第三機関(Third Party)を就労先とするH-1B申請に関する新指針(その2)

文/デビッド・シンデル(Text by David Sindell)

前回、 第三機関(Third Party)を就労先とするH-1B申請に関する、米国移民局(USCIS)による新しい指針の概要について紹介しました(前回記事へ)。この新しい指針はすでに有効なものとして扱われており、H-1B就労者の第三機関会社での雇用を計画している請願者(H-1Bビザのスポンサー会社)は、その第三機関会社での全雇用期間に対する雇用契約書、特定の業務スケジュール、そして関連する末端クライアントからの詳細な業務情報に関わる資料の提出が義務化されたという内容のものとなっています。今回は、その内容をさらに掘り下げて紹介します。

業務スケジュール(タイムライン)について

H-1B申請上、第三機関会社における業務スケジュールの提出は長年必要とされていた重要な項目でもありました。ただ、今回の新指針により、単なる業務予定ではなく、業務予定をより明確に示すべく正確な日付、関連する業者やクライアント等の名前、住所、電話番号、就労場所など、より詳細でより正確な内容のものが必要となってきています。つまり、H-1B申請の段階で、ある程度の内容が時系列上、第三機関会社との合意のもとで詳細に決定されている必要があることを意味します。

H-1B延長申請への影響について

この新しい指針はH-1B延長申請において大きな影響をもたらします。その変化に対し、ビザスポンサー会社が延長申請にて求められる提出書類(例)は以下の通りです。

1)延長申請の基となる最初のH-1B申請が第三機関会社での雇用であった場合、その延長申請にともない、元の全期間における雇用のすべてが、第三機関におけるH-1B雇用条件を満たす内容となっていることを示す証拠資料
2)最初のH-1B申請書に記載されていた通りの給料が支払われたことを示す書類
3)職務内容がH-1Bに求められる条件を満たす専門的なものであり、これまで、さらには延長後もその雇用が継続することを証明する資料
4)ビザスポンサー会社が、H-1B受益者に対する給与支払いや雇用上の管理など、ビザ受益者との間に明確な労使関係(Employer-Employee relationship)が存在していることを証明する資料

なお、この指針は過去に承諾された関連する指針(就労場所の変更にともなう指針など)と矛盾しない、一貫したものとなっています。

最後に繰り返しますが、この新しい指針により、もし申請上、H-1B全雇用期間のH-1B専門職としての職務内容や労使関係、さらには第三機関会社(実際の就労先)における雇用の実態等を証明できない場合は、移民局審査官はその裁量によりH-1Bの認証期間を限定的に短くしたり、場合によっては申請そのものを却下したりと、その審査権限を強く行使できることを示唆しています。

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デビッド・シンデル (David Sindell)

デビッド・シンデル (David Sindell)

ライタープロフィール

NY州およびNJ州弁護士資格。外国法事務弁護士(外弁)として東京第2弁護士会所属。アメリカ移民法弁護士協会所属。日本語、フランス語に堪能。

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