物流を制すものはビジネスを制すか? 
第18回

以前、このコラムでも紹介させていただいた元ITS(インターナショナル・トランスポーテーション・サービス)の会長であった浅見紳太氏が、1月31日に永眠した。海上輸送の一大革命と呼ばれたコンテナリーゼーションにも造形が深く、その特性を生かして米国国内輸送にオンドック・ダブル・スタック・トレイン(以下オンドックDST)を1986年に初めて採用。港湾の環境汚染対策とコンテナ輸送の効率化を同時に推し進めた。その功績により、ロングビーチ港湾局より「オンドックの父」との称号を授与された。

ロングビーチ港は今後もオンドックDSTの普及を促し、現在、内陸向けコンテナの37%のオンドックDSTを50%まで引き上げる予定だという。港湾の鉄道内陸輸送に大きな足跡を残した浅見氏の、ご冥福を祈るものである。

さて、前回のコラムまでは、欧州海運運賃同盟の発足から消滅までを見てきた。「クローズド・コンファレンス」と呼ばれた欧州運賃同盟に対して、今回からは「オープン・コンファレンス」と言われた米国運賃同盟を見ていきたい。

米国を取り巻く運賃同盟の原型が誕生

既報のように、運賃同盟はイギリスをはじめ、ドイツ、ベルギー、フランスなどの欧州各国が、自国の制海権を確保するために海上輸送に一定の制限を設け、新規参入を阻止。さらに過度な運賃競争による運賃の下落を止め、安定した運賃収益を得るための船社共同体として発足した。特にインドや中国などの植民地を抑えていた英国の力は、当時絶対であった。ゆえにアジアから中国、インドを抜けて欧州に向かう欧州同盟には、当然、欧州の船社の加入が多い。

一方、幕末に日本に来た米国は強力な軍艦を有しているとはいえ、海運後進国であった。地理的なこともあり、アジア・欧州間のトレードにはなかなか参入できずにいた。

1875年の英国〜インド間の航路で発送したカルカッタ運賃同盟(後の欧州運賃同盟)から遅れること15年、1890年に、北米を取り巻く運賃同盟の原型ともいえるシャーマン法が制定された。しかし、日本およびアジアからの貨物の荷動きが低調であったことから、実際の法整備は1916年の米国海運法の制定を待たなければならなかった。米国海運法には、外航海運カルテルの適用除外と運賃延戻制の禁止がうたわれていた。
その後、アジア〜米国間の貿易は徐々に増加していく。しかし、1939年から始まる第二次世界大戦により、アジア、特に日本と米国間の関係悪化から太平洋航路の荷動きはまったく途絶え、再開には数年の時間が必要となる。

戦後の復興と海運業

1945年、日本の敗戦によって第二次世界大戦は終了し、日本は新たな第一歩を踏み出した。
生来技術力に定評のある日本の製造業が復活し、為替も円安だったことから、徐々に日本の輸出産業は力をつけていく。特に同盟国となった米国向けは旺盛な需要に支えられ、日ごとに増加していった。

戦前、日本とアメリカの間は人と物の動きが活発であった。特に横浜からハワイ、サンフランシスコの航路は人気が高く、戦後の1948年「憧れのハワイ航路」という歌謡曲が大ヒットすることで、さらに人気が高まった。

当時の船は貨客船と呼ばれ、貨物と旅客が同じ船に積まれて太平洋を渡っていた。戦後の復興期を過ぎ、徐々に日本の製造業が力を盛り返してくると、当然、製品を海外に売り出そうとする動きも出てきた。

日本製の繊維は品質が良く、値段も安いということで、米国への輸出が増大していった。当時の船は在来船と呼ばれ、クレーンで荷物を船底に入れて仕切りで分けていたが、スペースの利用効率はあまり良くはない。

輸出の増大という追い風を受け、船社は強気の運賃設定をする。北米航路も欧州航路同様、コモディティレートである。アジアから米国に船を配備する船社は、ほとんどが同盟に加入していた。荷主は同盟の枠の中で、二重運賃制などを通じて少しでも安い運賃で物を運ぼうとした。

当然、同盟に与しない、いわゆる盟外と呼ばれる船社も出てくる。台湾のエバーグリーンなどがその代表である。

次号では、コンテナ船の出現と太平洋航路の拡大について触れる。

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赤岩寛隆 (Hirotaka Akaiwa)

赤岩寛隆 (Hirotaka Akaiwa)

ライタープロフィール

外航海運会社で20年以上にわたり北米定期航路の集荷営業に従事。北米駐在を経て2013年9月、北米唯一の海運、港湾、物流情報発信会社SHIPFANを設立。
「日本海事新聞」紙上に「ロサンゼルス便り」、 ロサンゼルスのフリーペーパーに「物流時報」を定期掲載するほか、物流コンサルティング、物流セミナー、港湾ツアーの開催、輸出入のマッチング業務を手がけている。ロサンゼルス港に「コンテナ物流研究所」を開設。

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