アメリカン・ライバル? アナポリスとボルチモア観光

文&写真/石井光(Text and photo by Akira Ishii)

古今東西、ライバル同士の話題は興味深いもの。アメリカ東海岸にもライバル関係が数多くある。都市ではニューヨーク対ボストン、大リーグではヤンキース対レッドソックス、政治のワシントンと金融・経済のニューヨークなど。人それぞれに思い入れや思い込みがあり、時にフレンドリーに、時に熱い会話で盛り上がる。今回はメリーランド州を代表する2都市を、ライバルにまつわる話でご紹介したい。

メリーランドの政治の中心・アナポリス

メリーランド州議事堂

全米50州の州都のうちアラスカ、ハワイ、ワシントン、マサチューセッツ、ロードアイランドの州議事堂は海に近い位置にある。メリーランド州の州議事堂は、そのどれよりも海に近く、議事堂と海がもっとも一体となっているかのように思わせる。議事堂の周りには18~19世紀の建物や石畳、往時をしのばせるB&Bなどが独特の風情を醸し出す。町並みを見るだけでも絵になり、そぞろ歩くと楽しくなる。平日はともかく、週末は州議事堂の周りは閑散とすることが多いが、アナポリスの議事堂とダウンタウンは週末でも観光客や地元民でにぎわっている。古い建物をそのまま利用したレストランやカフェが軒を連ね、ふらりと入ってみるのも一興だ。

アナポリスの町並み

町なかを歩いていると目につく白い制服の人々。そう、アナポリスには全米のエリート中のエリートが集う海軍士官学校(NAVY)がある。1845年創立、全米に9つしかない国立大学のうちの一つで、まさに文武両道を地で行く学校である。米軍の英雄であり大統領候補にもなったマッケイン上院議員、アポロ13号船長のジム・ラベル氏などもこの学校の出身だ。スポーツが盛んなNAVYは、オリンピック選手も多数輩出しており(バルセロナ五輪のドリームチームの一員である元NBAのデイビッド・ロビンソンもその一人)、レジューン・ホールという体育館にはトロフィの数々が展示されている。

毎年12月初旬、このNAVYのライバル関係が全米で大きな注目を浴びる。NAVYの永遠のライバル、ニューヨーク州ウェスト・ポイントにある陸軍士官学校(ARMY)との一戦だ(実際の試合は両者の中間あたりのフィラデルフィアで行われることが多い)。2017年は大雪の中、ARMYが14-13の接戦を制したが、過去118回対決してNAVYが60勝51敗7引き分けでリードしている。

さて、荘厳な建物が威風堂々と建ち並ぶNAVYのキャンパスでは、海軍の大聖堂(メインチャペル)やライト兄弟のB1フライトのレプリカ、レストランのあるドールグレン・ホール、今では博物館となっているプレブルホールなど、9つの場所が一般にも解放されていて、無料で見て回ることができる。歴史的建造物を外から眺めるだけでなく、中からも見たり雰囲気を肌で感じたりできるこの場所は、時間をかけて思いおもいに楽しみたい。

メインチャペルの内部で見上げると、美しいドーム天井が

海軍兵学校のドールグレンホール

歴史と芸術溢れるボルチモア

ボルチモアの町並み

自然豊かなチェサピーク湾沿いには、政治や軍の中心都市アナポリスとは対極にある都市がある。州最大の都市で経済や芸術の中心地であるボルチモアだ。作家エドガー・アラン・ポー、球聖ベーブ・ルース、公民権運動の父ともいわれるフレデリック・ダグラスなどアメリカの歴史に名を残す著名人ゆかりの地であり、港湾都市で工業も早くから発達したボルチモア。Charm City(魅力都市)と自称する一方、Most Underrated City(もっとも過少評価されている都市)ともいわれ、その魅力はアメリカでも日本でもあまり知られていないようだ。

ビジターセンター、水族館、レストランなどが集まるインナー・ハーバー地区は、ボルチモア観光の起点。その北にはビジネス街やシンフォニーホール、美術館などが位置するダウンタウンがある。南東にある1670年に入植が始まったウォーターフロントのフェルズ・ポイントは、古い建物が近年はおしゃれなレストランに変わり、人気の場所だ。ボルチモアに全世界本社を置く、スポーツアパレルのアンダーアーマーの旗艦店もここにある。インナー・ハーバーの西側にはライバルチームを迎え撃つ大リーグのオリオールズや、NFLのレイブンズのスタジアムなど、見どころが多い。

フェルズ・ポイントの町並み

その中でもボルチモア観光で外せない場所が、国の史跡であるマクヘンリー砦。アメリカ国歌の歌詞が生まれた場所だ。1776年にイギリスからの独立宣言をしたアメリカ合衆国だったが、その後イギリスとの諍いは絶えず、第二次米英戦争では、1814年にボルチモアで激突。そのさなか、ワシントンDCの弁護士フランシス・スコット・キーは捕虜にされたアメリカ兵の解放を求め、マクヘンリー砦の沖に停泊するイギリスの船に乗り込んだ。その船からイギリス軍とアメリカ軍の砲撃が行き交う場面を見て、歌詞を数分で書き上げたとされる。

アメリカ有数の歴史的な場所を見学する前に、ビジターセンターでマクヘンリー砦の歴史とアメリカ国歌の成り立ちのビデオを見ることをおすすめしたい。

マクヘンリー砦

メリーランドはグルメも魅力

メリーランド州といえば、シーフードを忘れてはいけない。チェサピーク湾で獲れるカニやオイスターなどの魚介の数々は新鮮で美味だ。カニへの愛情が溢れすぎ、みやげ物屋ではカニグッズが多数見られ、どのレストランにも名物のクラブケーキがある(ボルチモアの町でよく見かけたアンダーアーマーのロゴはUとAが重なっているのだが、ひょっとしてカニをモチーフにしたのかと思ってしまう)。

2018年2月の旅では、アナポリス随一と評判の「Chick & Ruth’s Delly」、ボルチモアのインナーハーバーにある「Phillips Seafood」、そして少し郊外にある「Nick’s Fish House」と3カ所で食べてみた。メリーランド風のクラブケーキにはおおぶりなカニの身が入り、普通のクラブケーキよりかなり大型で、日本のお好み焼きのように思える。ボルチモアでもアナポリスでも、レストランというレストランがライバルには負けないとばかりに味を競い合っている。まるで広島と大阪のお好み焼き対決のごとく、メリーランド州とデラウェア州もカニやクラブケーキにおいてライバルであるらしい。

「Chick & Ruth’s Delly」のクラブケーキ

どちらか1カ所だけよりも一緒に体験したい、メリーランド州の2つの観光都市、アナポリスとボルチモア。さて、あなたはどちらに軍配をあげるのだろうか。

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石井光 (Ishii Akira)

石井光 (Ishii Akira)

ライタープロフィール

旅行会社勤務。広島出身。在米12年。ジョージア、ウィスコンシン、ニュージャージー、テキサス、カリフォルニア、ワシントン州を経て、現在2度目のニュージャージー生活。その間アメリカの都会から地方まで40州200都市以上を訪問。あるときは真正面から、またあるときは裏側から、アメリカ各地をご紹介します。

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