第109回 迷い犬

文/寺口麻穂(Text by Maho Teraguchi)

飼い主のもとに帰らせて……

ハリケーン、地震、山火事と2017年は、いつにも増して自然災害の発生が多かったように思います。世界のどこかで大災害があるといつも考えさせられるのが、混乱の中でもし愛犬とはぐれてしまったら……ということです。今回は、「迷い犬」と題し、万が一愛犬がいなくなった時、また、道端で路頭に迷う犬を見かけた時のために気をつけるべき大事なポイントのお話です。

愛犬がいない……

万が一愛犬が行方不明になってしまったことを想定して、以下の準備をしておくことをお勧めします。①マイクロチップを埋め込む:マイクロチップとは小さなガラスのシリンダーに入った電子チップで、そのチップは、注射器のようなものでペットの体に埋め込めます。チップには特定の数字が設定されていて、スキャナーを通すとその数字が読み取れます。チップ販売元に飼い主のインフォメーションを登録しておけば、万が一愛犬が迷子になり、保護された先でスキャンされたら、登録されたインフォをたどって飼い主に連絡が来るという仕組みです。ちなみに、愛犬ノアには、HomeAgainという会社製のマイクロチップが埋め込まれています。②首輪に名札を付ける:愛犬の名前と飼い主の連絡先を記載した名札を首輪につけておきましょう。その際には、書かれた情報が擦れて消えないような名札を選ぶこと。ただ、迷子になった際に首輪が外れてしまう可能性もあるので、マイクロチップは必ずしておくことをお勧めします。③Lost Dogの張り紙を作る:実際に愛犬がいなくなったら、パニック状態になる可能性が大です。普段からいざという時のために写真入りの張り紙を作っておきましょう。また、定期的に内容をアップデートすることを忘れずに。④近所のシェルターなどのリストを作る:保護される可能性のある周辺のシェルターや、警察署の所在地と電話番号やメールアドレスをリストにしておきましょう。また、ソーシャルメディアのLost Dogのサイトもブックマークしておくと良いでしょう。

この子はどこの子?

路頭に迷っている犬を保護したが、シェルターに連れて行くと安楽死させられてしまうのでは? と不安になり、自分の家で飼うか、新しい家を見つけてあげようとする人がいます。一見とても尊い行為に思えますが、実は、そうすることで本当の家族との再会のチャンスを妨げてしまっています。迷い犬を保護したら、まずは動物病院やシェルターなど、マイクロチップが埋め込まれているかを確認できる所に連れて行きましょう。また、近辺のシェルターの掲示板や、オンラインなどで、すでに飼い主がLost Dogとして探していないかも確認すること。自分の犬にしたり、新しい家を探したりするより、どこかで夜も眠れずに愛犬を探している飼い主がいるかもしれないということに焦点を当てて、飼い主探しに力を入れるべし。昨今では、ソーシャルメディア上での情報拡散によりインフォメーションが伝達されて飼い主と愛犬が無事に再会を果たすというケースも多いです。

愛犬と飼い主が離れ離れになってしまうことは悲しいことです。最悪の事態になっても、愛犬が飼い主の手元に戻るように、日頃から出来る限りのことをしておきたいですね。

次回は、「犬とホリデーシーズン」と題し、どうしてもいつもと違うルーティーンになるホリデーシーズンに、犬の飼い主として気を付けたい点についてのお話です。お楽しみに!

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寺口麻穂 (Maho Teraguchi)

寺口麻穂 (Maho Teraguchi)

ライタープロフィール

在米29年。かつては人間の専門家を目指しサンホセ州立大学・大学院で文化人類学を専攻。2001年からキャリアを変え、子供の頃からの夢であった「犬の専門家」に転身。地元のアニマル・シェルターでアダプション・カウンセリングやトレーニングに関わると共に、個人では「Doggie Project」というビジネスを設立。「人間に100%生活を依存している犬を幸せにすることが人間の責任」を全うするため、犬の飼い主教育やトレーニング、問題行動解決サービスを提供している。現在はニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し活躍中。

プライベート/グループレッスン、講習会のお問い合わせは:www.doggieproject.com
ご意見・ご感想は:info@doggieproject.com

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