アメリカの歴史を体感する観光都市
サウスカロライナ州チャールストン

文&写真/石井光(Text and photo by Akira Ishii)

チャールストン市内の町並み

アメリカの旅行雑誌Travel + Leisureの「世界でもっとも行きたい場所」第2位、「北米でもっとも行きたい都市」第1位に選ばれたサウスカロライナ州のチャールストン。その魅力は、いく通りもの年代からなるアメリカの歴史を体感できることにあると思う。また全米でもっともマナーが良い都市に選ばれており、そのホスピタリティにも定評がある。世界が注目する米南部の歴史観光都市チャールストンをご紹介しよう。

17世紀の面影残る
フレンチクォーター地区

ウォーターフロントパーク

今ではアトランタ、ニューヨーク、遠くはシアトルなど、20以上の都市から人々が空路でやって来るチャールストンだが、始まりは海路だった。1670年、アシュレー川西岸にイギリス人によって建設された町は、イングランド王チャールズ2世の名にちなみ、チャールズタウン(Charlestown)と名付けられた。

アシュリー川とクーパー川に挟まれた半島部分から発展していったこの港町は、アメリカ東海岸がまだイギリスの植民地だった1690年時点では、北米で5番目の都市規模だったという。

チャールストンでまず訪れたいのは、クーパー川に面したウォーターフロントパーク。市民憩いの風光明媚な公園であるとともに、チャールストンのランドマークのひとつ「パイナップル・ファウンテン」がある。

かつてチャールストンの人が長旅のおみやげに持ち帰ったというパイナップルは、おもてなしの心の象徴。この噴水は、この町を訪れてくれてありがとう、という歓迎の気持ちを表現しているとのことだ。

この公園のあるフレンチクォーター地区は、17世紀を体感できる場所である。Chalmers Streetにあるピンクの壁の酒場(Pink House)や、Cumberland Streetの火薬庫(Powder Magazine)は、17世紀から残る建物である。

18世紀を体感できるのが、Broad StreetとMeeting Streetが交差する「法の四つ角」。将来、町が成長した時のために「正確で規則正しい町のモデル」、いわゆるグランドモデルが17世紀末に計画され、18世紀に入ってから裁判所や役所、教会がこの四つ角に建てられた。

市、州、連邦政府の法律および神の法律が一堂に会する場所というわけだ。歴史を感じさせる建物の数々から、チャールストンが18世紀半ば、北米でもっとも活気溢れる貿易・文化の中心地であったことが垣間見られる。

プランテーションの歴史を感じる

プランテーション

18世紀後半の独立戦争後、チャールストンはほかの南部の都市同様にプランテーションの綿花生産で新たな経済的発展を遂げ、1820年に人口は2万3000人に達した。その過半数を占めていたのが、黒人である。

チャールストンがほかの南部諸都市と異なるのは、奴隷の貿易港であったこと。その負の歴史遺産ともいうべき場所が、Chalmers Streetの旧奴隷市場博物館である。かつてここは、トーマス・ライアン市会議員が造った奴隷市場(Ryan’s Mart)だった。プランテーション農家など、裕福な白人が黒人労働者を求めて訪れる、いわゆる奴隷ショールーム。

Ryan’s Mart

黒人たちは競売にかけられるまでは家族一緒にいることができたが、その後の運命は買い手である白人の手に委ねられることになった。変えることのできない歴史が重い衝撃となって襲い掛かってくるような場所である。

チャールストンは徒歩で快適に観光できる町だが、馬車に乗って町を一周するキャリッジツアーも名物である。ガイドさんは馬を器用に操りながら、観光名所の説明をしてくれる。興味深いエピソードを知ることができ、非常におもしろいツアーだが、1時間以上も英語の説明が続くので、チャールストンの歴史を予習しておくとより楽しめるだろう。

キャリッジツアー以外にも、往時をしのぶチャールストン郊外へのプランテーションツアー、ゴーストツアーやフードツアーなど、テーマ別のツアーが数多くあるので、自分の興味に合わせて選ぼう。

キャリッジツアーで町なかをめぐる

南北戦争の爪痕をたどって

サムター要塞

歴史尽くしのチャールストンで外せない場所が、サムター要塞だ。チャールストンの沖合いにぽっかりと浮かぶ要塞は、南北戦争の火蓋が切って落とされたことで知られる。

奴隷制の拡大に反対していたリンカーン、片や奴隷制存続を主張して、真っ先に合衆国からの脱退を宣言したサウスカロライナ州とそれに続いた南部諸州。1861年3月、サムター要塞の司令官アンダーソン少佐は合衆国(いわゆる北軍)に忠誠を近い、南部連合軍(いわゆる南軍)が要塞を撤退するよう要求したのを拒否したため、4月12日に南軍が砲撃を開始。この地で南北戦争が始まったのだ。

重要な史跡であるサムター要塞に行くには、チャールストンのマリーナにあるビジターセンターからツアーに参加する必要がある。マリーナからサムター要塞まではフェリーで約25分。チャールストンと隣町を結ぶ美しい橋Arthur Ravenel Bridgeなどを眺めつつフェリーの旅をのんびり満喫しているうちに、要塞に到着する。

パークレンジャーによるツアーは1日3回出発。朝一番の9時30分のツアーに参加すると、アメリカ国旗を掲揚する儀式を体験できる。アメリカ人観光客らが国旗を大切に扱い、敬意をこめて掲揚するさまは非常に興味深い。この史跡以外にも、チャールストンの市内にはギブス美術館といった博物館や、らせん階段が美しいナサニエル・ラッセル邸などのガイドツアーもある。

歴史に加え、芸術、建築など文化的な部分も幅広く楽しみたい。

地産地消のグルメの宝庫
ロウカントリー

オイスターはぜひ食べて欲しい

サウスカロライナ州湾岸に広がる低地「ロウカントリー」は、新鮮な食材の宝庫。牡蠣、蟹、海老といった海の幸、カラードグリーンやオクラなどの野菜、米、さつまいも、ピーナッツ、豆類など、豊富な食材がシェフの創造力をかきたてるらしく、チャールストンには魅力的なレストランも多い。

ロウカントリーの恵みのひとつである牡蠣を楽しむなら、King Street沿いの「ダーリング・オイスターバー(The Darling Oyster Bar)」がおすすめである。プリップリでフレッシュな生牡蠣を目の前で開けてプレートに並べていく光景には、なんともそそられる。ほかにも焼き牡蠣、クラムチャウダー、スモークサーモンなど、魚介類を中心に豊富なメニューが楽しめる。

料理と一緒にワインもいいが、チャールストンのクラフトビールPalmetto Brewing Companyはいかがだろうか。地元のビールは地元食材の料理をきっと引き立ててくれるはずだ。

地ビールを飲み比べてみよう

世界的な観光地には目立つランドマークがあり、そこに行くと視覚から即座に届く感動がある。その一方で、町歩きを通じ、いくつもの時代を体感して、何かが「じわーっ」と心に染み入る場所もある。

自分の足や馬車に揺られて感じた石畳。辻々で、そしてレストランで香る潮。Ryan’s Martやサムター要塞で思いをめぐらせたアメリカの歴史や今。チャールストンへの旅は、視覚を超えた何かを残してくれるだろう。

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石井光 (Ishii Akira)

石井光 (Ishii Akira)

ライタープロフィール

旅行会社勤務。広島出身。在米12年。ジョージア、ウィスコンシン、ニュージャージー、テキサス、カリフォルニア、ワシントン州を経て、現在2度目のニュージャージー生活。その間アメリカの都会から地方まで40州200都市以上を訪問。あるときは真正面から、またあるときは裏側から、アメリカ各地をご紹介します。

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