トラック不足で輸送費高騰〜出荷量減らす荷主も

 輸送業界でトラック不足が深刻化している。荷主は最重要でない貨物の発送を後回しにしているが、優先する貨物にも高い料金の支払いを余儀なくされる例が増えている。
 
 ■多くの要因が集中
 
 ウォールストリート・ジャーナルによると、輸送トラック不足はいくつかの要因が重なって起きている。まず、2017年12月は経済の堅調を受けて貨物量が同時期では過去最高水準近くまで増えた。小売店は近年にない売り上げの商戦期を終え、今は在庫の補充を進めており、製造業も12月の生産が10年以降で最大の前年比増加率を記録し、出荷が増えている。
 
 これに悪天候と、12月に施行された連邦の新しい安全規制が重なった。また、ディーゼル燃料価格がほぼ3年ぶりの高値となっていることも、輸送コストを上昇させている。
 
 オンライン取引市場のDATソリューションズによると、スポット市場では1月20日までの1週間に、使用可能なトラック1台当たりの輸送待ち貨物が約10台分に達し、前年同期の3台分から大幅に増加。最も一般的な大型トラックであるドライバンのスポット市場価格は、前年比で20%以上高騰し、18年は荷主が輸送業者と交渉する長期契約の料金も5〜8%上昇すると予想されている。
 
 ビール大手コンステレーション・ブランズ、食品大手キャンベル・スープ、JM・スマッカーなどはいずれも、最近の財務報告で輸送コストの高騰に触れている。
 
 ■料金2倍になることも
 
 トラック運送会社は輸送力の拡大に努めているが、需要に追いつくには数カ月か、長ければ数年かかる可能性もある。一方で、輸送業者がメーカーや小売店の選り好みを始め、荷物の積み下ろしに時間がかかる倉庫や出入りが混雑する倉庫を嫌がるようになっている。
 
 タイヤ大手ミシュランの場合、長年取引する輸送業者の一部が12月、待ち時間が長いことを理由に一部の工場からの輸送を拒否した。このため同社は社員に対応を迅速にするよう促すと同時に、商品の生産継続に必要な出荷を優先させた。 1月は人工ゴムの出荷量を5分の1減らしたほか、輸送の負担が週末に集中しないよう発注を分散するなどして対応している。
 
 しかし、人工ゴムの輸送には凍結を防ぐため温度調整の可能なトラックが必要で、その輸送需要は温調大型トラック数の約15倍に上っている。このため、ミシュランのケンタッキー州ルイビル工場では単発のトラック輸送に長期契約料金のほぼ2倍に当たる2600ドルを払っており、一部の冷蔵不要な貨物は鉄道に切り替えている。
 
 また、新しい連邦規制で電子ログ記録装置(ELD)を使ったドライバーの運転時間の正確な記録が義務付けられたため、ルートによってはこれまで1日で済んだ輸送が2日かかる可能性も生まれ、料金を高騰させている。通常、1月は閑散期だが、18年は年初からの3週間にトラック輸送の全米平均スポット価格が17年の繁忙期を上回った。さらに1月は大寒波で大西洋岸の道路や港が閉鎖されたため、トラック不足に拍車がかかった。ミールキット会社ハローフレッシュではトラックを確保できず、食品材料業者の助けを借りてなんとか倉庫からフェデックスの集積所まで荷物を運んだという。4月には農産物の出荷が増加し、ELD規制が完全施行されるため、輸送能力はさらに低下すると予想されている。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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