教育 - 大学の学生採用制度と大学教育のあり方(後編)

文/在米日本人フォーラム(Text by Japanese Forum USA)

アメリカの大学の学生採用は、日本の企業の社員採用と同じコンセプト?

前回お伝えしたアメリカの学生の採用制度が、一回の試験結果が全てに近い日本の仕組みとは大きく異なることをご理解頂けたと思います。

4.アメリカの学生採用制度と考え方

さらに大学側の採用の考え方が大きく異なります。大学の経営が一般の会社経営のコンセプトと同じだと述べましたが、学生の採用も一般企業の社員採用にほぼ近いコンセプトで行われています。

私の子供たちの大学受験のために、私たちはアメリカの東から西まで合計で21校を訪問(キャンパスツアー)しました。その経験を通じて痛感させられたことです。
どの大学もほぼ共通に採用の判断は採用する学生がどれだけ当大学に有為であるか、そして卒業後も出身校へ貢献し得るか、ということを基本方針にしていると明言したのです。

まさに一般社会で行われている企業の社員採用が有為の人材の確保という基本方針と全く同じで、大学としては、その基本方針として一遍の試験結果をもって有為の人材かどうかを判断することは不可能としているのです。

卑近な話しですが、私の息子がアメリカの大学の総合評価で上位に入るワシントン大学(セントルイス在)に入学できたのですが、いまだにそのことが不思議に思います。

私のアメリカ駐在のために、息子は高校一年生で訪米、いきなり全て英語の学業に変わり、訪米後は本人だけで無く家族全員による総力戦の数年でした。たった2年半後に大学受験を迎えたのですが、当然最終の学業成績は、3.5そこそこ、ACTも32止まりでした。

本来ならワシントン大学を受験する学生のレベルは、学業成績もACT共にほぼ満点が普通でしたから、そんな息子が採用されたのは、息子の提出したエッセーに興味を持たれたからでした。最終的にAdmission Departmentのトップによる直接面談となり、その面談の最後にそのトップの方は女性でしたが「私の権限で採用します。」と、その場で採用決定の言質をいただきました。

では、なぜ息子が採用されたかですが、息子の高校時代の学業成績の伸び方(確かに英語のハンデのため最初のゼロ発進から3年後には3.5まで改善)を見て、大学でもその延長としての伸びが期待できると見られたこと(実際には入学後その期待を裏切るのですが)、そしてエッセー及び面談で語った息子のやりたいこと(夢)に大きな期待を持って頂いたからだと思います。

しかし、息子は採用されたものの、やはりワシントン大学のレベルは余りにも高く、入学してから必要とされるクレジットを獲得するのに四苦八苦し、結局、人よりも多くの年数をかけてやっとのことで卒業しました。この息子の大学への採用方法がアメリカでの制度を端的に物語っていると言えます。

もう一つの経験を紹介しましょう。やはりキャンパスツアーで、息子を連れてペンシルバニア州立大学(PSU)を訪問し、たまたま工学部の学部長に面接して頂けました。

息子は大学に入ったらこういうことをしたいと熱く夢を語ったところ、その学部長から、「君のやりたいことを実現するには、私の大学よりもテキサス工科大学(TTU)を勧めます。」というアドバイスがありました。

自分の大学はさておき、他の大学を勧める助言にはいささか驚きました。アメリカの大学は、それぞれが特色を持つことに、そして特定の強い分野(学部や研究)を持とうと努力しています。

一般的に大学のランキングは総合点で評価されがちですが、アメリカには私たちが知らないような大学でも、ある研究分野だけはトップにランクされるという大学が存在します。PSUの学部長も息子が希望する分野はTTUの方が勝ると考えての助言だったのです。

5.アメリカの大学は入り易く出難し

アメリカでは大学の卒業資格を有するもの対しては、いかなる大学であっても相応の敬意が払われます。それは、一般的に入学の間口が広いのに比して、卒業の難度が非常に高いからです。

現在アメリカの大学全体の卒業率は、57.2%(2015年の統計)、それ程に卒業率が低いのです。因みに日本の大学の卒業率は93%で、これは大学に入りさえすれば、あとは心太(ところてん)式にほぼ卒業できるという数字と言えます。

アメリカの大学を、キャンパスツアーで訪問すると、卒業率の高い大学ほど誇りをもってその数字を提示してくれます。ボストンにある一流校では大体70%以上で、最も良い所では75%位です。

これらの数字は、アメリカでいかなる大学でも(レベルの高低に関係なく)、学生は大学に入れば学ばねば卒業できないということを示しています。

大学に入りさえすれば、さほど勉強しなくても卒業できるという日本の大学のあり方はやはり問題です。日本の大学の卒業率は世界一なのですが、学生の勉学の実態からは、その高率を誇れるものではありません。その結果として、世界において日本の大学の評価が低いのはその所以でしょう。

大学は十分に学ばねばならない最高学府として、日本の国に貢献し得る有為の人材を育成する為には、今の学生採用の制度そして入学後の教育のあり方を見直すことが必要ではないでしょうか。

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

Japanese Forum USA(JFUSA)在米日本人フォーラム

ライタープロフィール

在米日本人フォーラム=JAPANESE FORUM USA(JFUSA)は長年、米国で企業経営に携わり、現地社会に融和し生活して来たアメリカ在住の日本人有志によって発足。豊富な滞米経験を活かし日本の良き将来のための提案や情報の提供を目的としています。

この著者への感想・コメントはこちらから

Name / お名前*

Email*

Comment / 本文

この著者の最新の記事

関連記事

ページ上部へ戻る