諦めない!
アメリカでの日本語教育

アメリカで子育てをする上での大きな課題が「子どもをいかにしてバイリンガルに育てるか」ということだ。英語の現地校に通う生活の中、どうしても日本語がおろそかになってしまうこともあれば、親が子どもとの日本語の会話を諦めてしまうこともある。アメリカ育ちの子どもに日本語をしっかりと習得させるための秘訣を、全米各地で指導に当たる日本語教育の専門家に聞いた。


 アメリカの現地校に通い、アメリカで暮らしていると、日本語を使う機会はお母さんと話す程度だというお子さんもいます。さらにアメリカで生まれ、日本で学校に通った経験がないという場合は、本人に日本語を習得する意義を実感させることが非常に難しいと思います。

 そこで、「将来的に日本でも生活する選択肢」を子どもに意識させることが有効です。それによって日本語習得の必要性はおのずと明らかになってきます。日本には英語のみを使って学び、学位が取得できる大学もあります。しかし、社会に出るとそうはいきません。買い物などの日常生活レベルの日本語はもちろん、公的な書類手続きを自分で済ませる場合にも高度な読み書きの日本語が必要になってきます。

 私の娘は2歳9カ月でアメリカに来ました。保育園から現地校で英語のみの環境でしたが、幼稚園の年長からは補習校に通い、高等部卒業まで継続させました。両親ともに日本人ですし、夏休みは毎年日本で過ごしたので、本人もいつしか「日本で生活したい」という気持ちが芽生えたようです。大学はアメリカで進学しましたが、日本に支社がある、こちらの企業に就職が決まりました。日本語の読み書きまでできるため、数カ月の研修後、日本支社勤務となります。これは、英語と日本語のバイリンガルであったからこそのチャンスだと思います。「補習校には行きたくない」と言って、親の私たちに背中を押される形で嫌々通っていた時期もありました。しかし、行ってしまえばそこに友達もいるし、楽しい時間が過ごせます。でもまた嫌になる。親に説得されて行く。その繰り返しでした。

 夏休みには、地域の人々と日本語で交流できるサマーキャンプを経験させました。そういう刺激を与えることは、もっと日本語で喋りたい、日本語を学ばなければいけない、と本人のモチベーション向上にも役立ったようです。

 また、日本語習得の意義について、親からは次のようなことも言えると思います。「日本生まれの親と同等のコミュニケーションをとるためには、日本語をしっかり身につける必要がある」ということです。つまり、日本語を幼い段階で諦めてしまうと、親との日本語でのコミュニケーションがいつまで経っても小学生のレベルから成長しないのです。年齢に合った会話を親子間で交わすためにも、日本語を諦めてほしくないということを子どもにしっかりと伝えるべきではないでしょうか。

 今は日本語や日本文化に興味を持つアメリカ人が珍しくありません。アメリカにいても、日本のバックグラウンドを持っていれば、そういう人々から日本について尋ねられることがあるでしょう。そんな時に日本語が話せるのとそうではないのとでは大きな違いが生まれます。日本語の力で機会が広がるのです。

 今、子どもが小さいとはいっても、その先の将来まで見据えていれば、親御さん自身が「子どもの将来のために日本語を諦めさせるわけにはいかないのだ」と思えるのではないでしょうか。

【回答者】丹羽 筆人

日本の大手予備校勤務を経て、1999年に米国に移住し、各地の補習校や学習塾の講師を務める。2006年に米日教育交流協議会(www.ujeec.org)を設立し、海外在住子女の日本語・日本文化体験プログラムを企画運営。さらに河合塾帰国生コース北米事務所アドバイザー、名古屋国際中学校・高等学校アドミッションオフィサー、デトロイトりんご会補習授業校講師も務める。

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