広島と長崎を忘れない
『平和の午後』記者会見

非営利団体Shadow For Peaceと日米文化コミュニティー・センター共催の総合芸術舞台『平和の午後 – 広島と長崎が経験したこと – 』(9月16日、アラタニ劇場で上演)の記者会見が7月25日、日米文化会館JACCCで行われた。
舞踊や歌、ビデオ上映などを通じて、1945年8月6日と8月9日に広島と長崎で被爆した人たちに敬意を示し、彼らが経験したことを忘れないようにというメッセージをこめた同舞台。監督・脚本・エグゼクティヴ・プロデューサーのリチャード・フクハラ氏、JACCCアラタニ劇場のパフォーミング・アーツとコミュニティー・エンゲージメントのディレクター、アリソン・デ・ラ・クルーズ氏、プロデューサーのロバート・ホースティング氏、プロデューサーで、神主として慰霊祭を斎行するはせがわいずみ氏が出席し、舞台の概要を語った。

Q:本プロジェクトに関わるようになった経緯は?
リチャード・フクハラ(以下フクハラ):被爆体験者の話を聞いたのをきっかけに、次世代の子供たちのために悲劇を繰り返してはならないことを伝えるShadows For Peaceを2010年に立ち上げました。私は幼少時代を収容所で暮らしましたが、戦後に自分たち日系アメリカ人が経験したことを通じて、少なからず共通する点があると感じました。アメリカの教育では原爆投下によって何が起きたのかは教えていません。広島と長崎を訪れてリサーチをし、それをもとに被爆体験を描いた「ブラック・レイン(黒い雨)」などのアート写真を制作しました。Shadow For Peaceは、被爆した人たちへのトリビュートです。
はせがわいずみ:ロサンゼルスで毎年行われている東日本大震災の被害者を追悼するLove to Nipponの慰霊祭を通じてリチャードと知り合い、このプロジェクトについて聞きました。私は広島に隣接する島根出身で、子供の頃に修学旅行で広島平和記念資料館を訪れた時にとてもショックを受けました。そして年齢を重ねるごとに歴史を繰り返さないためにも被爆者の体験を次の世代に語り継ぐことの必要性を感じるようになり、今回関わることにしました。

Q:プロジェクトの詳細は?
フクハラ:平和教育が目的で、特に若い世代に対して伝えたいですね。Shadow For Peaceは、ロバートの参画により、近年は、コミュニティー・センター、大学、高校などで平和教育を行ってきました。今後も図書館などで広島と長崎のことを伝えていきたいと思っています。今回の舞台は、アート、音楽、日本舞踊、歌、ビデオなど異なるメディアを通じてもっと広く被爆者の体験を伝えるものになります。世界には今なお多くの核が存在する現状を考える機会になればと思っています。ダイアン・フェインスタイン上院議員の賛同も得ることができ、とても嬉しく思っています。
アリソン・デ・ラ・クルーズ:上演前の12時45分からは、劇場前の広場で慰霊祭を斎行します。舞台の開演は2時です。プログラムの冒頭で追悼の意味を込めてお祓いをします。その後、ビデオ上映、現代舞踊などのパフォーマンス、広島と長崎の被爆者の体験談の上映、コンサートなどがあり、最後は観客も一緒に世界平和を考えるような終わりにしたいと考えています。
はせがわ:子供たちからの平和や夢について語るメッセージを募集しています。ステージ上でそれらを紹介し、被害者たちの魂に捧げたいと思っていますので、たくさんの応募をお待ちしています。

Q:JACCCは過去にこのようなプロジェクトを行ったことは?
デ・ラ・クルーズ:平和教育関連では、映画の上映や講演はありましたが、本プロジェクトのようなアプローチは知る限りありません。今年は日系アメリカ人が強制収容されてから節目の75周年ということもあり、第二次世界大戦や強制収容所についてのトピックがたくさん持ち上がっています。広島や長崎で起きた恐ろしい出来事だけでなく、米国内の核実験についてなどもっと広い視野でこの問題を考えていかなければと思います。オリジナルの舞台はほとんどプロデュースしたことはないですが、アラタニ劇場にとっても、アーティストたちが大きなビジョンでこの問題を語ることはとても大切な機会だと考えています。世界中で色々なことが起きている今こそ、歴史から逃げずに多くのこと話し合う機会になって欲しいです。

詳細:jaccc.org

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