新しい90日ルールに要注意!

文/ミチコ・ノーウィッキ(Text by Michiko Grace Nowicki)

 2017年9月1日に、アメリカ国務省(DOS)が「虚偽陳述」という用語に関する新たなガイダンスを更新しました。ここでいう虚偽とは、アメリカに滞在する外国人のビザ申請時に大使館や領事館の審査官へ回答した内容や入国審査手続きの際の内容と一致しない入国後の行為を指しています。移民局の手続きマニュアル(FAM)にも新たに「入国から90日以内の一貫性のない行為」と題されたセクションが作られました。これにより、入国後90日以内に外国人が非移民ステータスに反する行為を取った場合、ビザ取得または入国するために故意に誤った情報を伝えたと推測されてしまうことになります。

この新しいガイダンスにより致命的な結果が生じる可能性があります。重大な真実を故意に 偽ってビザを取得、アメリカへ入国、もしくはその他の移民に与えられる権利を取得しようとしている、またはしようとした者は、移民国籍法により入国禁止となり、最悪のケースでは一生アメリカへ入国できなくなる可能性があります。

具体的には、例えば非移民ビザで入国してから90日以内に、不法に労働したり、就学したりする(例えばBビザで入国したのに学校へ通学する)ことは、一貫性のない行為とみなされます。また、移民の意思を禁止するビザ(Eビザ、Bビザ、Fビザ等)で入国したのにも関わらず、アメリカ市民や永住権保持者と結婚しアメリカで居住することも、非移民ステータスに反する行為とされます。

一貫性のない行為は、行為のタイミングが重要となります。というのも、FAMガイドラインは、アメリカへの入国後90日以内の外国人の行動に基づいて意図的に虚偽があるかどうか判断するからです。そして、自分の非移民ステータスに基づいて持った意図は許可されるものだった、と証明しなければなりません。例えば、もし学生ビザでアメリカへ入国して、学校へ通っている間にアメリカ市民と出会い結婚することになった場合、ビザの取得当時また入国当時は結婚する意思(移民する意思)はなかった、そして彼と結婚を決めたのも入国から90日以降のことだったと証明する必要があります。もちろん、移民局がすべての証拠を見て判断するため、ビザ申請当時からそういった意図を持ち故意に真実を隠していた、とみなされるリスクはあります。

同様に、ESTAやその他の非移民ビザで入国し、その後ステータス変更や延長などの手続きを行う場合も十分に注意する必要があります。たとえ、入国から90日以降にそのような手続きを開始したとしても、何が原因で当初の計画や意図とは異なる手続きを取る必要がでてきたのかを、明確に説明できるようにしておいたほうが良いでしょう。

※本コラムは顧客からの質問を一般的なケースに書き換えたものであり、読者への情報提供を目的としたものです。特定事例における法的アドバイスが必要な場合は、専門家に相談してください。

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ミチコ・ノーウィッキ (Michiko Nowicki)

ミチコ・ノーウィッキ (Michiko Nowicki)

ライタープロフィール

ウィリアム・S・リチャードソン・スクール・オブ・ロウ卒業。米国移民弁護士協会所属、米国弁護士協会所属、ハワイ州弁護士協会所属。日本居住歴19年。バイリンガル。

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