日本の障害年金(Disability Pension)について〈後編〉

文&写真/蓑田透(Text and photo by Toru Minoda)

前回に引き続き、今回は心身に障害がある場合に支給される障害年金についてのお話です。前回は対象者、障害の状態、受給額などについて紹介しました。今回は支給要件や請求手続きについて紹介します。

支給要件

障害年金の支給要件としては、普段から毎月の保険料を納付していること(下記①)、障害の状態が一定期間継続していること(下記②)が求められます。

①障害が発生した日(医療機関での初診日)の前々月までの年金加入期間に3分の2以上保険料を納付していること(パターンA)。または前々月までの直近1年間に未納がないこと(パターンB)。

例:40歳以降、10月に初診を受けた年金加入者の場合
パターンA 年金加入時(通常は20歳)から8月までの期間中、3分の2(約13.4年)の
期間、保険料を納付していること
パターンB 前々月までの1年間(39歳以降の8月から1年間)に保険料の未納がないこと

 

②初診日から1年6カ月後(障害認定日)の障害の状態が、1~3級の状況であること。なお、1年6カ月後の傷病状態が年金支給要件に達していない(軽い)場合でも、その後の支給要件に達する状態になれば事後の請求は可能です。

ケース別受給の可能性

以下は海外居住者の年金受給の可能性について、年金加入状況のケース別にまとめたものです。

日本で障害になり、その後渡米したケース

 

渡米後に障害になったケース
※米国居住後の障害年金請求手続きには、米国医療機関での障害認定が必要です。

請求のための手続き

請求手続きは日本各地にある年金事務所で行えます。書類の郵送による請求手続きも可能ですが、海外からとなると、追加書類の提出や不備があった場合に差し戻しなども考えられるため現実的ではありません。

また請求手続きで多くの人が苦労しているのが、初診日と障害状態に関する書類の入手です。前者は医療機関の証明書、後者は医師の診断書になりますが、すでに医療機関を受診した人については過去にさかのぼっての入手となるため、時間が経過してしまっていると病院側ですでに破棄されて入手できないことがあります(医療機関でのカルテ等保存期間は5年)。

書類については米国の医療機関のものでも有効です。ただし、日本年金機構に提出する診断書は日本語版のみで、記入項目数も多いです。一応、外国の医療機関向けに英訳資料があります。必要な場合は日本年金機構にお問い合わせください。日系企業の駐在員は、本社の福利厚生担当者にアドバイスを求めるのがよいでしょう。

いかがでしょうか? 最近は障害年金受給者の増加にともない年金財源の支出が増え、障害年金の審査が厳しくなっています。障害の状態が受給可能な等級であるにもかかわらず、診断書の書き方によって審査が通らなかった場合も見受けられます。ご自身でも請求手続きは可能ですが、こうした状況を避けるためにも専門家に相談する方法を検討した方がよいかもしれません。

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蓑田透 (Minoda Toru)

蓑田透 (Minoda Toru)

ライタープロフィール

早稲田大学理工学部卒業後、総合商社入社。その後子会社、外資系企業等IT業界で開発、営業、コンサルティング業務に従事。格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続きの代行サービスを多数手がける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士、日本帰国コンサルタントとして老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、介護付き老人ホーム探し、ライフプラン作成、不動産管理、就労・起業、税務等の相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種代行、支援サービス(各種証明書の取得、成年後見など日本在住の老親のサポート)を行う。

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