外国生まれの創設者たちを米国内に滞在させるには 〜「新興企業査証」の行方に注目

 911以来、米国の移民規制は厳格化されてきた。また、ドナルド・トランプ政権の誕生を受けて、その流れはさらに強まる方向に向かっている。テッククランチ誌では、国内雇用機会の創出を最優先策に掲げるトランプ大統領がその公約を守りたいのであれば、外国生まれの起業家たちに米国滞在を認めるオバマ政権案をじゃますべきではない、という論陣を張っている。
 
 ▽上場した新興企業の3分の1は外国人が創設者
 
 外国生まれの会社創設者らによる起業家活動の経済的貢献が大きいことは、各種の労働統計や経済統計によって前から証明されている。
 
 テッククランチ誌の調べによると、米ベンチャー・キャピタル(VC)の投資によって支援された新興企業のうち、2006年から2012年のあいだに新規株式公開(IPO)を果たした企業の3分の1は、少なくとも一人の外国人創設者(起業家)によって立ち上げられた。
 
 ▽米ユニコーンの半数以上は移民が創設
 
 別の調査では、移民が米国のユニコーン(unicorn)の半数以上を創設したことも判明している。ユニコーンとは、企業評価額が10億ドルを超える私企業(未上場新興企業)。
 
 さらに、別の調べでは、米国内の労働力全体の約15%を移民が占めるのに対し、米国内の起業家の25%は移民で占められる。
 
 外国生まれの創設者たちが米国の起業生態系に大きく貢献していることは言うまでもない。また、外国人によって立ち上げられた新興企業らが、技術業界を中心に米産業界の幅広い分野で雇用機会を創出していることに疑問の余地はない。
 
 ▽新興企業査証という新ビザ案
 
 米ベンチャー・キャピタル協会(NVCA=National Venture Capital Association)は長年にわたって、新興企業査証(Startup Visa)を外国人起業家に発給する制度の整備を連邦議会に訴えてきた。
 
 NVCAの提案では、適切な投資や資金を獲得し事業運営を維持できることを証明した才能ある外国人創設者が米国内に継続的に滞在できるようにする創設者向けビザの制度を整備すれば、より多くの移民が米国内で起業して雇用を生み出し米経済に貢献する、と訴えている。
 
 ▽議員の教育が重要に
 
 連邦議員らは過去に、NVCA案に対し超党派での理解を示したこともある。
 
 イーベイやインテル、テスラ、グーグルといった米国を代表する輝かしい技術大手の多くが外国人によって起業されている。議員らもそれを知らされれば新興企業査証の導入に寛容になる。
 
 したがって、シリコン・バレーやVC業界、起業界は今後も、議員たちを教育し続けなければならない。
 
 ▽保守派の議員が抵抗
 
 しかし、新興企業査証案は、包括的な移民制度改正法案とつねに抱き合わされて審議されるため、保守派の抵抗によって潰され続けてきた。
 
 そこに、米国人の雇用機会を守ることを至上政策として掲げるトランプ大統領が誕生したことで、新興企業査証案にとって致命的な逆風が吹くことが懸念されている。
 
 ところが、大統領令を連発するトランプ大統領を説得できれば、議会の保守派の賛同を得て議会での可決という難しい手続きを踏まなくても新興企業査証を実現させることができる。
 
 ▽国際起業家規則
 
 NVCAが提唱しオバマ政権下で検討された新興企業査証導入案では、国土安全保障省(DHS)が法案内容を最終化させた際に、国際起業家規則が盛り込まれた。
 
 有能の移民創設者が米国内滞在を認められるには、2年半以内に事業を成長させ存続可能性を示せば、2年半の滞在延長を申請でき、それを連邦政府の裁量権によって判断する、というのが同規則だ。
 
 ▽7月17日に発効する段取り
 
 同規則に則って有資格となるには、潤沢な投資や資金の調達に成功し、急成長と雇用機会創出、市場競争における優位性を見込めることが証明されなければならない。
 
 同規則は、7月17日に発効する段取りとなっている。同規則を草案したNVCAでは、トランプ大統領が1月にホワイトハウスに入って以来、同規則の発効を阻止しないよう、同規則が米経済と雇用機会創出にいかに貢献するかをホワイトハウスに訴えかけてきた。
 
 ▽シリコン・バレーのCEOらもホワイトハウスに訴え
 
 NVCAでは、25州の大勢の投資家や起業家と協力して、起業生態系の重要性や、外国人の起業活動を支援することがトランプ政権の米国内雇用最優先政策にどれほど合致しているかを力説する書簡も送っている。
 
 シリコン・バレーを中心とした米技術大手のCEOたちも、新興企業査証の必要性をホワイトハウスに強く訴えており、同規則を7月17日に発効させる現行路線を変えないよう圧力をかけている。
 
 ただ、業界専門家らの一部では、トランプ大統領がその発効期日の先送りを検討している、と懸念している。
 
 【https://techcrunch.com/2017/06/19/ensuring-foreign-born-founders-can-grow-their-startups-in-the-u-s/?ncid=mobilenavtrend】(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

最近のニュース速報

注目の記事

  1. 2017-4-3

    イースターキーマカレー イースターマカロニサラダ

     イースター祭りに、キーマカレーとマカロニサラダはいかがでしょう? 一気にたくさん作れて、子供も大人...
  2. 2016-5-29

    [お知らせ]「極苦楽ライフ」が本になりました! 樋口ちづ子「花だから咲く」幻冬舎刊

     フロントライン誌で「極苦楽ライフ」を好評連載中の樋口ちづ子さんが、本を出版しました! タイ...
  3. 2016-11-3

    国外退去の対象となる犯罪 パート②

    前回に引き続き、今回もアメリカでの不道徳行為、悪質な重犯罪やその他の犯罪による国外退去命令に...
  4. 2017-6-1

    日本文化の素晴らしさ 日本人の心の在り方を伝えたい

     全米公開に先駆け、5月8日にハリウッドのエジプシャンシアターで開催された映画「たた...
  5. 2016-7-30

    シリーズアメリカ再発見㊸ アートで再生! デトロイト

     「Detroit is coming back」。デトロイトは復活するよ。  ...

デジタル版を読む

saishin フロントライン最新号
ページ上部へ戻る