッケージである。アメリカ人の意見を取り入れた上で「お酒好きなアメリカ人にとっても、今や純米大吟醸はそのまま通じるため、Junmai Dai Ginjoとの表記で入れました」と飛田さんは語る。
気になる値段は、小売店での目標価格が79ドル99セント。これからのギフトシーズンには贈り物として、またパーティーや大切な記念日にも活躍しそうだ。日本で最も販売量が多く手頃なイメージもある白鶴だが、この新商品では「米から丹精込めて作り上げた最高の日本酒」としてのプレミアムなブランドイメージを確立しようとしている。
また、白鶴錦と共に、アメリカで力を入れているのがスパークリング酒の淡雪。「アメリカでの流行の波に乗り、さらに売り出すべく、目標価格7ドル99セントというお求めやすい価格で販売しています。ワインも日本酒も同じ醸造酒です。スパークリングワインが愛されているアメリカで、今後は当然のようにスパークリング酒も受け入れてもらえる時代が来ることを視野に入れ、プッシュしていきます」
値段と同じく楽しみ方もルール不要なカジュアルなスタイルを提案していくという。「米本来の自然な甘みが感じられるのでそのままでも十分ですが、趣向を変えて、コロナビールのようにレモンを入れたり、またストローで飲んだりしてもいいと思います。さらにベリーやネクターと合わせるのもおすすめします。今までの日本酒とは違って、ポップに飲んでいただきたいですね」
そして、現在アメリカで好調に売り上げを伸ばしており、今後もさらにその勢いを加速させたいと同社が考えているのが、濁り酒のさゆりだ。味は飲みやすく、ピンク色の可憐な女性を連想させるボトルデザインが人気の秘密だと、ライフスタイルメディアのgayotでも分析されている。
プレミアムな純米大吟醸、ポップなスパークリング、そして飲みやすい濁り酒と、これからの日本酒は商品ごとに異なる特徴を押し出すことで、より広い層の支持を集めていくことが期待できそうだ。
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