シリを使って見知らぬ遺族に連絡 〜ラスベガス銃乱射現場からアイフォーンで犠牲者と家族をつなげる

 ラスベガスのコンサート会場で1日の午後10日ごろに起きた銃乱射事件(2日時点で確認された死者数は59人、負傷者数は525人)で、見知らぬ犠牲者の遺族に連絡するのにアイフォーン(iPhone)が役立ったという出来事がある。その出来事は、スマートフォンに緊急連絡先を登録しておくことの重要さを示した。フォーチュン誌が報じた。
 
 ▽生き延びたバーテンダーの体験
 
 マンダレイ・ベイ・リゾート・アンド・カジノに隣接するコンサート会場のバーでバーテンダーとして働いていたヘザー・グーズさんは、約9分間と言われる銃乱射から必至の思いで逃れた際に、ジョーダン・マキルデューンさんのとなりで隠れていた。
 
 そのマキルデューンさんは、銃弾を受けてグーズさんの腕のなかで息を引き取った。グーズさんはその場から逃げず、マキルデューンさんの家族を見つけ出すことだけを考えたという。
 
 「彼を無名の死体として放置できなかった」「彼が誰なのかを知らせる義務が自分にあった」と彼女はCNNの取材に答えた。
 
 ▽フェイスブックで犠牲者を検索
 
 グーズさんは、マキルデューンさんのアイフォーンを使おうとしたが解錠できなかったため、彼の財布からIDカードを取り出し、フェイスブック上で彼を検索した。
 
 彼のフェイスブック・アカウントを見つけると、彼女は自身のフェイスブック・アカウントから彼の友人らにメッセージを送信し、彼が銃乱射の犠牲となったことを知らせた。
 
 ▽犠牲者の恋人に連絡
 
 すると、一人から返信があり、マキルデューンさんが恋人と一緒に同コンサートに行ったことを知らされた。
 
 グーズさんは、その恋人の名前と連絡先を聞き出し、マキルデューンさんのIDカードの写真を添付してその恋人にテキスト・メッセージを送った。
 
 恋人からの返事はすぐにあり、惨劇の場所と化したコンサート会場から2ブロック離れた別のホテルにいることがわかった。
 
 ▽「お母さんに電話にかけて」とシリに音声指示
 
 それと同時にマキルデューンさんのアイフォーンが鳴った。彼の母親からだった。グーズさんは電話をとり、彼の遺体とできる限り長く一緒にいることを母親に約束した。
 
 グーズさんは、マキルデューンさんの母親にその後の経過を知らせることになっていたが、電話番号を聞き忘れたため、シリ(Siri)を使えばアイフォーンのセキュリティー錠をバイパスできることを思いつき、彼のアイフォーンのシリを起動した。
 
 そして、「お母さんに電話にかけて」と彼女は音声指示を出して彼の母親に電話をかけた。
 
 ▽シリの緊急時アクセス機能
 
 アイフォーンには、緊急時のために緊急連絡先や医療情報に他人がアクセスできる機能がある。
 
 電話番号録のなかから緊急連絡先を指定しておけば、解錠しなくてもシリを使って電話をかけられる。また、ヘルスケアというアプリケーションのメディカルIDを使えば、自分の血液型やアレルギー、健康状態、服薬といった医療情報を設定できる。
 
 それらの設定をすませると、ロック画面の下部左側に「緊急(Emergency)」というオプション機能が表示される。それを指で触れれば、緊急電話モードになり、アイフォーン所有者以外の人物が911(日本の110番)に電話できる。メディカルID機能も、設定した場合に同様に表示される。
 
 ▽音声指示で救急車を呼び乳児を救う
 
 シリが人命を救うのに役立ったという出来事はしばらくまえにも報じられたことがある。
 
 乳児が呼吸停止状態になっていたことを発見した母親が、両手を使って人工呼吸をしながらシリを起動し、「救急車を呼んで」とシリに音声指示を出したことで、人工呼吸を止めることなく救急車を呼ぶことができた。
 
 人工呼吸を続けながら救急車を呼ぶことができなければ、心肺停止状態が長くなり死亡、あるいは脳障害が残った可能性があった。
 
 【http://fortune.com/2017/10/03/siri-call-mom-how-one-woman-used-an-iphone-to-reach-a-las-vegas-victims-family/】(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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