Tippsy, Inc
アメリカのビジネスは、今

今、アメリカのビジネスシーンはどうなっているのだろう?
困難をどう乗り越えたのか。成功の鍵はどこにあるのか。
キーパーソンに、アメリカでのビジネスのヒントを聞いた。

2018年11月にローンチする日本酒の新たなEコマースを運営する、Tippsy, IncのCEO伊藤元気さんに話を聞いた。

ビジネスの内容

Tippsyでは今後、2つのビジネスを展開していきます。一つは、11月にローンチする日本酒のEコマース事業。インポーターやディストリビューターから仕入れた日本酒を消費者へ販売する、オンライン小売事業です。

もう一つは、サブスクリプション型ビジネスです。月々49ドル支払うと、毎月おすすめの日本酒3本が自宅に届く、定期購入型のサービスとなります。サブスクリプションで届ける3本の日本酒は毎月変わり、すべてテイストの違うものをお届けします。また、それぞれの商品に紹介文や味の特徴、アルコール度数、おすすめの飲用温度などを記載したカードが添えられているため、初心者でも分かりやすく、気軽に楽しめるようなサービスです。

毎月3本の日本酒と商品カードが届く

会社立ち上げの経緯

日系の食品商社に2009年に入社し、ハワイ、ロサンゼルス、ニューヨーク勤務を経ていろいろな業務を経験しました。ここ数年ロサンゼルスで落ち着き、キャリアアップのために仕事をしながら南カリフォルニア大学(USC)のビジネススクールに通い始めました。2年半通って、MBAを取得したのが今年です。

仕事でもともと日本食のマーケティングには携わっていましたが、日本酒の可能性に特に着目するようになったのは、ビジネススクールの授業がきっかけです。アントレプレナーシップの授業でベンチャーキャピタルにビジネスアイデアをピッチする機会がありました。その際に、日本酒ってもっと売れるんじゃないかな、オンラインで誰も売っていないな、なんでだろう、とワインやアルコールビジネスについていろいろ調べるようになったんです。

現在アメリカは世界で2番目の日本酒マーケットで、日本国内市場の10分の1程度が消費されているのですが、アメリカの巨大なワイン市場と比べるとたった100分の1のサイズしかないんですね。日本酒にはものによって甘い香りがあったりスパイシーだったり、温度帯によっても味が変わったりと、いろいろな表情が生まれる。でも、その奥深さを分かっている消費者がアメリカにはほとんどいないんです。

需要調査のため800人くらいにアンケートを取った際に、8割ぐらいの人たちがSAKEは好きだがストアで買ったことがない、そもそもどこで売っているのか知らないという回答でした。寿司などの日本食ブームでSAKEの認知度や興味は全米各地で高いのですが、実際には日本酒は多くの人にとって、たまにお店で雰囲気を味わうためのものという立ち位置です。

そもそもアメリカのアルコール物流は複雑で、ほとんどのブランドが中間流通業者にマーケティングを任せています。そのためブランド個々の歴史やストーリー、造り手のスキルや情熱などが消費者に届かない。ただでさえ外国語ラベルで、味の差も繊細な日本酒のブランドごとのおもしろさも伝わらない。分かりにくいから、ただお店でHot Sakeにして雰囲気を楽しむだけの役割に終わっている。

もしディレクトコンシューマーで発信できるような仕組みがあれば、情報と物流のギャップを埋めてもっと消費者に近づけるのではないかと思うようになったんです。そのクラスでの発表が在学していた1年くらい前で、その頃からビジネス立ち上げを考え始めました。本格的に動き出したのは3カ月ほど前からです。

事業立ち上げのポイント

事業立ち上げというと全部自分でやらなきゃ、と思ってしまいますが、全部自分でやる必要はないんだと気づきました。チームを作れば事業立ち上げはできるんですね。

ビジネススクールではFounderの役割をSell(営業)、Hire(採用)、Raise(資金調達)だと教え込まれました。ビジョンや可能性を信じてもらい、優秀な映像クリエーターに手伝ってもらったり、自分より日本酒に詳しい方にコンテンツを書いてもらったり、重要なブランディングは信頼できるパートナーにお願いしたり。ビジネススクールやこれまでのアメリカ生活で得たネットワークで、いろいろな人に手助けしてもらっています。自分が上手にプロジェクトの間に入れば、仕事を細分化してプロにお願いすることで事業は成り立つと分かってきました。

今後の課題

まず、11月のローンチでオンラインストアをオープンします。同時にサブスクリプションの告知と先行予約を開始し、クラブメンバーの募集を行います。一定数のクラブメンバーを集めてからサブスクリプションはスタートさせる予定です。

Tipssyサイトのトップページ

 

ターゲットセグメントは2つで、日本酒をすでにスーパーで買ったことがある人と、レストランでしか飲んだことのない、日本酒は好きだけどよく分からないという人です。興味はあるけどあまり詳しく知らないという人たちに向けて、初めて自分で買えるような体制を作り、潜在需要を喚起するのがサブスクリプションのビジネスモデルですね。

今後1年のショートタームの目標は、Tippsyを日本酒で1番大きな小売業にすること。テストマーケティングの後は資金調達をして一気に全米に広げる予定です。「SAKEといえばTippsy」と思ってもらえるようなブランドにしたいです。

5〜10年くらいの長い目で見ると、日本酒をワインに次ぐ醸造酒のカテゴリーにするのが目標です。ビール以外の醸造酒のランキングでトップにいるのはワインですよね。でもそれに続くもので、フードペアリングができる文化的で奥深い飲み物のカテゴリーが今はない。日本酒はワインと同じくらいに奥深い魅力があるけど、消費規模でいうとずっと引き離されているんですよね。

日本酒の市場規模を5倍、10倍というように広げて、ワインに少しでも近づけていきたいと思っています。世界に売れる日本のコンテンツとして市場拡大をお手伝いできれば、日本人としても嬉しいですよね。ワインやビールじゃなくて、日本酒を当たり前のように料理とペアリングするような時代が来ればいいなと。

アメリカでビジネスしていく人へのメッセージ

アメリカは移民の国で、外国人は特に起業する傾向が高いといわれています。就職するうえで言語やビザのハンディキャップがあることや外国人としての視点が、アイデアや起業家精神を生むと思うんですね。海外での起業は難しいけれど、それはたぶん日本でも同じ。ビザや言語の壁はあるかもしれないけれど、それは起業するうえで生まれるさまざまな問題の一部だと思います。アメリカには失敗しても起業したことを評価する文化があるので、おもしろい仕事を自分で作りたいという人にはとても良い環境だと思います。

Tippsy, Inc

■オンラインストア:https://tippsysake.com/

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

この著者の最新の記事

関連記事

デジタル版を読む

フロントライン最新号
ページ上部へ戻る