2017年は、技術分野の新興企業界にとって最悪の部類に入る年とも指摘される。シリコン・バレーの性差別問題やウーバーでの性的嫌がらせ横行、ネット中立性の不透明感、欧州連合からのしめつけ、トランプ大統領との対立と、深刻な懸念材料がいくつも表面化した。しかし、ベンチャービート誌によると、米技術業界はそれでも、ベンチャー・キャピタルの調達や投資という面では記録的に良い年だった。
▽1件あたりの投資額が増大
ピッチブック(PitchBook)と米ベンチャー・キャピタル協会(National Venture Capital Association=NVCA)が共同でまとめた最新のベンチャー・キャピタル(VC)業界動向調査によると、2017年はドットコム・バブル終盤の2000年代初期以来最大の年間VC調達額を記録した年となった。それによると、2017年における米VC投資総額は840億ドル、投資件数は8076件で、好調と言われた2016年の720億ドルを上回った。2016年のVC投資件数は8635件だったことから、2017年には1件あたりの投資額が増えたことになる。投資件数の減少、つまり1件あたりのVC投資額の増大は2017年の特徴だ。
▽ユニコーン増加という傾向
それが意味することは、ドットコム・バブル時代と違って、大きく成長した新興企業らがIPO(新規株式公開)を目指さずに私企業のままでVCの追加調達を続けているという昨今の傾向だ。その結果、ウーバーやエアビーアンドビーに代表されるユニコーン(企業評価額10億ドル超の新興私企業)が増えた。投資規模の拡大は継続しており、VC会社らも投資資金調達額を引き上げている。2017年に締め切られたVC投資基金の数は209件で、それらが集めた投資資金総額は320億ドルに達した。 特に、IVPの15億ドル、NEAの33億ドル、そしてソフトバンク・ヴィジョン・ファンドの1000億ドル(実際には2018年1月初旬時点で980億ドル)という巨大なVC基金が2017年に誕生している。
▽西部では2013年比で2倍近くに
2017年の好調なVC投資は米国内のほぼ全域で確認され、2013年以来最大の増加を記録した。アラスカとカリフォルニア、ハワイ、オレゴン、ワシントンを含む西海岸では、2013年のVC調達額にくらべて96%近くも増えた。また、五大湖地域(ミネソタ、ウィスコンシン、イリノイ、オハイオ、ミシガン、インディアナ)でも、VC調達額は2013年から2017年に約70%拡大した。特にイリノイでは110%増を記録した。一方、米南部では2013年から2017年に4%増にとどまった。
▽イグジット件数、2011年以来最少
VC投資がシリコン・バレーに大量に流れ込み続けていることから、新興企業らとそれらへの投資会社らはイグジット(出口=IPOや株式譲渡、経営陣による買収、事業切り売り、会社売却といった投資回収のこと)を無理に模索する必要がない。その結果、VCからの投資を受けた新興企業らのイグジット件数は2017年に、3年連続の減少と2011年以来最少を記録した。
▽2018年に市場崩壊の可能性も
米技術分野向けのVC投資や起業界は2018年も好況を維持するというのが大方の見方だ。しかし、経済専門家らの一部には、2000年のドットコム・バブル破裂と2008年のリーマン・ショックに続く市場崩壊が2018年に起こる可能性が高まっている、と警鐘を鳴らす意見もある。 その根拠は、オバマ政権時代に連銀が実施したゼロ金利政策によって連邦政府の借金が約2倍に拡大し債務上限を超えたことから、債券市場の崩壊という恐れが深刻化している、というものだ。
▽バブル懸念も浮上
さらに、トランプ大統領が掲げた法人税の大幅減税案を連邦議会が可決したことで、従来の35%から21%に引き下げられることが決まり、それを受けて世界的な株価上昇が誘発され、株式市場がバブル気味という新たな懸念材料も加わった。 米国債を大量に買っている国は多く、特に中国と日本は米国債の得意客だ。米債券市場が暴落すれば、ドットコム・バブル破裂とリーマン・ショック級の世界同時大不況に陥る可能性は高い。
【https://venturebeat.com/2018/01/08/vcs-invested-the-most-capital-in-2017-since-the-dotcom-era/】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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