オンライン小売市場の勢力拡大によって規模縮小や廃業に追い込まれる実在店舗チェーン大手が増えるなか、百貨店チェーン大手のノードストロームは業績を伸ばしている。マイトータルリテイル誌によると、伝統的小売大手らにとって非常に厳しいアマゾン時代においてノードストロームが大健闘しているのには三つの理由がある。
▽ロード&テイラー、旗艦店を閉店へ
高級百貨店老舗のロード&テイラー(Lord & Taylor)は、ニューヨーク市内の旗艦店を2019年内に閉店する。5番街にある同店舗は1世紀以上にわたって高級百貨店の象徴的存在の一つだった。
実在小売チェーン大手がオンライン小売の影響を受けて廃業するというニュースはいまに始まったことではない。しかし、ロード&テイラー旗艦店の廃業ニュースは、革新に積極的に取り組まなければ老舗の高級百貨店ですらアマゾン時代に生き残れないことを明示する事例だ。
▽90年代からIT活用に注力したノードストローム
その一方で、ノードストローム(Nordstrom)は2017年に総売上を151億ドルに拡大し、小売業界関係者らを驚かせた。
ノードストロームとロード&テイラーが明暗を分けたのは、先進的ITを継続的かつ効果的にいかに活用できたかだ。ノードストロームは、1990年代中盤からIT活用に積極的に取り込んできた。その姿勢は、デジタル・ソリューションの進化にともなってさらに強化されてきた。
アマゾン時代においてノードストロームが業績を伸ばせた理由には、1)セルフサービス機能や利便性の拡充、2)革新的機能による買い物体験の拡充、3)実在店舗ならではのサービス拠点店舗の開設、がある。
▽セルフサービスの拡充
セルフサービス技術はむかしからさまざまの業界で実用化されてきた。小売りはセルフサービス技術を多用する代表的業界だ。
ノードストロームは、オンライン購入か実在店舗での購入かにかわらず、返品希望者が並ばずに簡単に返品できるセルフサービスの専用窓口を設置している。返品者が品物を専用の箱に入れるだけでほぼすぐにクレジット・カードに返金される。
同社の支店群ではそのほかにも、来店客がスマートフォンで商品の写真を撮ってアプリケーション経由で類似品をオンライン検索できる「スキャン&ショップ」という機能を提供している。それによって、店員に聞かなくても目的商品を自分で探せるようにした。
▽買い物体験の拡充
同社は、顧客サービス強化に向けてベヴィーアップ(BevyUp)を2018年に買収し、ベヴィーアップのソフトウェアを自社ウェブサイトに統合した。
ベヴィーアップのソフトウェアは、消費者が購入した服をもとにスタイリストが商品を推奨するしくみ。それはあたかも、自分の好きな販売担当者がそばにいて助言してくれるようなものだ。
自分の趣味に合致した商品推奨機能が販売増に寄与することは実証済みだ。同様の機能は、アマゾンやネットフリックスのウェブサイトで早くから実用化され、売り上げや利用者満足度に大きく貢献している。
▽実在店舗ならではのサービス拠点店舗
ノードストロームはさらに、服の仕立てサービスに特化したノードストローム・ローカルという実在店舗を2017年に開店した。
ローカルでは商品をほとんど置かずに、仕立てのほか、ノードストロームのウェブサイトで購入した商品を受け取れるサービスや返品を受けつけるサービスも提供している。同社は、「サービス拠点」として機能する実在店舗としてローカルを位置づけている。
ローカル店内は、来店者らが待ち時間に飲み物をゆっくり飲んだり、ちょっとした仕事をできるような設計や雰囲気も好評だ。
▽実在店舗の効力
実在店舗の運営会社らは近年、オンライン小売市場の拡大に押されて、初期投資と維持費が莫大にかかる実在店舗の増設を断念どころか支店を減らしている。しかし、ノードストロームの努力は、実在店舗でも売り上げを伸ばすことができることを証明した。
実在店舗を展開することは、消費者が買いたいものを買いたいときにすぐに提示でき、そこに存在し続けることで認知度を高めるという効力を持つ。そのため、オンライン販売から始まった業者が実在店舗を出すという逆方向の実在店もいくつも出現している。
たとえば、オンライン家具販売大手ウェイフェア(Wayfair)は、ニュージャージーとマサチューセッツで臨時店の催事を開くことで認知度向上を図っている。
【https://www.mytotalretail.com/article/3-innovations-from-nordstrom-to-inspire-your-2019-retail-strategy/】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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