海外教育Navi 第15回
〜親として、現地校の行事への関わり方〜〈前編〉

記事提供:『月刊 海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)

海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団に所属するプロの相談員たちが一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。

Q.私は英語ができません。現地校の行事やボランティアにはどのようにかかわっていけばよいのでしょう。

親は子どもを現地の学校で学ばせる決断をしたときから、子どもと共に歩む姿勢が求められます。「自分も現地校とかかわろう」という親の心は子どもにも伝わり、よい影響を与えることは間違いありません。ぜひ学校とのかかわりを深め、自分ができることから始めてください。

アメリカの学校教育とは?

たとえばアメリカの学校教育は日本と大きく異なっています。運営方法やカリキュラム、そして教師の指導方法等々、学校の仕組みを理解することから、海外で現地校を選択した家族の第一歩が始まります。

そうしたなかで気づかされるのが、保護者に求められる学校でのボランティアの多さでしょう。その存在なしには運営が成り立たないシステムになっていると言っても過言ではなく、学校行事、PTA主催イベント、図書室の管理、そしてクラス内での雑用まで、さまざまな分野で保護者の力が生かされています。

また親参加型の学校では1年間の活動時間が決められていて、父親の姿も多く見られ、教室やグラウンドでさまざまな活動が行われています。保護者と共によい学校づくりを目指す姿勢がうかがえます。

おもな学校の行事とPTA主催の行事の例

アメリカの公立学校における行事や、PTAが行うイベントを紹介しましょう。どんな行事やイベントがあるのでしょうか。

Book Fair
PTA主催で本、雑誌、ポスターなどの販売を行い、その収益金をPTAの運営資金とする。Field Trip
遠足や社会見学のこと。参加する場合は学級担任より配布されるPermission Slip (承諾書)に保護者が署名して提出する。

Fund -raiser
PTAの資金集めのために行われるカタログ販売。

Holiday Store
クリスマス用品の販売。

Bake Sale
クッキーやケーキなどの販売。

Halloween Parade
10月31日のハロウィンに、子どもたちや教師が仮装して、校内でパレードを行う。

Jog-a-Thon (Fun Run)
Fund-raiser の一環で、子どもたちがグラウンドを1周走ることに対して保護者、親戚、近所の人に金額を決めてもらい、学校がその生徒は何周走ったかを証明。そのお金を集める。

Open House
学年の終わりに、1年間で子どもたちがつくった作品、学習したものなどをクラス内に展示し公開する日。誰でも見学できる。また次の学年の授業内容が把握できるので見ておくと参考になる。

Paper Drive
リサイクル運動のことで、古新聞、古雑誌、電話帳、アルミ缶の回収を行う。収益金はPTAの運営資金となる。

School Picture Day
子どもがひとりずつ写真を撮ってもらう日。写真はサイズや枚数を注文することができる。

Talent Show
自分の特技をみんなの前で発表する。出演する子どもはオーディションによって選ばれる。

Teachers,Luncheon
先生への感謝の気持ちを表す昼食会のことで、保護者が料理を持ち寄って先生をもてなす。

学校の行事にはかならず参加を!

アメリカの学校には「入学式」がありません。中学と高校で「卒業式」は行われますが、「厳粛な始まり」を感じる入学式がないのは寂しいですね。しかし高校の卒業式はたいへん派手で当日の夜には生徒だけの「Prom」と呼ばれる公式のダンスパーティーが開催されます。

各クラブでは、保護者も参加してのパーティーが開催され、6月は多忙な時期でもあります。
キンダーガーテンや小学校では教師と保護者の個人面談(Conference)が学期ごとに行われます。子どもの学校の成績や州の学力テストの結果、授業態度などが詳細に報告されるのでかならず出席しましょう。ことばの点で不安がある場合は両親がそろって出席したり、バイリンガルの知人などに同行してもらったりすることで解決できます。

1年に1度、学校でOpen Houseが開かれますが、かならず家族で出かけましょう。各教室に、子どもの1年間の作品や学習した成果を展示し公開する日です。お子さんの1年間の成長を見ることができますし、次の学年ではどのような授業が行われるのかを把握できるよい機会となります。教師の指導方法や授業内容も、参考のために調べておくことが大切です。

「第16回 〜親として、現地校の行事への関わり方〜〈後編〉」を読む。

今回の相談員
JERC日米教育サポートセンター代表兼教育アドバイザー
岩永留美

1987年に夫のアメリカ赴任に伴い、当時小学5年生と2年生の娘を帯同して渡米。90〜91年、ロサンゼルス補習授業校あさひ学園父母の会会長を務める。95年にJERC日米教育サポートセンター理事兼教育アドバイザーとなり、日本人家庭からの教育相談を受けているほか、教育オリエンテーション等を開催している。海外に住む日本人の子どもの日本語/国語教育にも従事。
http://www.jerc.org

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公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

公益財団法人 海外子女教育振興財団 (Japan Overseas Educational Services)

ライタープロフィール

昭和46年(1971)1月、外務省・文部省(現・文部科学省)共管の財団法人として、海外子女教育振興財団(JOES)が設立。日本の経済活動の国際化にともない重要な課題となっている、日本人駐在員が帯同する子どもたちの教育サポートへの取り組みを始める。平成23年(2011)4月には内閣府の認定を受け、公益財団法人へと移行。新たな一歩を踏み出した。現在、海外に在住している義務教育年齢の子どもたちは約8万4000人。JOESは、海外進出企業・団体・帰国子女受入校の互助組織、すなわち良きパートナーとして、持てる機能を十分に発揮し、その使命を果たしてきた。

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