睡眠の質を追求するマットレス
ベッド文化のアメリカで勝負賭ける

New Business Close Up
アメリカで新たな事業を手がける人物をクローズアップするインタビューシリーズ。
アメリカのオリンピックチームのスポンサーでもあるエアウィーヴの高岡代表に聞く。

エアウィーヴホールディングス代表取締役会長 高岡本州

エアウィーヴホールディングス代表取締役会長
高岡本州
Photo © Keiko Fukuda

なぜ、ニューヨークに1号店?

 日本は寝具に関しては布団とベッドと両方がありますが、アメリカはベッドの文化ですね。ベッド文化の地域で、私共の製品の評価を受けることが事業をする上で一番大事だと考え、2007年に会社を立ち上げた当時からアメリカ進出は頭にありました。日本ではエアウィーヴはトップアスリートやホテル、エアラインで使っていただき、ブランドを構築しました。しかし、世界最大の市場であるアメリカでブランドを作り上げないことにはグローバルにはなれません。

 私共は薄型のマットレスパッドから作り始めました。テレビも液晶になって非常に薄型になりましたね。テレビというのはグローバルな商品であり、液晶テレビの時代になった市場では結局、サムソンが買ってシャープが負けました。これは早くグローバル化した方が勝ったということです。薄いテレビもそうですが、薄いマットレスパッドはロジスティックコストが低い。つまり、海外に商品を送りやすいということでもあります。だから、早いうちから海外に出ようと思っていたのです。

 第1号店はニューヨークではなく、ロサンゼルスを考えていました。エアウィーヴは睡眠の快適さを謳っています。つまり、ウェルネス志向の強いロサンゼルスがいいのではないか、と思ったわけです。しかし、結局ニューヨークにした理由は、ニューヨークは非常に忙しい街であり、心身のリカバリーを必要としている方が多いと考えたからです。もうひとつ、立ち上げの時にはマーケティング戦略に大きなお金を使うことができません。広告ではなくPRを中心にしていくことになります。そうなると、word of mouth(口コミ)が強いのは人々のモビリティが多いニューヨークです。

 SOHOの店は開店して1年半になりますが、やはり路面店というのはブランドが認知されないと入ってもらえません。日本ではデパートというトラフィックの多い場所に置いて自然とデパートの顧客に認知してもらえました。しかし、路面店の場合は目的がないと入店しないのです。ここで売上を上げるのは大変なことですが、ショールーム、またはB to Bの商談をするようなPRの拠点ととらえています。

 アメリカでもデパートに商品を置くということも将来的にはあるかもしれませんが、非常に取引条件が厳しく、また、デパートよりもベッド専門のチェーン店の方に顧客は流れています。そういう専門店はディスカウントをして売っていることが多い。一方、エアウィーヴの商品は睡眠の質を売っているので安売りはできません。日本ではもちろん定価で販売しています。たとえるとしたら、シャネルやエルメスなどのブランドは、安売りしません。それは製品のクオリティを売っているからです。

Photo © Keiko Fukuda

Photo © Keiko Fukuda

チームUSAからの信頼
スタンフォードで研究

 アメリカのオリンピックチームにはじめに接触したのは2013年です。これはコロラドにあるオリンピック委員会に出かけて行き説明をして、コーチも含めたチームUSAにエアウィーヴをお見せしました。すぐに製品の良さを理解していただき、2014年のソチオリンピックのスポンサー契約をさせていただくことができました。全幅の信頼をいただいており、今も非常にいい関係です。これもスタンフォード大学に睡眠研究を依頼し、運動選手のリカバリーにいかに睡眠の質が関わってくるかというデータを提出したことが大きかったと思います。チームUSAのスポンサーとして、我々のような名もない会社でも受け入れてくれたことに感謝しています。チームUSAのスポンサーとしては唯一の日本企業、そして一番売上が少ない会社でもあります(笑)。実は日本とアメリカだけでなく、中国、オーストラリア、ドイツのオリンピック委員会のスポンサーもやっているんです。

 スタンフォードでの研究に関しては、2010年に睡眠研究のドクターにお願いしに行きました。なぜ、行ったか? 2009年に早稲田大学でも研究してもらいましたが、グローバルに展開していくには、世界的に名の通った大学で研究してもらう必要があるのです。その時にドクターに言われたのが「マットレスと睡眠の質の関連性を証明する研究はなく、好みの問題ではないだろうか」ということです。しかし、私は「そんなことはない」と食い下がり、研究をお願いした結果、ドクターには「寝具のセレクションが睡眠に影響を与えることが初めて分かった」と言われました。つまり、それまでそのような研究がなかったのは、我々のように素材からすべて製造している寝具メーカーはほとんどないため製品を細かく調整できないということです。我々はメーカーとして寝具を作っています。研究の結果次第で商品を変えられるのです。素材事体も作り方も変えてイノベーションを起こすことが可能です。

アメリカ市場はエベレスト

 10年後、当社がアメリカで目指す姿は、7割、8割の人に認知していただけるブランドになることです。我々が開発したエアファイバーを、他の寝具メーカーに素材として提供することもあるかもしれません。

 また、現在、愛知県と滋賀県にある工場に加え、10年後にはアメリカに製造拠点を設ける可能性もあります。アメリカでは薄型だけでなく厚いマットレスも扱っているので、本格的に作ろうとすると物流面からもアメリカで工場を運営することは十分にありえます。

 アメリカというのは商売するのにタフな国です。コンシューマーグッズに関しては特にそうです。人種の坩堝ですから多様な価値観があり、単一のメッセージでは伝わりません。国が広いので物流費用もかかります。しかし、逆にこの国で認められるとグローバルブランドとして認識されます。日本が富士山なら、アメリカはエベレストほど差があります。エベレストを制覇できれば、次に登るモンブランも成功するのではないか、とそう思えます。

PROFILE
高岡本州
エアウィーヴホールディングス代表取締役会長。愛知県名古屋市出身。1985年に日本高圧電気株式会社に入社し、1998年代表取締役社長(現任)。2007年株式会社ウィーヴァジャパン(現 株式会社エアウィーヴ)を設立。2014年11月エアウィーヴホールディングス代表取締役就任。

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