Nitori USA, Inc.
アメリカのビジネスは、今

今、アメリカのビジネスシーンはどうなっているのだろう?
困難をどう乗り越えたのか。成功の鍵はどこにあるのか。
キーパーソンに、アメリカでのビジネスのヒントを聞いた。

Nitori
カリフォルニア州オンタリオにオフィスを構えるNitori USA, Inc.のCEO Shunichi Osawaさんに話を聞いた。

ビジネスの詳細

日本では「ニトリ」という名前で多くの方にご利用頂いておりますのが、アメリカでは「Aki-home」という名称で店舗展開をしております。実は同業種でナトリという米系企業があったため、創業者である似鳥昭雄の「アキ」を取ってAki-homeという名でアメリカでの出発をしました。現在は南カリフォルニアを中心に4店舗を展開中です。

アメリカへの進出

昔、創業者の似鳥昭雄が研修で渡米した際、家具と雑貨が上手くコーディネートされている住まいの姿に感銘を受けた経験から事業のアイディアの着想を得て、家具と雑貨を一緒に販売するという形態で日本での事業を拡大させてきました。

このようにアメリカの住まいを見本にしてきましたNitoriですが、いよいよ自身の力をそのアメリカで試していこうと、2013年の9月に米国で初の店舗をオープンしました。店舗展開の場所に選んだのは南カリフォルニア。実はここ、アメリカの小売業界の中でも一番競争が厳しい市場なのです。家屋の間取りが小さい日本の家具はサイズも小さいため、ニューヨークやサンフランシスコなどの大都市の方が住居サイズを考慮すると相性が良かったのかもしれません。しかし、厳しい状況下で勝ち抜くことができれば他の地域でも勝つことができるだろうと、あえて激戦地である南カリフォルニアを進出の地に決めました。Nitoriは挑戦し続けて事業を拡大してきた歴史がありますので、アメリカでもチャレンジ精神で挑んでいます。

Aki-home

事業拡大の変遷

アメリカでの開業の際、最初のポイントは販売する商品選びでした。様々な検討の末、まずは日本の品揃えをそのまま持ってきて試してみようということになりました。その結果、衣食住の「食」の部分は、店舗がアジア人の多く住む地域だったこともあり食器の売れ行きは好調でしたが、「住」の部分は家具のサイズが小さすぎたり日本で人気のデザインがウケなかったりと、日本の品揃えでは難しい部分が見えてきました。例えば、ベットシーツのデザインは、柄が多く入っているものが日本では人気ですが、アメリカでは子供っぽく見えてしまうようで、シンプルなデザインが人気です。そこは価値観の違いですね。こちらは想像しやすいかと思いますが、お皿は醤油皿ではなく、大家族で取り分けられるパスタ皿やパーティーで使用できる大皿がよく売れます。アメリカの食生活や文化を理解していないと、どの商品がいつ売れるのかがわからないわけです。こうしてひとつひとつ分析しながら、その裏にある生活習慣を解き明かしていき、そこから軌道修正をしていきました。

また、弊社は家具を自社で製作し販売することが得意な会社ですので、そこに着目し家具に力を入れた結果、お客様に指示をいただき売上が伸びていきました。応じて家具の売り場面積を広げていき、初めて出展した時はインテリア・雑貨が7割、家具が3割という形でしたが、今はその逆で家具7割、インテリア・雑貨が3割という構成になり、出店した時と商品構成も大きく変わりました。そして昨年2018年には家具を中心とした店舗をオンタリオに初めて出店、立体感がでるように家具を中心とした売り場レイアウトにし、今までとは雰囲気の異なる店舗になっています。同時に本社も店舗併設という形で移転し、アメリカでの第二のスタートを切ったところです。

日米のビジネスの違い

ブランディング・マーケティングの手法
多国籍のアメリカはマーケティングという点で見ると、様々な切り口があると思います。世帯収入、国籍、家族構成、年齢、など、多種多様ですので、どこをターゲットにして行くのかという、ブランドとしての立ち位置を明確にした上で事業を進めていく部分が日本とは大きく違いますね。日本はほぼ単一民族で、所得の幅もアメリカほど広くないため、切り口となる変数が少ないですよね。ブランディング、マーケティングに長けている市場での経験が、米系企業がグローバル展開に強い理由かもしれません。

社員とのコミュニケーション
日系企業の場合、出向している駐在員が物事を決めて動いていくというケースが多くなってしまいがちですが、そうすると駐在員とローカルスタッフの間に溝ができやすくなります。そのため弊社では、ローカル社員のマネージャーを増やし、問題も含めてオープンにしながら話し合い皆で解決策を決めることに取り組んでいます。コミュニケーションをオープンにすることで不信感を減らすことができると考えています。

Aki-home

進出者へのアドバイス

予断を持たないことが大切です。必ずこれが売れる、この商品を売らなくてはいけないというのではなく、柔軟性を持って、衣食住を含めたアメリカと日本の生活の違いをより理解することで、いいアイディアが浮かんでくるものだと思います。

また、アメリカの生活を知るために役に立つのがオープンハウスです。売りに出された家を見学することができるので、家具や生活様式などの普段のアメリカの暮らしを見ることができる非常にいい機会です。20万ドル〜1ミリオンを超える金額の家まで様々な住居を見学でき、所得や人種の違いの生活様式の違いを垣間見ることができます。

今後の展望

昨今はオンラインで買い物をする方が増え実店舗の意義が問われており、アメリカ全体でショッピングセンターの数が減っています。お店での販売とネットでの商品提供が変動している状況です。今は家具を直接触って座ってみたいという方が多いため店舗展開をしていますが、今後ミレニアム世代を中心にオンラインで気軽に買って返品できるという流れが増えていくことは確かです。そうした流れの中で、ただ単に店舗数を増やすことに注力するのではなく、宅急便で簡単にお客様に届けられる商品を増やすことで、店舗数にかかわらずに全米のお客様からの支持を受けれられるようになると思います。

自社で商品を作って販売できるという家具屋は極わずかです。売れる商品を見極めた上で、自社の商品として機能や品質を向上させお値段をより安くして提供することができる弊社の強みを活かし、オムニチャンネル化が進む次世代に、店舗とネット両方のお客様のニーズに応えることができるよう更にチャレンジしていきたいです。

Nitori USA, Inc.

■ホームページ:Aki-home.com
■住所:4655 Mills Cir., Ontario, CA 91764
■電話:714-522-0930

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