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日本の生活保護制度
文&写真/蓑田透(Text and photo by Toru Minoda)
- 2018年12月7日
海外在住の人でも、日本の生活保護という名前は聞いたことがあるかと思います。簡単にいうと、収入が少なくて生活が困難な状況になった場合に、国が生活費を扶助(援助)してくれる制度です。
今後、日本に帰国する人のなかには経済的に余裕のある人もいれば、そうでない人もいることでしょう。後者に該当する人のため、この機会に日本の生活保護制度について紹介します。
1.制度概要
生活保護とは、経済的に困窮する国民に対して、国や自治体が健康で文化的な最低限度の生活を保障する公的扶助制度のことをいいます。資産や能力等、すべてを活用してもなお生活に困窮する人に対して必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障しようとするものです。
したがって、一定額以上の預貯金や所得があると利用できません。また、それらがなくても自分で就労するなどして所得を得る努力をしたうえでなお、生活に困窮する状況でなければ利用できません。健康上の理由などやむを得ず働けない場合を除き、ただ働くのがいやだから働かないという場合は、当然のことながら利用できません。
生活保護といっても、保護する分野によって8種類あります。一般的に皆さんがイメージしている生活保護というのは生活扶助になりますが、その他のものもあります。これらは生活保護の利用者(要保護者)の年齢、性別、健康状態等、その個人または世帯の生活状況を考慮して適用されます。
生活扶助
被保護者が衣食、その他日常生活の需要を満たすための扶助。飲食物費、光熱水費、移送費など
住宅扶助
被保護者が家賃、地代等の支払いまたはその補修、維持に必要な費用の扶助
医療扶助
被保護者がけがや病気で医療を必要とするときに支給される
教育扶助
被保護家庭の児童が義務教育を受けるのに必要な時の扶助
介護扶助
要介護又は要支援と認定された被保護者に対する扶助
出産扶助
被保護者が出産をするときに必要な扶助
生業扶助
生業に必要な資金、又は技能を修得するための費用、就労のための支度費用(運転免許証)等が必要な時の扶助
葬祭扶助
被保護者が葬儀を行う時に必要な扶助
2.保護(支給)内容
上記の扶助は、直接現金で支給されるものと、医療扶助などのような(医療機関で)医療費が免除または減額される現物支給があります。保護内容(支給額)ですが、まず生活扶助基準額というものがあって、最低限度の生活に必要な費用が決められています。生活保護の対象者のうち、所得のない人は生活扶助基準額が全額支給されますが、所得のある人であれば、その不足分が支給されます。所得が生活扶助基準額を上回る場合は、支給の対象になりません。
生活扶助基準額は、所得、居住地、家族によって細かく決められています。その算出方法についてはここでは割愛しますが、以下は東京都の例になります。あくまでも概算額です。地方は東京都より1~2割程度低い金額となります。
・高齢者(60歳代)単身:8~9万円
・高齢者(60歳代)夫婦:12~13万円
また、生活保護を受けると、毎月の支払いが義務とされている国民年金、医療保険、介護保険などの保険料も免除されます。
3.利用条件
(1)居住地
日本の制度ですから、日本国内に居住していることが必要です。日本へ帰国後すぐに利用することはできず、一旦居住することが必要です。
(2)国籍
原則日本国籍の人が対象ですが、外国籍の人でも在留資格の種類によっては利用できます。米国籍取得後、日本国籍を離脱した元日本人が在留資格を取得する場合(永住者、日本人の配偶者等の種類が一般的)であれば受給できます。
(3)収入が生活保護基準より少ないこと
(4)資産(預貯金、車、不動産など)がない
原則預貯金があると生活保護は受けられませんが、そうはいっても当面の生活費、万が一の際の医療費など、多少の蓄えはどうしても必要ですので、多少の預貯金であれば(数十万円程度)認められるようです。
(5)援助してくれる身内、縁者がいない
(6)働けない・働く場がない
4.手続きや注意事項
居住している市町村役場や福祉事務所で申請します。低所得者に対し自動的に通知が送られてくるということはなく、利用希望者が申請しなければなりません。したがって、関心のある人はまず居住地(居住予定地)の市町村役場へ問い合わせをしてみましょう。
生活保護は、「最後のセーフティネット」と言われるようにどう頑張っても生活できない状況に陥った時に利用するものです。したがい審査基準はかなり厳しいと思って下さい。働ける、家族に養ってもらえる、同居可能な親族の家がある等の状況では審査は通りません。
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