NEW SOUTHを体現する都市・アトランタ

文&写真/石井光(Text and photo by Akira Ishii)

アメリカ南部にはOLD SOUTHとNEW SOUTHと呼ばれる2種類の南部が存在する。一般的に南部といえば、南北戦争以前の姿がしのばれるOLD SOUTHで、歴史ある荘厳な教会や豪邸が立ち並ぶダウンタウンと、郊外のプランテーションのイメージだ。翻ってNEW SOUTHは、北部に追いつけ追い越せと発展を目指してきた地域である。今回はNEW SOUTHの代表として新しく変わり続けるアトランタをご紹介したい。

南北戦争中、軍需品供給の中心地だったアトランタは、南部の鉄道交通の要衝だった。南北戦争後には南部の主要産業である綿花産業の中心地となり、さらに1868年にはジョージア州の5番目の州都となったことで政治の中心にもなり、その運命が大きく変わった。その後も発展を続け、今ではコカ・コーラ、UPS、CNN、ホームデポなど、米国を代表するいくつもの大手企業が本社を構えている。

1996年にはオリンピックも開催され、ハーツフィールド空港は2017年時点で年に1億800万人が利用する、世界でもっとも忙しい空港となっている。変貌を遂げ続けるNEW SOUTHの旗手は、南部やアメリカというくくりではなく、今や世界経済や国際報道においても重要な都市である。

2005年に世界最大の水族館「ジョージア水族館」がダウンタウンにできてからは、観光アトラクションも年々増え、世界的な観光都市としてもその地位を固めつつある。

ジョージア水族館

2005年11月21日、810万ガロンの巨大タンクを持つ世界最大の水族館としてオープン。年間200万人以上もの人たちが来場する、アトランタで一番人気のスポットだ。館内には500種類以上、12万匹以上が展示されている。想像を超える巨大な水槽や、水槽の下の穴をくぐってペンギンのすぐ近くまで行くことができるペンギン・コーナーなど、数々の工夫があるのも特徴。

この水族館で絶対に見逃せないのが、Dolphin Talesというイルカのショー。巨大な屋内プールとステージは照明と音響で演出され、イルカたちの華麗な泳ぎやジャンプは迫力満点。ときにユーモラスな動きを加えて、まるでイルカ版「シルク・ドゥ・ソレイユ」のようなエンターテインメントが繰り広げられる。

ワールド・オブ・コカコーラ

世界中で愛飲されているコカ・コーラは、1886年にアトランタで誕生。2016年には130周年を迎えた。この場所では、ポスターやTVコマーシャル、なじみのあるポスターや見たこともないようなグッズ、秘密のレシピをたどる4-Dシアターなど、コカ・コーラの過去や現在がさまざまな趣向で楽しめる。

入館したら一人一缶コカコーラがもらえ、2階の試飲部屋「Taste It!」では、世界中のコカ・コーラ会社のドリンクを飲み比べできる。アメリカ、ヨーロッパ、アジアなどのコーナーに個性豊かなドリンクがなんと50種類以上。Tシャツやグラスなど、ショップの品揃えも非常に充実しているので、おみやげ探しにもぴったりな場所だ。

CNNスタジオツアー

世界に名だたる24時間体勢のニュース専門の放送局CNN。こちらは1980年にアトランタに開局。CNN本社では1時間ほどのガイド付きスタジオツアー(英語)が随時行われていて、その場で申し込むことができる。「なるほど」「へえー」「うそっ」などあちこちで感嘆の声が聞こえる中、ニュースがどのようにできるのかを知ることができる。人気ツアーなので待ち時間も予想されるが、チケット売り場の周辺にはフードコートやショップ、さらに外に出るとオリンピック記念公園なども。時間指定のチケットを入手した後は、いろいろな形で待ち時間を過ごそう。

カレッジフットボールの殿堂

フットボールが大好きなアトランタの町では毎年、南部のカレッジフットボールのナンバーワンを決めるピーチボウル(現在はChick-Fil-A Bowl)が開催される。2014年にはCNNの本社の並びにカレッジフットボールの殿堂ができ、全米のフットボール好きの注目を集めている。日本人にとって甲子園に地元の高校が出ると嬉しいように、アメリカ人にとっては、地元のフットボールチームは誇りであるようだ。

この施設は展示の内容が充実しているだけでなく、その展示方法も斬新で、テクノロジーを駆使し、新しい博物館のあり方を見せてくれる。受付時に好きな大学名を聞かれ、その情報を首から下げるタイプのチケットに読みこませる。展示物に近づくと自動的に自分の名前が表示されたり、その大学にまつわるデータがモニターに浮かび上がったりと、驚きが溢れる場所だ。

アトランタ動物園

日本では上野動物園のパンダが注目を集めているが、アトランタにもパンダが暮らす動物園がある。ダウンタウンから南へ車で10分ほどの、緑豊かな市民憩いの公園「グラントパーク」だ。もともとはアメリカ最大級のゴリラの飼育施設があることで知られていたが、2016年9月3日に父ヤンヤンと母ルンルンの間にジャイアントパンダの双子の女の子が誕生。

双子の名前は、ヤールン(Ya Lun)とシールン(Xi Lun)。中国語で「ヤー」は優雅を、「シー」は幸福を意味するそうだ。姉妹でじゃれ合ったりママに甘えたりする姿を間近で好きなだけ見られるのは、動物好きにはたまらないはず。午前は比較的空いていることが多いので、ゆっくりと見て回ることができる。

動物園以外はすべてダウンタウンの歩いて行ける範囲にあり、急ぎ足なら1日で回ることも可能だ。しかも、動物園を含め、CITY PASSという割引のセット券がすべてをカバーしており、お得に効率的に回ることができる。しかし、アトランタにはまだまだ楽しみがたくさんあるので、1日ではもったいない。できれば、数日滞在してより多くのアトラクションを見て回りたい。

ミッドタウンには『風と共に去りぬ』が書かれた場所「ザ・ダンプ」。郊外には巨岩に歴史上の人物が彫られたストーン・マウンテン。町の東には、キング牧師の生家や幼少時代を過ごした歴史地区、北側にはカーター大統領のライブラリーなど。またショッピングに持ってこいのバックヘッド地区には、1926年に創立された「アトランタ歴史センター」がある。ここにはアトランタや南部の歴史にまつわる数々の展示や歴史的建造物スワンハウスなどがある。以前はグラントパーク内にあった南北戦争の巨大ジオラマ「サイクロラマ」も、2018年秋にこのセンターの目玉としてオープンし、これまで以上の観光地となる予定だ。

スポーツにおいても、スピード感たっぷりに変化し続けるアトランタ。1996年のオリンピックのメイン競技場だった場所(ダウンタウンより南へ3キロ)は、オリンピックの翌年に大リーグのアトランタ・ブレーブスの本拠地、ターナーフィルドとなり、2017年からはジョージア州立大学のフットボール場へと変貌した。

ミッドタウンにはバスケットボールやフットボールの強豪であるジョージア工科大学もある。アトランタ郊外には2017年にアトランタ・ブレーブスの新球場ができ、強豪復活に向けて動き出した。NFLのアトランタ・ファルコンズは長らくジョージア・ドームでプレイしてきたが、2017年にはメルセデスベンツスタジアムがオープン。風変わりな設計の建物は遠くからでも目を引き、何とかして足を踏み入れてみたいと思わせる。

アトランタでは食事も楽しみだ。ダウンタウンの観光地区のダイナーで、南部風フライドチキンにワッフル、グリッツ(ひき割りトウモロコシ)、コラードグリーンなど、地元の人に愛される親しみやすく素朴な南部の伝統料理をいただくもよし。ミッドタウンにあるビジネス街のおしゃれなレストランで、基本は押さえつつも新しくアレンジされたメニューを楽しむもよし。また、ジョージア工科大近くの超有名ホットドッグスタンド「バーシティ」も忘れずに押さえておきたい。

日本からの直行便もあり、全米各地からも行きやすいアトランタ。気候も比較的温暖、アトラクションの多くは屋内と、どの季節でも観光が楽しめる。行ったことがある人もない人も、NEW SOUTHで新しいアメリカを体験してみてはどうだろうか。

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石井光 (Ishii Akira)

石井光 (Ishii Akira)

ライタープロフィール

旅行会社勤務。広島出身。在米12年。ジョージア、ウィスコンシン、ニュージャージー、テキサス、カリフォルニア、ワシントン州を経て、現在2度目のニュージャージー生活。その間アメリカの都会から地方まで40州200都市以上を訪問。あるときは真正面から、またあるときは裏側から、アメリカ各地をご紹介します。

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