米国での日本食の在り方は
今後10年でさらに変わる

TOP INTERVIEW Vol.5
アメリカ市場に勝負を賭ける日系企業のトップに聞く。
西本貿易株式会社 代表取締役社長
Wismettac Asian Foods, Inc. 取締役会長 兼 社長
金井 孝行

Photo © Keiko Fukuda

金融から食の世界へ

 西本Wismettacグループに参画し、今年で7年目となります。それまでは金融業界で28年間勤務をしていました 。かねてからお付き合いのあった当グループの洲崎オーナーから、ある日突然「うちへ来ないか」というお誘いがありました。参画を決意した理由は、大きくふたつ 。ひとつめは 、 食の世界に飛びこんでみたいと思ったこと。金融の世界とは違い、目で見てわかりやすく、かつ人々が興味を持ちやすいこの業界で、これまでの知識や経験を活かしてみたいと思いました。ふたつめは、オーナーの理念に共鳴したことでした。

 食の世界は、必ずしも世の中の景気循環とは一致していないというのが私の考えです。例えば、車や不動産の売上は世の中の動向に影響を受けやすいのではないでしょうか。一方、食は消費者の生活水準そのものに大きく関わっています。 一個人として所得があがれば、単に空腹を満たすだけではなく、よりおいしく、自分の好みにあったものを楽しむようになりますよね。食のスタイルそのものを楽しむこういった層は、米国でもどんどん拡がっています。特に、食と健康の関わりを重視する動きは近年顕著です。若者を中心に健康志向がどんどん高まってきています。日本食という観点で言えば、至る所で日本の食材が使われるようになってきています。 TofuやSashimiが米系レストランのメニューに取り込まれているのは今となっては珍しいことではありません。

その国の文化と融合

 米国に限った話ではないですが、日本人が日本で食べ、おいしいと思うものだけが流行するとは限らないと思います。食イコール文化です。日本の味をただおしつけ、輸出していくだけではブームは起こりえません。その国の人が普段手にし、食べるものの中に入り込むことこそ鍵です。例えば、日本のカレーやラーメンだって、もとをたどればインドや中国から来たもの。でももう日本食としての地位を確立していますよね。その国の文化と融合して初めて、その地でおいしいと思ってもらえるものが生まれるのではないでしょうか。 具体的な取り組みとして、手間をかけず食べてもらえるReady to Cookの商品開発が挙げられます。近年のアメリカでは日本食を作る人、食べる人ともに、非日本人の割合がかなり増えてきていますから。そしてこれらの商品を、大学のカフェテリアや病院、介護施設などのメニューに取り込んでもらうための提案を積極的に行っています。

商品開発力と提案力が強み

 その地域ならではの食事情を肌で感じ、理解し、商品を開発していく力、そしてそれを提案していく力こそ我々の強みだと思っています。近年ではプライベートブランドの開発にも取り組んでいます。地域地域にあったものを提供できるという点で、最大公約数で「いいもの」と判断され、商品化される大手メーカーのナショナルブランドとの共存をも可能とするような、よりローカル志向の商品です。過去10年で、米国での日本食の在り方は大きく変わりました。もう箸の使い方の説明は必要ないですし、皆がなんとなく日本食レストランへ行くようになりました。今後10年で、それはもっと変わっていくはずです。また、ビジネス自体の在り方、仕事の質も大きく変わっていくでしょうから社員の教育にも力を入れています。弊社は創業以来105年間北米のビジネスに特化してきました。これからは北米のビジネスをのばしつつ、全体としてはその比率を下げ、ヨーロッパやオセアニア、東南アジアにも力点を置いていくことがグループの目標です。

PROFILE
1959年埼玉県出身。1982年に早稲田大学商学部を卒業後銀行に入行。国際営業企画部、業務統括部、金融法人部を経て業務執行役員就任。2010年10月に西本グループに転職、現職就任。

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