米国と日本は再生利用しすぎ? 〜 社会的経済効果にとっては約10%が最適

 クリスチャン・サイエンス・モニター紙によると、先進国で行われている再生利用事業の多くは、輸送や処理、再生材の製造にかかるコストが社会的経済効果を上回っている可能性がある。

 「環境経済学&経営ジャーナル(Journal of Environmental Economics and Management)」誌に掲載された日米の研究者の論文によると、現在、日本のごみ再生率は19%、米国では34%に上るが、社会的経済効果を生むのにもっとも適した比率は10%程度とみられる。理由の一つは、再生利用施設の管理や再生商品の製造にコストがかかりすぎるためだ。

 ニューヨーク・タイムズに寄稿したジョン・ティアニー氏も、「何十年にもわたる熱心な推進活動や政策実施にもかかわらず、家庭のごみは自治体にとって再生するより埋め立て地に送った方がいまでも安上がり」「環境と経済のコストを考えた場合、紙や一部の金属は再生がふさわしいかもしれないが、プラスチックや庭の草木ごみに関しては効果が限定される」と指摘する。

 再生利用のための輸送費も利益を打ち消す可能性がある。ニューヨーク市の場合、ごみ1トンを再生してから捨てるのに平均300ドル前後かかっている。バックネル大学(ペンシルベニア州)のトーマス・キナマン教授(経済学)は、プラスチックや紙、一部の金属のように、新たに生産すると環境負荷が大きい資源に限定した再生利用事業と、全体的な資源消費量を減らし物を使い続ける習慣の強化を推奨している。

 考えられる対策の一つは、埋め立て地に捨てるごみに課税し、自治体が責任あるかたちでその歳入を環境コストの相殺にあてるという方法だ。再生利用政策はいまも各地で強化されており、ニューヨークのビル・デブラジオ市長は、2030年までにごみのない街にすることを目指している。

 しかし、環境保護庁(EPA)の元幹部ウィンストン・ポーター氏は、「紙類や一部の金属、プラスチック以外の再生利用は理屈に合わない。ごみゼロの目標はまったく無意味で非常にコストがかかり、真の環境効果はないに等しい」と主張する。

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

最近のニュース速報

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 今年、UCを卒業するニナは大学で上級の日本語クラスを取っていた。どんな授業内容か、課題には...
  2. ニューヨーク風景 アメリカにある程度、あるいは長年住んでいる人なら分かると思うが、外国である...
  3. 広大な「バッファロー狩りの断崖」。かつて壮絶な狩猟が行われていたことが想像できないほど、 現在は穏...
  4. ©Kevin Baird/Flickr LOHASの聖地 Boulder, Colorad...
  5. アメリカ在住者で子どもがいる方なら「イマージョンプログラム」という言葉を聞いたことがあるか...
  6. 2024年2月9日

    劣化する命、育つ命
    フローレンス 誰もが年を取る。アンチエイジングに積極的に取り組まれている方はそれなりの成果が...
  7. 長さ8キロ、幅1キロの面積を持つミグアシャ国立公園は、脊椎動物の化石が埋まった岩層を保護するために...
  8. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
ページ上部へ戻る