日本の超高齢化社会は医療向け技術の商機 〜 外国にとっては実験室であり投資機会

日本は、世界で前例のないほどの少子高齢化という課題に直面している。出生率が非常に低いため、日本の人口は2010年以来、減少しており、世界最長寿国の一つということも手伝って、2065年までに人口の最低38%が65歳以上という超高齢化社会に向かっている。経済成長の観点から日本の極度の少子高齢化は深刻な課題だが、データと医療分野を基盤とした次なる革新の面では大きな商機を意味するものでもある。フォーブス誌が長文記事で報じた。

▽国際機関ら、労働人口減と医療費増大を懸念

日本で一般に高齢者と定義される65歳以上の人口は現在、3557万人で、全体に占めるその割り合いは過去最高の28.1%に達する。国際通貨基金(International Monetary Fund=IMF)は少し前に、日本人の高齢化と労働人口の減少が日本経済の成長の足かせになっている、と指摘した。

また、経済協力開発機構(Organization for Economic Co-operation and Development=OECD)は4月に、「日本の高齢人口増が政府の医療費支出(OECD加盟国中6番目に高い)を継続的に増やしており、長期医療支出は過去10年間で急増している」 と報告した。

▽世界経済会議の研究部門、東京支部を開設

世界経済会議(World Economic Forum=WEF)では、第4次産業革命センター(Center For the Fourth Industrial Revolution)という政策研究所を設置して東京支部を2018年に開設し、人口高齢化を中心とした社会経済および産業経済の課題解消に取り組み始めた。

その一方で、一部の経済人や政策専門家らは、高齢化社会に関する政策に関して日本が重要な実験室になるという見方を示し、新たな事業機会の可能性に着目している。先進国の大部分は、日本ほどではないにしろ人口構成が高齢化に向かっている。

▽本格化しつつある各社の高齢者向け事業

商機の面で日本の技術および産業界では市場開拓がすでに始まっている。 たとえば、パナソニックは、高齢者らが自力で歩けるよう、人工知能アルゴリズムを活用した歩行支援機を開発した。綜合警備保障(アルソック)は、徘徊する認知症患者を追跡する親指大の追跡機器を開発している。

東京のシントミ介護施設では20種類のロボットを導入して、高齢者たちの世話や会話の支援に活用している。それらのなかには、ソフトバンクのペッパーやソニーのアイボ、インテリジェント・システムのパロが含まれる。

そのほか、東京拠点のトリプル・ダブリュー・ジャパンは、ディーフリー(DFree)という身体装着端末によって膀胱の状態を超音波で検知して排尿予測を利用者らに通知する機器を開発した。

▽世界最大級の皆保険が貴重なデータ源に

また、日本の国民皆保険制度によって日本は医療データの宝庫という商機もある。

ハーバード大学医学大学院のジョン・ハラムカ教授によると、日本は一人あたりの医療向けイメージング・スキャン率が世界最高で、超高齢者社会では不可欠の遠隔医療に向けた機器類やソリューション、システムが発達しつつある。

さらに、1961年に始まった国民健康保険制度は、医療費の個人負担を軽減した良質医療サービスをほぼすべての国民に提供する世界でもまれかつ最大の存在だ。 1億2700万人という規模の人数が加入する日本の皆保険制度は世界最大級で、同時に、全国民に近い規模での医療データを集められるという非常に貴重な医療システムだ。

▽医療と技術の融合が需要な役割り

「日本は、医療データや診療データ、治療計画データを含め多種多様かつ膨大な量のデータを蓄積しており、日本中の自治体がそれらにアクセスできるようになっている」 と医療政策専門家のユミコ・ニシムラ氏は話す。「そのことは外国の医療関係者たちにとって非常に有益な実験室でもある」。

ニシムラ氏は、国際医療業界会議のヘルス2.0と、医療情報および管理システム協会 (Healthcare Information and Management Systems Society=HIMSS、シカゴ拠点)の助言者を務めている。医療と先進技術の融合が高齢化社会では重要な役割りを果たし、特に人工知能には大きな機会がある、と同氏は強調する。

▽健康維持方法を人工知能で最適化

たとえば、同氏が相談役を務める東京拠点のシーディーアイ(CDI=Care Design Institute)では、愛知県豊橋市の病院らと協力して、CDIプラットフォームMAIAという人工知能基盤の医療管理プラットフォームを使っている。

CDIは、スタンフォード大学の人工知能研究者らと協業し、個々の患者向けの治療計画を最適化する人工知能アルゴリズムを開発した。高齢患者らが日常生活での独立性を取り戻してできるかぎり長く維持できるよう、治療データや医療データ、診断データの解析をもとに最適の運動や理学療法をはじき出すのがCDIの人工知能アルゴリズムだ。

▽外国にとっては近未来を示す実験

ニシムラ氏によると、日本政府は、長期医療サービス(おもに長期介護)に関する規制を緩和しており、その結果、長期医療サービス会社らが先進技術の開発を支援できるよう新興企業に投資できるようになった。

「高齢者向け医療サービスの分野は、日本にとっても外国にとっても大きな投資機会と事業機会であり、医療サービス提供会社らと技術開発会社らの協業による医療現場の業務効率化にとって貴重な実験となる」と同氏は話す。

人口の高齢化と技術変革を経験する他国は、同分野で先行する日本を見ることで、近い将来の動向を先取りできるかもしれない。また、外国の技術会社にとって日本の高齢者向け長期医療技術およびサービス市場は大きな投資機会でもある。

【https://www.forbes.com/sites/japan/2018/11/12/why-japans-aging-population-is-an-investment-opportunity/#4e4a71d1288d】

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