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これからの日本の不動産市場
文&写真/蓑田透(Text and photo by Toru Minoda)
- 2019年1月11日
リタイア後または高齢になり老後の余生を日本で送ることを考えている人にとって、日本での住居をどうするかはとても重要なテーマです。すでに家を所有している人もいれば、新たに借りる、購入する人もいるでしょう。その後は体も衰え、老人ホームなど介護施設に入居するため家を売却するかもしれません。そうなると気になるのが、日本の不動産価格の動向ではないでしょうか?
今回は日本の不動産市場について紹介します。
1.日本の不動産市場でこれから起こること
一般的に不動産価格は需要と供給によって決められます。需要(購入者)が供給(売却者)を上回れば価格は上昇しますが、需要が減る、供給が増えるということになれば、反対に価格は下降します。そこでこの需要と供給に影響する出来事をいくつか紹介します。
(1)空き家問題とそれによる中古住宅の流通促進施策
すでにご存じの方も少なくないと思いますが、日本は人口減、少子高齢化傾向にあり、このことにより深刻な空き家問題が生じています。
たとえば親子世帯の家のケースを考えてみた場合、こどもが成人し、独立して家を出たとします。その後しばらくして高齢の親(両親)が亡くなると、空き家となります。ここで、家を相続したこどもが売却または引き続き居住できればよいのですが、思うような価格で売却できない、こどもが勤務地などの都合で居住できない、となれば空き家として残ってしまいます。
総務省の土地統計調査(平成25年)によれば、日本の空き家の数は820万戸で、この数は総住宅戸数に対し13.5%、つまり日本の住宅の7戸に1戸が空き家ということになり、この数は今後も増えることが予想されます。また、この数字はあくまでも平均値であることから、首都圏と地方の人口や年齢構成を考えれば、地方の空き家比率がさらに高くなることは想像に難くありません。
空き家が増加すると、建物の老朽化による倒壊や火災、不審者の侵入による治安の悪化など、近隣住民に対しても迷惑がかかるという問題が発生します。そこで国は対策として、空き家を再利用できるようにするため、リフォーム工事の助成や空き家住宅流通(売買)のための施策を打ち出しています。
こうして中古住宅の供給が増えることで空き家問題は解消されますが、一方で供給増により住宅価格の下落が懸念されています。
(2)2020年問題
2020年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されますが、このため現在不動産価格が上昇しています。原因は、オリンピック施設の建設のため建材費や人件費が高騰し、それとともに住宅建設のコストも高騰していることが挙げられます。また、この時期に向けて快適性を求めて都心へ居住する人の増加や、この機会をチャンスと見る海外を中心とした投資家の増加なども上昇に拍車をかけています。
こうした不動産価格の上昇が、東京オリンピック・パラリンピック終了をきっかけに下落に転じるのではないかと懸念されています。
(3)2022年問題
この問題は、「生産緑地」と呼ばれる(住宅地に混在する)農地が、2022年以降住宅用として供給され、不動産価格の下落が懸念されるものです。
どういうことかといいますと、1992年に国は住宅地を増やすため、農地についても住宅地同様の課税(固定資産税などを強化)をかけました。ただし実際に農業を営んでいる地主に対しては、30年間この課税強化を猶予しました(安い税金で据え置きしました)。
この農地を「生産緑地」といいますが、30年後の2022年にこの指定が解除されることから、地主が(農業をやめ)農地を売却するのではないかといわれています。そうなると宅地の供給が増えることになり、価格の下落が懸念されます。
2.今後の不動産価格の動向
これらの状況を考えれば、今後2020年または2022年以降、日本では不動産価格が下降することが予想されますが、実際はどうなるでしょうか? 確かに長期的にはその傾向になると思いますが、実際に個人が不動産の売買をする局面においてどうなるか、予想することは難しいと思います。その理由としては以下が挙げられます。
・市場価格の下降により需要が増え、再度価格が上昇に転じる可能性がある
・新築マンションなどは、物件が増えても販売業者の供給調整により価格の下落に歯止めがかかる
・今後も首都圏を中心に海外投資家の参入が増え続ける
不動産に限らず、各種の経済指標を予想することは専門家でも難しい状況です。今後、日本で不動産売買を検討する人は、こうした観点に注目するとより関心が高まるかもしれません。
なお、帰国後に不動産を購入するのではなく賃借する人もいます。賃借物件相場の動向についてはここでは割愛しますが、高齢者が新たに日本で住居を借りる場合、市場価格とは別に賃借契約そのものが(孤立死の問題などで)難しいという状況もありますので、ご注意ください。詳細については2018年6月20日のコラム記事をご参照ください。
・国土交通省「不動産市場動向マンスリーレポート」
・不動産経済研究所「マンション・建売市場動向」
・全国宅地建物取引業協会連合会「不動産市場動向調査」
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